カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~
出発の時
しばらくすると、上の階からルシルさんが降りてきた。
「そろそろ発つんだろう?」
「そうですね、そろそろ行かないと、」
「雪山を登るのは一筋縄では行かない、十分な準備をして臨むんだ。」
わかっているつもりだ。さすがに今回ばかりはTellさんに頼る訳にも行かない、怪我が治ったばかりのTellさんを、私がサポートしなきゃならないんだ。
「それと、次に行く山の村だが、一応どんなところかぐらいは先に知っておくべきだと思ってな、どうやらかなり変わったところらしい、」
「調べたんですか?」
「ああ、バッチリ調べた。」
ルシルさんの移動用端末には、かなり古びた建物が写っている。
「なんだこれ、まるで日本の古民家だな……」
「ここはワゴウ村と言うらしい、この建物はこの村の長老の家だ。」
3人で話していると、上の階からナヴィエがヒラヒラと舞い降りて来た。
「えっ? ルシルさんもう調べたんですか?」
「私の持っている情報の中で、最も近しいであろう村を表示したまでだ。これで合っているだろうか?」
「はい、その村に行こうとしていました。」
「ならいい、この村はかつて、村民全員が治癒魔法の使い手であることから、『医者要らずの村』と呼ばれていた。しかし、ある1人の魔法使いが生きている人間を治療するだけでなく、すでに死んだ人間まで生き返らせようと考えた。」
「死んだ人を、生き返らせる……?」
「反魂術、言うなれば死者復活の魔法だな。しかし、その研究を行う過程で、何人もの犠牲者が出た。そのうち1人のものが、『成功するかも分からない反魂術のために、死ぬのはごめんだ』と言って村から逃げ出した。」
「穏やかじゃないな……」
「その事件をきっかけに、人々は死を、『素晴らしいものである』と考えることにし、治癒魔法を使わず、死をそのまま受け入れることとなった。その結果、治癒魔法を使える村民は、一人もいなくなってしまった。」
「それ以来『医者要らずの村』と呼ばれることは無くなったということですね!」
美味しいとこだけ持ってったな……ナヴィエ……
「こんなに壮大なストーリーがあるのに、なんで有名じゃないんだ?」
「もうみんな忘れてるってことだ、治癒魔法を使えたことも、そんな事件があったこともな、」
風化してしまったのか……
「それ、何年くらい前の話なんだ?」
「記録によると、100年以上は経っているようだが、プレイヤーが関わっているという訳では無いらしい、恐らく設定上の年数だろう」
「100年……」
急に数字が大きくなりすぎて、もはや驚く気も起きない
「じゃあ、100年以上経ってから、プレイヤーがこの村を見つけたってことだね?」
「そういうことだろうな」
だとしても、確実に犠牲者はいる訳だから、誰かが伝えるべきだよな、
「というわけで、しばらくTellさんは、この村で匿って貰うことにしましょう。犯人を見つけ次第、その人物に警告をし、もう情報攻撃を行わないように説得します。それでも応じなければ、それ相応の措置を取ります。」
「じゃあ、それまで、この村で隠れてればいいのね?」
「そういうことです。」
「どうする? 金払うなら、私も犯人探しに協力しないこともないが?」
ビジネスチャンスは逃さないルシルさんであった。
「そうだな、二人いた方が効率的だ、いくらで協力してくれる?」
「海賊船で手に入れた宝を換金したんだろう? その1部でいい、」
「ちょうど良かった。これでいいかい?」
Tellさんは先程、RUSHさんに支払った額と同じくらいの札束をルシルさんに渡した。
「いや、この半分でいい、Tellはお得意様だからな、」
「そっか、じゃあ、それで頼む」
「了解した、良い知らせを期待していてくれ、」
強力な助っ人をゲットしたようだ。
「よし、それじゃ、もう行こうか、」
「そうか、色々と世話になった。」
「こっちこそ、ありがとう、」
「せめて最後はみんなで見送ろう、他のやつらを呼んでくる。」
そう言ってルシルさんは、端末を持って奥に行ってしまった。私たちは荷物を持って玄関に行った。
 
「じゃあな、Tell、KUMI、困った時はいつでも依頼文おくれよ?」
「俺の店にも、また来てくれよな!」
「本当にありがとうございました!」
「私こそ、お世話になりました。」
「じゃあ、また会おうな!」
「皆さん、ありがとうございました!」
私たちは順番に別れの挨拶をし、新しい旅をスタートさせた。
「じゃあ、行きましょうか、」
町を出発し、ナヴィエの案内で先へと進んでいく。
しばらく歩くと、急に思い出したように、Tellさんがこんなことを言い出した
「JHARIBAN、一体どこにいるんだろうな?」
JHARIBANさんが本当は生きている。そのことはライムさんの手紙からわかった。
「黒ギルドのアジトじゃないですか?」
「確か、あいつらに幽閉されて、武器作りに協力させられてるんだよな?」
「そうだと思いますけど……」
「そうか……おれ、ちょっとわざとらしかったかな?」
「何がですか?」
「ほら、RUSHと喋ってた時に……」
「なぁ、もし、JHARIBANがまだ生きていたら、どうする?」
「だとしても、結果は一緒だよ、『Tell、師匠のパーティに入ってくれないか』って頼んでるさ……」
「ああ、あの時ですか……一瞬ヒヤッとしました。Tellさん、ライムさんとの秘密を破っちゃうんじゃないかって、」
「でも、あんな形でしか、伝えられなかった。」
Tellさんも、心を痛めていたんだな、
「何の話ですか?」
