カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

教団の行方

ようやくこの村からおさらばできる。相変わらず街の人たちは外には出て来なかった。ただ1人だけ、長老が降りてきた。

「おや……もう行ってしまうのかい?」

「ええ、今までありがとうございました、」

「山をおりるのなら……クレバスには気をつけるんだよ?……」

「そうですね、落ちたら大変ですもんね、」

「そうだ……これを持ってお行き……」

長老は紫色の宝石が下がったペンダントを渡してくれた。

「これは冥府の神……リンカー様への祈りを捧げるときに……使うペンダントだ……」

うわぁ……変なもの貰っちゃったな……

「このペンダントに向かって……『リ・クローテ・ファラヴァクチェ』と唱えるんだ。……お前が死ぬ運命じゃなければ……リンカー様はお前を死から遠ざけてくださる……」

「もし、死ぬ運命だったら?」

「冥府の恵みを持って……ゆっくりと死に導いてくださるよ……」

ほぼギャンブルじゃないか……

「ちなみに……このツボを買うともっと冥府の恵みを受け取れるよ?……今なら100万マニだけど買うかい?」

「買いませんよ!!」

そもそもそんな額、私には払えないし、

「……今までお世話になりましたわ、長老様、」

 「NARIEL…… お前も頑張ってな……」

「長老様も、お元気で……」

私たちは長老に見送られ、村を出発した。




「NARIELさん、足元大丈夫?」

「大丈夫ですわ? ポンちゃんの幻覚は正確ですもの、」

「NARIELさま、ここからしばらく斜面になりますので注意してください」

「わかりましたわ、」

やはり、NARIELさんはこの目のせいで、あの村に留まるしかなかったのだろうか?

「そういえばポンちゃんって、この近くで出会ったの?」

「そうですわ、この山を登っている時に、偶然出会いましたの。怪我をしてて、とても可哀想だった。」

「でも、NARIEL様が治して下さったんです。ぼくも最初は警戒して、幻覚の準備をしてたんですけど、先に幻覚を仕掛けられちゃって……」

「近付くと警戒されると思ったから、先にポーションで怪我を治す様子を、幻覚で見せてあげましたの。」

「それで、敵意が無いってことがわかったし、『あ、この人も同じ力を持ってるんだ』って思ったら、なんだか安心しちゃって、この人のそばにいたいって思ったから、こうしてNARIEL様の目の代わりをさせて頂いてるんです!」

「素敵な話ですね……」

「キュ?」

「ん? どうしたのぼたん?」

「KUMIちゃんとぼたんちゃんの出会いも、十分感動的だけどね!」

「キュキュ!!」

ぼたんはそこにいてくれるだけで、十分恩返しになってるよ、

「みんな、気をつけてくれ、ここからクレバス地帯だ。」

見ると、あちこちに深い裂け目が存在するゾーンになっていた。

「ビュオオオオ!!」

「うわっ!!」

ダイヤモンドダストが発生している。前はほとんど見えない。その上、吹き荒れる風が身を切るように冷たい。最悪の天候だ。

「急に……風が強くなってきたな……」

山の天気は変わりやすいとよく聞くが、こんなにも強い風が吹いているとは思わなかった。

「これ、少しでも油断していたらすぐにクレバスに真っ逆さまですわね、」

「ああ、みんな、より一層注意してくれ、」

怖いな……死にたくない……少しでも、気を紛らわす方法はないだろうか……

そうだ、あのペンダント……お祈りしてみよう、もしかしたらこのまま、冥府に導かれてしまうかもしれないけど、しないよりはマシだろう、

『リ・クローテ・ファラヴァクチェ』……心の中でそう唱えた。

声に出さなきゃダメなのかな? でも、神様には届いてるよ、きっと、

「ん? おいみんな、あそこ、人影が見えないか?」

確かに目の前には人影が見える。なんだろうか?

「ビュオオオオ!!」

なんでだろう? あの人影が見えてから、余計に風が強まってきた気がする……もしかして、この風って……

「……愚かなる旅人よ……その命……貰い受ける!!」

「ビュウウン!!」

「なっ!?」

えっ、ちょっ、なんか飛んできた!!

「ビュオオオオ!!」

「うわぁっ!!」

これは、 竜巻!! 風の刃で、切り裂かれるような痛みを感じた。

「KUMIさん!! 後ろだ!!」

「えっ!? 」

後ろを振り向くと、高速で迫ってくる黒い何かが、真っ白な視界から飛び出してきた。

「カキーン!!」

ダガーで間一髪受け止めるが、風をまとっているためか、とてつもないパワーで押し返されそうになる。至近距離で見てようやく気がついた。つむじ風に乗って回転しているのは、見覚えのある巨大な鎌だった。

「えぇい!!」

「ガキーン!!」

また違う人影、その人物は私を切り裂こうとしていた大鎌を剣で弾き飛ばした。大鎌はブーメランのように持ち主の元へと返っていく、

「あ、 あなたは……」

私はこの男を覚えている。彼の、女性と見紛うほどの整った顔立ちを、声を、




「おう、起きたか、えっと……KUMIさんだったよね?」







「でももし、君たちが死ぬよりも先に、助かる方法が見つかったら、みんなで、ここを出よう!」




RAYさんはあの時と変わっていなかった。左目の眼帯を除いては……

「RAY!!お前!!」

「再会を懐かしむのは後だ、今はこいつを倒す!」

「でも、なんでお前がここに?」

「どうやら知らなかったみたいだな、こいつ、黒ギルドだ、」

「なんだって……!?」

吹き荒れる風が少し止み、あの時見た死神のような男が姿を現した。

「私は、冥行会、広報幹部にして、黒ギルド第4部隊長、名をAsBemアズベムという、冥府の土産に覚えておくがよい……」

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