カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~
いつかの未来であるうちは
鍋を囲み、Tellさん達は昔話に花を咲かせている。
「……はぁ…………美味しい、」
冷えきった体に熱々のスープがしみ渡る、すごく懐かしい味だ。そういえば、この世界で初めて食べたものがこの、RAYさんのチキンスープだったな、そう考えるとなんだか感慨深いものがある。
「そういえば、ゲームクリアに関する情報は手に入ったのか?」
「いや、確かに、それらしいものは手に入ったんだけど、イマイチ確証が持てないというかなんというか……」
確か、RAYさんのギルドは、ゲームをクリアして、この世界から出るための冒険を続けてるんだよな、
「なんだよ、『それらしいもの』って、」
「どうもこの世界の中心部には、『魔王』が治める国があるらしい、」
「『魔王』?」
「全てのモンスターを統治する『魔物の王』なんだとさ、ほら、よくRPGとかで魔王がラスボスってことよくあるだろ?」
「確かに、往年のRPGはほとんどがそうだな、」
「でも、このゲームのことだ、魔王の上がいるかもしれないし、魔王が何人もいるかもしれない。」
魔王の上とか、魔王が何人とか、想像したくもないな
「でも行ってみる価値はありそうだな、モンスターの元締めなんて、ストーリーの進行に関わらないわけがないからな、」
「でも、Tellはどうせ行かないんだろう?」
「まぁ、気が変わらない限りはな、」
「お前、自分がこのゲーム遊び尽くすまでは、現実には帰らないつもりだな?」
「もちろん、死ぬまで遊び尽くしてやるさ、」
本当にゲームが好きなんだな、Tellさんは、
「で、お前はどうなんだよ? 何か面白いものは見れたか?」
「そうだな……前に、俺とKUMIさんとで行った町が……」
Tellさんの冒険話に、ギルドのみんなは引き込まれているみたいだ。どうやらみんな、今日は夜通し話しまくるつもりらしい。明日は朝早いし、私みたいな朝弱い人はそろそろ寝るのが得策だろう、私は1人テントに戻り、寝袋の中に入ろうとした、その時、どこか視線を感じて、森の奥の方を見た。
「……ネームレス?」
私は彼女が呼んでいるような気がして森の奥の方へと向かった。ギルドメンバーも、NARIELさんもアミカさんも、皆Tellさんのトークショーに夢中で、私がいないことなど気付きもしていないだろう。夜の森の静けさに少し恐怖を覚えつつも、先に進んでいくと、やはり、そこにネームレスの姿を見つけた。
「やぁ、さっきぶり、夜分遅くにごめんね、」
彼女は夜の森に似つかわしい、消え入るような静かな声で言った。
「報告しに来たよ、作戦は無事成功、依頼者を上手く騙せたみたい」
「そ、それは良かったですね……」
私にとっては、自分を生かしておいたことさえ謎なのだ。彼女は何を企んでいるのだろうか……?
「やっぱり、私の事は信用出来ない?」
「はい、……信用できません。かといって100パー信じていない訳では無いですけど、」
「今日、ここに来たのにはもうひとつ、話しておきたいことがあってさ……」
彼女は仮面をつけているため、あまり表情がよく 分からない。しかし、何か言いにくいことを言おうとしているということは何となく伝わった。
「その……さ、お願いがあるんだけど……Tell君とは、もう別れて欲しいんだ。」
「えっ……!?」
「私はあなたには死んで欲しくないからさ、『片方が死んだら自分も死ぬ』なんて約束、守って欲しくない」
意外すぎる言葉だった。自分たちの『心中旅行』を否定するような人はこの人が初めてだったからだ。
それに、ネームレスには、私たちが心中旅行をしていることなど、一言も話していない。
「何故……その約束のことを知っているのですか……?」
「依頼主さんが言ってたんだ。Tell君が、君とそんな約束をしていたこと、君が死ねば、Tell君も一緒に死んでくれる、だから私にこんな依頼をしたんだって……」
依頼者は、私たちの約束のことを知っていたってことか……
「だから、このままどちらかが死んでしまう前に、2人には別れて欲しいんだ。それがダメなら、約束を取り消して欲しい。」
「で、でも私は……」
「私はあなたに死なないで欲しいだけなんだ……わかってくれる?」
何故ここまで、この人は私に執着するんだろう?私が生きていることが、この人にとってどんな意味を持つんだろう?
