カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

目的と方法

日が暮れて夜が来た、もう長い間、3人はダンジョンで戦い続けている。確か、シークレットダンジョンって言ってたな、どのぐらい難しいのだろう?

Tellさんが、すごく心配だ、どんなボスなんだろう? 倒すの難しくなきゃいいんだけど……

それに、私も私で問題を抱えている。死ぬのが怖くて、どうして『心中旅行』などが続けられようか、この旅をもっと続けたいなら、死への恐怖は何としてでも克服しなくちゃ、でも、そんなものどうやって克服しろというのだ……?

……今日はもう遅い、私もそろそろ寝なきゃ、

「…………」

ベッドに入り、布団を被る……また昨日みたく、頭まですっぽり被ってみる……今度は目だけ布団から出してみる……

「寝られん……」

色んなことが頭の中で浮かんでは、モヤモヤと煙のように広がって頭の中を支配する……私、本当にTellさんと一緒に死ねるのか……?




「『あの時』やりたかったことと、『今』やりたいことが違うなら、無理に続ける必要は無いんじゃないかな?」




私が、あの時やりたかったこと……




「私、Tellさんと一緒に死にます。」




Tellさんと一緒に死ぬことだ、でも、今は死ぬことに恐怖を抱いている。この即死魔法を喰らってから、その思いはさらに強くなった。でも……




「君と一緒に死ぬ、最初からそんな約束だったろ?」




いざTellさんが死ぬ時が来たら、私は本当にTellさんのあとを追えるのか? 死ぬのが怖くて、逃げ出してしまうんじゃないのか?




「羨ましいな、君は、『誰かの為に死にたい』って思えたら、どれだけ幸せなことか……」




ごめん、RAYさん、私、RAYさんが思っているほど、強くない……

「あ~もう~……モヤモヤするなぁ……」

私、矛盾してる。Tellさんと一緒にいたいって思ってるくせに、死にたくないなんて……Tellさんは自殺するためにこのゲームを始めたというのに……

もう一度原点にかえって考えてみよう! 私がしたいことはなんだ? よ~く思い出せ! 私はそもそもなんでTellさんと一緒にいたいって思うようになった?




「スラッシュダイブ!!」

「グオアアア!!」

「ドゴオオオオン!!」

「大丈夫? かなり大変な目に遭ってたけど、」




私はあの時、始まってそうそう死にそうな目に遭ってた……そこを助けてくれたのがTellさんだった、私はこの人に救われた、Tellさんは命の恩人だ、

だから、私は、『この人について行けば大丈夫』って思ったんだ、そして、




「本当は、誰にも迷惑をかけずに死にたかったんだけどな……」




Tellさんが『自殺旅行』をしていることを知った。だから、




「私、Tellさんと一緒に死にます。Tellさんと一緒に旅をすることが、私のやりたいことです!」




って、Tellさんに言ったんだ……ん? なんかおかしい……私、最初から、『死ぬ事なんて考えてない』……?

「そうか!」

死ぬとか自殺なんて、そもそも問題外だったんだ!

私の目的は、『Tellさんと一緒にいる』事であって、『Tellさんと一緒に死ぬ』事では無かった。いつの間にか逆転していた、『方法』と『目的』が……

よし! 問題解決に一歩前進した、さすがにもう、寝ないとやばい、

「あっ、そういえば薬を飲み忘れてた、」

夜のうちに薬を飲んでおかないと、朝目覚めたら激痛が待っているからな、

痛み止めを手に取り、水で流し込む、

「これでよしっと、」

ベッドに戻ろうと振り返ったその瞬間だった。

「ガっ!!」

「むぐッ!?」

口元に布のようなものを押し当てられている。逃れようと頭を後ろに退くが、勢い余って壁に頭を打ち付けてしまった。

逃げ道がない、布には、嗅いだら気を失うクロロホルムのような液体が染み込ませてあるらしい、目の前の人物が誰なのかも分からぬまま、目の前は真っ暗になった……




長い階段を上り、ついに、ボス部屋へと辿り着いた。どれぐらいダンジョンにいるのだろう、地中だと、時間の感覚が分からない……でも、あともう少しだ、

「みんな、準備はいいか?」

「もちろんですわ!」

「うん、みんなで早くここを出よう!」

「ギィィ……」

扉が少しずつ開いていく、隙間から強烈な熱風が吹き出してくる

「グッ!! こ、これは……?」

部屋は円柱……いや、円錐形といった方が近いかもしれない、床の中央にドーナツ型の大きな穴が空いている。

恐る恐る、部屋の中に入る……

「この部屋、すごく暑いのに……床には雪が積もってる……」

「ボス、どこにいるんですの……? 気配が感じられませんわ……?」

中央の穴を覗いてみる、下にも足場があるらしい、

「NARIELさん、ここから下の足場に飛び降りれる、降りてみようか?」

「近くにマグマはありますの?」

「ある、むしろ、あの足場以外は大きなマグマ溜りになっている。」

足場に降りると、マグマ溜りの向こうに、氷の壁の中に閉じ込められた、悪魔のような巨大生物を見つけた、

「うわぁっ!? なにあれ!?」

「NARIELさん、今ボスは氷の中に閉じ込められてる、赤い悪魔のような巨大な姿だ、」

「ええ、何となく分かりますわ、オーラが尋常じゃないですもの……」

「私ノ眠リヲ妨ゲルノハ誰ダ……」

地の底から響くような声……目の前のボスが話しかけているのだろう、

「私ノ復活、ソレ八生キトシ生ケルモノ全テノ滅ビヲ意味スル、全テノ生命ヲ凍テツカセ、全テノ大地ヲ焼キ尽クシテクレヨウ!!」

「ゴゴゴゴゴゴ…… 」

すごい地響きだ……来るか……!!

「ウオオオオ!!」

「ドガァァン!!」

氷は粉々に砕け、悪魔がついに姿を現した……いや、その圧倒的な威圧感は、魔神と言っても差し支えないかもしれない、魔神はゆっくりと歩み始め、マグマ溜りへと入り込んだ、それと同時に、氷の塊のようなものが中に浮かび、魔神の周りを取り囲んだ。

「コノ溶岩ノチカラト、氷ノチカラ、我ガ持テル全テノチカラを持ッテ、貴様ヲ滅ボシテクレヨウゾ!! 来ルガヨイ!!」

『氷獄猛炎魔神』

『フローズンイフリート:出現』

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