カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

勝ったのは

「行くぞ!!」

「ビュゥゥン!!」

また来る!!  何とかして迎え撃たないと!!

「ファイアボール!!」

「ならば火力で上回る!!」

「ドグォォン!!」

2つの火炎の球がぶつかり合い、爆発が起こる、相手の方が炎の勢いが強く、こちらも私だけがダメージを受けてしまった。

「ま、まずいな……」

「どうしたどうしたァ!! フレイムブラスト!!」

「ゴォォォ!!!」

今度はフレイムブラスト、私が大事な局面でいつも使っていた、強力な炎属性魔法、

やはり私のと火力が違う……どうする……? このままじゃ勝ち目は無いぞ……?

「フレイムバレット!!」

「バァン!!」

撃ち込んだ弾丸はalphaさんに到達する前に剣で弾かれた。

「この分だと銃も通用しないな……」

「そんなに距離を取ってていいのかな? そのままでは一方的に攻撃されるだけだぞ?」

「ダメだ……距離を取っても、近づいてもやられる……」

「喰らえ!! インフェルノ!!」

「ドゴォォ!!」

「うわぁっ……!!?」

急に地面が爆発した!? 地下から吹き出した火柱に身を焼かれながら、私は宙に打ち上がった……

「ドゴッ!!」

落下ダメージ、受け身を取れぬまま、私は地面に叩きつけられた。

怪我がすぐ治るからって、やりたい放題すぎる……助けて……Tellさん……

「どうする、Tell…… 助けてやった方が……」

「いや、KUMIはこの戦いで間違いなく成長する。見守ってあげよう、」

味方はいないのかこの場に!!

「どうやら手も足も出ないようだな。そんなお前にいいことを教えてやろう!」

「いいこと……?」

「炎属性攻撃の火力を最大限まで上げる方法!!  それは!!」

あの構えは……




「レディ……GO」

「バーニングスマッシュ!!」




試合が始まってすぐ、私に殴りかかってきた時の攻撃、あろうことか彼は、その炎の拳を自らの腹部にうち放った。

「俺自身が『炎となる』ことだァ!!!」

その瞬間、火柱が上がり、alphaさんは炎に包まれた。禍々しいその姿は、私に力の差を見せつけるには十分すぎるものだった。

「alpha!! さすがにやりすぎだぞ!! それはお前の奥の手じゃなかったのか!!?」

「確かにこいつは俺も大火傷を負う諸刃の剣のような技だ。だがこの世界でなら何度でも発動出来る!!」

このルールの最大の問題点、それは怪我が治ってしまうことだ。だから対戦相手も、自分の怪我を厭わずに向かって来てしまう。

「仕方ない……ッ!!」

「バァン!! バァン!!」

「ボジュッ!………」

フレイムバレットは着弾と同時にalphaさんの炎により燃え尽きてしまった。

どこか弱点は無いのか……? 背後からどうにかして撃てないかな……?




「えーと、スキルというより魔法みたいです。『アポルト』って言うみたいですね。」

「何をするんだ?」

「『物体を自分の方に引きつける』って書いてあります。」




じゃあこれで、自分で撃った弾丸をすぐに引き寄せれば、相手の死角に弾を撃ち込めるのでは……?

「バァン!!」 

「アポルト!!」

「ヒュウンッ!!ボジュッ!!……」

「ふん! 無駄だな。」

無駄みたいだ……そうだよな、全身が炎に包まれている以上、死角なんて存在し得ない、せっかくアポルトの使い道を見つけたと思ったのに……

なにかほかの作戦は……

「キュキュ!!」

「ぼっ、ぼたん!? 今出てきちゃダメ!!」

「ピュッ!!」

ぼたんの吐き出した種は1本のツルになり、相手の足に巻きついた、

「ドガァァァン!!」

「うわぁっ!?…………な、何……?」

謎の爆発に、周りも自体が呑み込めていないみたいだ、

「Tell、今のは……?」

「『ダイナマイトフルーツ』だろう、ぼたんの吐き出した種から成長し、実をつけ、そのままalphaの炎に引火して爆発したんだ、」

「キュキュ!!」

「…………ふん! これも無駄だな! 相棒のぼたんでもKUMIの助けにはなれなかったみたいだな!!」

ぼたん、なんで? なんでこのタイミングでこんなことを?

「ペットに助けて貰うのはルール違反じゃないのか?」

「別にいいんじゃない? 爆発もalphaに効かなくて、助けになってなかったみたいだし、」

本当に、助けになってなかったのだろうか……?




「…………ふん! これも無駄だな!」




さっき、『これも無駄』だと言う瞬間、一瞬の間があった……爆発の煙で何も見えなかったけど……もしかして、あの爆発でなにか変化が?

「キュッキュキュ!! キュキュ!!」

なんかぼたんが喜んでいる、きっとメッセージが私に伝わったのを喜んでいるんだ。ぼたんのメッセージ確かに受け取った。

今の爆発は、『alphaさんに勝つためのヒント』!!

「フレイム……ブラストォ!!!」

「ゴォォォォォォ!!」

これは私のフレイムブラスト、

「効かん!! フレイムブラスト!!」

これはalphaさんのフレイムブラスト、このまま素早く、2つのフレイムブラストの間に入る。

「アポルト!!」

「何!?」

とても小さな、フレイムバレットの弾丸。その小さな弾を狙った場所に当てられるほど、精巧な引き寄せ魔法だ……

『炎』も、いけるんじゃないのか……?

「一点集中……………ッ!!」

そして……

「放つッ!!」

「ドグァァァァァァァン!!」

「グオオッ!!!?」

『爆風消火』、爆弾を爆発させて、その爆風で火を消す消火方法……

alphaさんの纏っていた炎を、アポルトを使った巨大な爆発で吹き消し、吹き飛ばされたalphaさんの背後に回る。

私はそのまま、持っていた銃の銃口をalphaさんのこめかみへと、ゆっくり押し当てた。

「…………チェックメイトです」

その瞬間、あたりは歓声に包まれた。




はぁ……はぁ……やっと終わった……マジで生きた心地がしなかった……

「今のは文句無しで、君の勝利だ、おめでとう、」

alphaさんにそう言われて、alphaさんの方を向くと、先程までの全身火傷がきれいさっぱりと治っていた。

「KUMIさんも、いつまでも白無垢に居ないで、早く出てきなよ」

私は傷だらけの体に鞭打って、とぼとぼと歩き、倒れ込むようにして白無垢の空間を出た。
 
「えーと……かなり酷い目にあってたね……」

RAYさんはこちらに目を合わせようとせず、右斜め下の地面を見つめたままそう言った。

「その調子で次も頑張れよ?」

と、Tellさんは冗談めかしく言った。けど、私の中でもう答えは決まっていた。

「もう痛い思いはしたくないので、2回戦は棄権させていただきます。」

「「まぁ、そりゃそうだよな、」」

RAYさんとTellさんの声がハモった。

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