「私が生きていることで、あなたに何かメリットがありますか?」
「そ、それは……」
「そこまで私に生きていて欲しいと言うのなら、そう思う理由を教えてください。理由が分からないままで、Tellさんとの約束を取り消すことはできません。」
そりゃ私だって死にたくないさ、でも今は、今だけはTellさんの隣に居させてくれよ、この約束が、まだ『いつかの未来』であるうちは 、一緒に居させてくれ……
「う……うん、そうか、そうだよね……理由も分からないのに、お願いなんて聞けないよね……」
彼女、目に見えて落ち込んでるな……仮面の奥から悲しいオーラが溢れ出ている。
「じゃあ、その時が来たら、訳を話すからさ……その、考えておいてくれないかな……?」
意地でも話さないつもりか、私に生きていて欲しい理由を、
「理由を聞けたら、考えが変わるかもしれないので、話したくなったらまた私のところに来てください。」
本当に訳の分からない人だな、『死なないで』の一点張りで理由も話さない、自分が何者なのかも明かさない、自分勝手な人だな……
「じゃあ、私、もう行くね、」
「あの、その前にひとつだけ、いいですか、」
「……何?」
彼女との会話の中で、ひとつ気になった点があった。最後にそこだけ訂正させて貰おうかな……
「さっき、『別れて欲しい』って言ってましたけど、別に私たち恋人として付き合ってる訳じゃ……」
「えっ!? アンタたち付き合ってないの!? ウソでしょ!?」
まさかそんなに驚かれるとは思わなかったな………
「……はぁ…………美味しい、」
冷えきった体に熱々のスープがしみ渡る、すごく懐かしい味だ。そういえば、この世界で初めて食べたものがこの、RAYさんのチキンスープだったな、そう考えるとなんだか感慨深いものがある。
「そういえば、ゲームクリアに関する情報は手に入ったのか?」
「いや、確かに、それらしいものは手に入ったんだけど、イマイチ確証が持てないというかなんというか……」
確か、RAYさんのギルドは、ゲームをクリアして、この世界から出るための冒険を続けてるんだよな、
「なんだよ、『それらしいもの』って、」
「どうもこの世界の中心部には、『魔王』が治める国があるらしい、」
「『魔王』?」
「全てのモンスターを統治する『魔物の王』なんだとさ、ほら、よくRPGとかで魔王がラスボスってことよくあるだろ?」
「確かに、往年のRPGはほとんどがそうだな、」
「でも、このゲームのことだ、魔王の上がいるかもしれないし、魔王が何人もいるかもしれない。」
魔王の上とか、魔王が何人とか、想像したくもないな
「でも行ってみる価値はありそうだな、モンスターの元締めなんて、ストーリーの進行に関わらないわけがないからな、」
「でも、Tellはどうせ行かないんだろう?」
「まぁ、気が変わらない限りはな、」
「お前、自分がこのゲーム遊び尽くすまでは、現実には帰らないつもりだな?」
「もちろん、死ぬまで遊び尽くしてやるさ、」
本当にゲームが好きなんだな、Tellさんは、
「で、お前はどうなんだよ? 何か面白いものは見れたか?」
「そうだな……前に、俺とKUMIさんとで行った町が……」
Tellさんの冒険話に、ギルドのみんなは引き込まれているみたいだ。どうやらみんな、今日は夜通し話しまくるつもりらしい。明日は朝早いし、私みたいな朝弱い人はそろそろ寝るのが得策だろう、私は1人テントに戻り、寝袋の中に入ろうとした、その時、どこか視線を感じて、森の奥の方を見た。
「……ネームレス?」
私は彼女が呼んでいるような気がして森の奥の方へと向かった。ギルドメンバーも、NARIELさんもアミカさんも、皆Tellさんのトークショーに夢中で、私がいないことなど気付きもしていないだろう。夜の森の静けさに少し恐怖を覚えつつも、先に進んでいくと、やはり、そこにネームレスの姿を見つけた。
「やぁ、さっきぶり、夜分遅くにごめんね、」
彼女は夜の森に似つかわしい、消え入るような静かな声で言った。
「報告しに来たよ、作戦は無事成功、依頼者を上手く騙せたみたい」
「そ、それは良かったですね……」
私にとっては、自分を生かしておいたことさえ謎なのだ。彼女は何を企んでいるのだろうか……?
