カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

優しき暗殺者

「ビュンッ!!」

「カキーン!!」

仮面の彼女は様々な暗器でメリアさんを攻撃した。

「パヒュンッ!!」

大きな針を相手に飛ばす銃や、

「ブゥン……!! ドゴォン!!」

トゲトゲの鉄球がついたモーニングスター、

「ジャキンっ!!」

大量の刃、そのどれもは、彼女の腕や、足から出現しているものだ、

そして、それらの暗器は、服の中に隠しているものではなく、腕や足そのものに武器が仕込まれていることに気が付いた。

「ギィ……ガシャッ!! ギィィ!! 」

微かに、彼女の体から何かが軋む音が聞こえる。どうやら私が腕や足だと思っていたものは、義手と義足だったようだ。見た目では普通の人間の手足と変わらないくらい精巧に作られている。

「かなり仕込みが多いですね……さぁ、お次は何が出てくるんです?」

しかし、メリアさんはその全てに冷静に対処していた。まるで、先のことが見えているかのように……

「な、なんで……? なんでこんなに暗器が当たらないんだ……?」

1つ気がついたことがある。メリアさんの目の色が、前とかなり変わっている事だ……そして、その目をした人に私は、体の中を覗かれたことがある。




「クレアヴィアントを使った、透視魔法だよ、」

「直接あんたの体の内側を透視して、異変がないかどうか調べる。」




「ま、まさか……透視されている……? 義手と義足の中に、何が仕込まれているかを……!?」

「な、なんだって!?」

「暗器使いとの戦いのコツは、驚かないことです。一瞬でも驚いてしまえば隙をつかれて殺されます。でも、どんな武器を仕込んでいるかが分かってしまえば、すでにタネを知っているマジックを見せられているのと同義、驚くことはありません。」

ポンちゃんの幻影もダメ、この人でもダメ、メリアさん、対戦相手の対処法を見つけるのが上手すぎる、付け入る隙がない……!!

「さぁ、どうするおつもりです? 今度は右足のチェーンソーで私を叩き切るつもりでしょうか?」

「どうやら本当に何もかもバレてるみたいだね……」

こういう時、どうする? あとは私が戦うしか……

「ダメ! KUMIさんは下がってて……絶対私が何とかする……!!」

「ひゃ、ひゃいっ!!?」

勢いに気圧されて、私はすぐにまた彼女の後ろに下がった。なんでこんなに私を守ってくれるんだ……? 私の何が、この人をこうさせるんだ……?

「行くぞっ!!」

「ビュンッ!!」

急に彼女の体が消えた、

「喰らえ煙幕!!」

「ボフンッ!!」

当たりを濃度の濃い煙が包む……

「なるほど、だとしたら逃亡ルートは……」

真っ黒の煙は、少しずつ晴れていき、ようやくメリアさんの姿が見えた……

「……!? だ、誰も、いない……?」

メリアさんは辺りを見回し始めた、私たちの姿を探しているのだろう。

「これは……違う! ゼロリバース!!」

「ビュオオオオ」

「よし! 通り抜けた! このまま突っ切る!!」

やった!! 煙幕の暗器と、ポンちゃんの幻覚の合わせ技で、何とかメリアさんに隙を作った!メリアさんが見失っている隙に、私たちは走り出した!

「クローショット!」

「ギュウウン!!……カッ!!」

この人もクローショットを持っていたようだ。しかし、Tellさんと違い鎖は体に埋め込まれている。

「KUMIさん、揺れるよ!!」

「ビュウウン!!」

大丈夫だ、Tellさんのでもう慣れている。クローショットを使用したワイヤーアクションで遠くに逃げた。木々の生い茂る林の中に逃げ込んだため、メリアさんは私たちを見失ったみたいだ。

「あの女……調べておく必要がありますね…………」




林の中、やっと安全なところにたどり着いた私たちは、つかの間の休息をとっていた。

「手強い相手だったね、あんなのと戦っているの? 」

「はい、黒ギルドっていう犯罪者の集団です。」

「犯罪者ねぇ……」

そうか、この人も言うなれば犯罪者なのか、さっき思いっきり2人も殺してるから……

「少し休憩したら、また君の仲間の所まで送っていくからさ、」

「ありがとうございます。その、見ず知らずの私をここまで守っていただいて……」

「まぁ、元はと言えば、私がここまで連れてきたのがいけないんだけどね、」

はっ! そうだ!この人、私を連れ去った犯人なんだ! 今まですっかり忘れてた!!

「なんでこんな所まで連れてきたんですか?」

「いや、その……実はね……」

彼女はようやく、自分の素性について語り出した。

「実は私、商売で『殺し屋』をやってるんだ。名前とidを渡してくれれば、それを頼りにその人を殺してお金を貰ってる。」

「えっ……?」

「それでね、落ち着いて聞いて欲しいんだけど……私、KUMIさんの殺しを依頼されたの」

「ええっ!?」

私の殺しを、この人に依頼した人がいるの……!? 一体誰が……なんのために……私が何をしたって言うの……!?

「でも私は、『どうしてもあなたを殺したくなかった』。だから、あなたを死んだことにするためにここまで連れて来て、殺害の証拠を偽造した。」

「そんなことが……」

「あなたは、その依頼者の中では死んだことになってる。だからあとはもう大丈夫、あなたが生きていることさえバレなければ……」

依頼した人がもしこの人じゃなくて、他の殺し屋だったら、私はどうなっていたんだろう……?

「ごめんね、こんなことして、」

「いえ、むしろ私を守ってくださってありがとうございます。」

最後にひとつ聞きたいことがある。なぜ、『どうしても殺したくなかった』のだろう?

「あの、質問なんですが……どうして私を殺したくなかったのですか?」

「ごめん……今はその質問には答えたくないや……」

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