カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

心の準備ができるまでは

「ガチャ……」

扉を開けた瞬間に

「わん!! わわんわん!!」

ごく家庭的なペットの鳴き声が聞こえ、アミカさんは巨大な犬に押し倒された。

「あははは! くすぐったいよ! ライナ! レフィーナ! やめなさい!」

よく見ると、その犬は1つの体に2つの首を持っていた。真っ黒い、フサフサとした毛並みに異なるふたつの頭、一方は赤く、もう一方は青く眼を光らせている。

「かっこいいでしょ! 『ダークオルトロス』って言うんだ。右の頭が『ライナ』ちゃんで、左の頭が『レフィーナ』ちゃん、どっちもメスの子なんだ。ほら、みんなに挨拶して、」

「「わん!!」」

2匹は口を揃えて1つ吠えた。こう見ると可愛いけど、やっぱり2つ首があるって怖いな……しかもめちゃくちゃでかいし……飼いたいとは思わない。

「はい、よくできたね! 後でおやつあげるからね、」

「「わん!! わん!!」」

2本のしっぽを振って喜んでいる。この子、しっぽも2本あるのか……

「じゃあみんなこっち来て、ここがリビングで、2階が寝室、後で部屋は割り当てるから、」

「割り当てるぐらい寝室があるのか?」

「いや、生き物の飼育部屋が大量にあるだけ、そこに布団を敷いて寝てもらう。」

うるさそうだな、生き物の鳴き声で、

「一応言っておくけど、ライナとレフィーナを怒らせないであげてね、怒ると口から闇属性攻撃のエネルギー弾を飛ばしてくるから。」

怖ぇよ!!

「さ……さすがは『魔界の番犬』の異名を取るモンスターだな……」

異名ついてんだ……より一層怖く思えてきた。




それから私たちは、部屋の紹介という名の「アミカさんのモンスター紹介コーナー」を終え、ようやく一息つけた。これからは、それぞれが割りあてられた部屋で生活することになる。

私はTellさんと2人部屋、この部屋は元々、川魚などの淡水魚を飼っていた飼育部屋、たくさんの水槽で、棚が埋め尽くされている。

「面白かったな、アミカさんのモンスター紹介、」

Tellさんの言う通り、確かに面白かった。まるで動物園を、ナレーションを聞きながら回っているようだった。

「きっと、ビオトープの方にはもっと面白いのモンスターがいるんだろうな、」

「でも、倒しちゃダメですよ?」

「分かってるよ、」

この島にいるモンスターはみんな、アミカさんの大切なペット、家族だ。みんな、アミカさんのことを信頼して、この島で生活しているんだ。

でも、どのモンスターも、みんな強そうだったな。もしこのモンスターたちと、実際に出会ってしまったら、私たちは勝てるのだろうか……?

「ねぇ、Tellさん、」

「ん? どうしたの?」

「Tellさん、『死ぬまで、この世界を遊び尽くす』って言ってましたよね?」

「昨日の話、聞いてたんだ、」

「は、はい、でもその……考えないんですか? もしモンスターと戦って、負けちゃったり……することとか……」

「モンスターに殺されるってこと?」

「は……はい、」

「それはそれで、『目的達成』だよ、死ぬ瞬間まで、ゲームを遊びつくせたんだから。それに……」

Tellさんは私の頭にポンと手を置いた。

「一緒に戦ってくれる仲間がいる、だろう?」

「……手、退けてください…………」

「ん? ああ、ごめん、嫌だった?」

嫌ではないんだけど……って、何を考えてるんだ私は! 早く話を戻さなきゃ、

「と、とにかく、Tellさんは、『死ぬ』の、怖くないんですか……?」

「『死ぬ』の……? はは、誰だって怖いさ、 」

Tellさんは、余裕な表情で笑って見せた。

「その証拠に、こうやってダラダラと遊び続けている。それでもいつか死ななきゃ行けないんだ、この世界にいる限りは……」

何故なのだろうか、Tellさんがすごく悲しそうに見えるのは……

「だから心の準備ができるまで、こうして旅を続ける。それだけの事さ……」

「そうですか……」

「いいんだよ? 死にたくなかったら、無理して着いて来なくても?」

「いえ、私も着いていきます。心の準備ができるまで 」

心の準備か……できる日は来るのだろうか……

「コンコン……」

「Tell、KUMI、今ちょっといいか? 話したいことがあるんだ。」

RAYさんの声だった。

「おお、いいよ、すぐそっちに行く、」

RAYさんに連れられ、私たちが1階のリビングにつく頃には、すでにギルドメンバーが集合していた。




「で、なんだよリーダー、話したいことって、」

私たちがリビングについてすぐに、ざっくさんが口を開いた、どうやらほかのメンバーも、RAYさんが何を話すのか聞いていないらしい。

「みんなに集まって貰ったのは他でもない、Tellの情報の不正取得者が誰なのかについてだ。」

「ああ、Tellさんをこの島まで連れてきた目的でしたよね、」

「ああ、ボクはこの不正取得者について、あるひとつの仮説を思いついたんだ。それについて話したい。」

「RAYさんの、仮説……ですか?」

「ああ、ボクはこの件に、ネームレスが深く関わっていると考えた。ネームレスとKUMIさんが最初に接触した時、彼女は、『KUMIさんの殺害』を依頼された。」

改めて言われると本当に怖いな、

「つまりこれは、Tellの情報を何らかの方法で抜き取った際に、同時にKUMIさんの情報も知ったと考えられる。」

「なるほどな、ありえない話ではない、じゃあRAYの考えでは、『ネームレスにKUMIさんの殺害を依頼した人物』が、犯人ということなんだな?」

「そうだとボクは思う、」

ネームレスの依頼者か、確かに、怪しくはあった、ネームレスに私たちの心中旅行のことを教えたのも、依頼者の人だったと言っていた。

「おそらく依頼者は、ネームレスにTellを殺させようとするはずだ、もしかしたら、この島に乗り込んでくるかもしれない。」

まずい展開になってきたぞ……

「じゃあ、リーダー、俺たちはどうすれば……」

「迎撃の準備をするんだ、俺たちでTellを守る!!」

「カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く