「やっぱり、私の事は信用出来ない?」
「はい、……信用できません。かといって100パー信じていない訳では無いですけど、」
「今日、ここに来たのにはもうひとつ、話しておきたいことがあってさ……」
彼女は仮面をつけているため、あまり表情がよく 分からない。しかし、何か言いにくいことを言おうとしているということは何となく伝わった。
「その……さ、お願いがあるんだけど……Tell君とは、もう別れて欲しいんだ。」
「えっ……!?」
「私はあなたには死んで欲しくないからさ、『片方が死んだら自分も死ぬ』なんて約束、守って欲しくない」
意外すぎる言葉だった。自分たちの『心中旅行』を否定するような人はこの人が初めてだったからだ。
それに、ネームレスには、私たちが心中旅行をしていることなど、一言も話していない。
「何故……その約束のことを知っているのですか……?」
「依頼主さんが言ってたんだ。Tell君が、君とそんな約束をしていたこと、君が死ねば、Tell君も一緒に死んでくれる、だから私にこんな依頼をしたんだって……」
依頼者は、私たちの約束のことを知っていたってことか……
「だから、このままどちらかが死んでしまう前に、2人には別れて欲しいんだ。それがダメなら、約束を取り消して欲しい。」
「で、でも私は……」
「私はあなたに死なないで欲しいだけなんだ……わかってくれる?」
何故ここまで、この人は私に執着するんだろう?私が生きていることが、この人にとってどんな意味を持つんだろう?
「私が生きていることで、あなたに何かメリットがありますか?」
「そ、それは……」
「そこまで私に生きていて欲しいと言うのなら、そう思う理由を教えてください。理由が分からないままで、Tellさんとの約束を取り消すことはできません。」
そりゃ私だって死にたくないさ、でも今は、今だけはTellさんの隣に居させてくれよ、この約束が、まだ『いつかの未来』であるうちは 、一緒に居させてくれ……
「う……うん、そうか、そうだよね……理由も分からないのに、お願いなんて聞けないよね……」
彼女、目に見えて落ち込んでるな……仮面の奥から悲しいオーラが溢れ出ている。
「じゃあ、その時が来たら、訳を話すからさ……その、考えておいてくれないかな……?」
意地でも話さないつもりか、私に生きていて欲しい理由を、
「理由を聞けたら、考えが変わるかもしれないので、話したくなったらまた私のところに来てください。」
本当に訳の分からない人だな、『死なないで』の一点張りで理由も話さない、自分が何者なのかも明かさない、自分勝手な人だな……
「じゃあ、私、もう行くね、」
「あの、その前にひとつだけ、いいですか、」
「……何?」
彼女との会話の中で、ひとつ気になった点があった。最後にそこだけ訂正させて貰おうかな……
「さっき、『別れて欲しい』って言ってましたけど、別に私たち恋人として付き合ってる訳じゃ……」
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