急にナヴィエが首を突っ込んできた
「ああ、RUSHの話だよ、ライムに秘密だって言われたことをうっかり喋りそうになっちゃって、」
「そ、そうですか……」
Tellさん、ナヴィエには絶対喋らないでね…………
「そろそろ発つんだろう?」
「そうですね、そろそろ行かないと、」
「雪山を登るのは一筋縄では行かない、十分な準備をして臨むんだ。」
わかっているつもりだ。さすがに今回ばかりはTellさんに頼る訳にも行かない、怪我が治ったばかりのTellさんを、私がサポートしなきゃならないんだ。
「それと、次に行く山の村だが、一応どんなところかぐらいは先に知っておくべきだと思ってな、どうやらかなり変わったところらしい、」
「調べたんですか?」
「ああ、バッチリ調べた。」
ルシルさんの移動用端末には、かなり古びた建物が写っている。
「なんだこれ、まるで日本の古民家だな……」
「ここはワゴウ村と言うらしい、この建物はこの村の長老の家だ。」
3人で話していると、上の階からナヴィエがヒラヒラと舞い降りて来た。
「えっ? ルシルさんもう調べたんですか?」
「私の持っている情報の中で、最も近しいであろう村を表示したまでだ。これで合っているだろうか?」
「はい、その村に行こうとしていました。」
「ならいい、この村はかつて、村民全員が治癒魔法の使い手であることから、『医者要らずの村』と呼ばれていた。しかし、ある1人の魔法使いが生きている人間を治療するだけでなく、すでに死んだ人間まで生き返らせようと考えた。」
「死んだ人を、生き返らせる……?」
「反魂術、言うなれば死者復活の魔法だな。しかし、その研究を行う過程で、何人もの犠牲者が出た。そのうち1人のものが、『成功するかも分からない反魂術のために、死ぬのはごめんだ』と言って村から逃げ出した。」
「穏やかじゃないな……」
「その事件をきっかけに、人々は死を、『素晴らしいものである』と考えることにし、治癒魔法を使わず、死をそのまま受け入れることとなった。その結果、治癒魔法を使える村民は、一人もいなくなってしまった。」
「それ以来『医者要らずの村』と呼ばれることは無くなったということですね!」
美味しいとこだけ持ってったな……ナヴィエ……
「こんなに壮大なストーリーがあるのに、なんで有名じゃないんだ?」
「もうみんな忘れてるってことだ、治癒魔法を使えたことも、そんな事件があったこともな、」
風化してしまったのか……
「それ、何年くらい前の話なんだ?」
「記録によると、100年以上は経っているようだが、プレイヤーが関わっているという訳では無いらしい、恐らく設定上の年数だろう」
「100年……」
急に数字が大きくなりすぎて、もはや驚く気も起きない
「じゃあ、100年以上経ってから、プレイヤーがこの村を見つけたってことだね?」
「そういうことだろうな」
だとしても、確実に犠牲者はいる訳だから、誰かが伝えるべきだよな、
「というわけで、しばらくTellさんは、この村で匿って貰うことにしましょう。犯人を見つけ次第、その人物に警告をし、もう情報攻撃を行わないように説得します。それでも応じなければ、それ相応の措置を取ります。」
「じゃあ、それまで、この村で隠れてればいいのね?」
「そういうことです。」
「どうする? 金払うなら、私も犯人探しに協力しないこともないが?」
ビジネスチャンスは逃さないルシルさんであった。
「そうだな、二人いた方が効率的だ、いくらで協力してくれる?」
「海賊船で手に入れた宝を換金したんだろう? その1部でいい、」
「ちょうど良かった。これでいいかい?」
Tellさんは先程、RUSHさんに支払った額と同じくらいの札束をルシルさんに渡した。
「いや、この半分でいい、Tellはお得意様だからな、」
「そっか、じゃあ、それで頼む」
「了解した、良い知らせを期待していてくれ、」
強力な助っ人をゲットしたようだ。
「よし、それじゃ、もう行こうか、」
「そうか、色々と世話になった。」
「こっちこそ、ありがとう、」
「せめて最後はみんなで見送ろう、他のやつらを呼んでくる。」
そう言ってルシルさんは、端末を持って奥に行ってしまった。私たちは荷物を持って玄関に行った。
 
「じゃあな、Tell、KUMI、困った時はいつでも依頼文おくれよ?」
「俺の店にも、また来てくれよな!」
「本当にありがとうございました!」
「私こそ、お世話になりました。」
「じゃあ、また会おうな!」
「皆さん、ありがとうございました!」
私たちは順番に別れの挨拶をし、新しい旅をスタートさせた。
「じゃあ、行きましょうか、」
町を出発し、ナヴィエの案内で先へと進んでいく。
しばらく歩くと、急に思い出したように、Tellさんがこんなことを言い出した
「JHARIBAN、一体どこにいるんだろうな?」
JHARIBANさんが本当は生きている。そのことはライムさんの手紙からわかった。
「黒ギルドのアジトじゃないですか?」
「確か、あいつらに幽閉されて、武器作りに協力させられてるんだよな?」
「そうだと思いますけど……」
「そうか……おれ、ちょっとわざとらしかったかな?」
「何がですか?」
「ほら、RUSHと喋ってた時に……」
「なぁ、もし、JHARIBANがまだ生きていたら、どうする?」
「だとしても、結果は一緒だよ、『Tell、師匠のパーティに入ってくれないか』って頼んでるさ……」
「ああ、あの時ですか……一瞬ヒヤッとしました。Tellさん、ライムさんとの秘密を破っちゃうんじゃないかって、」
「でも、あんな形でしか、伝えられなかった。」
Tellさんも、心を痛めていたんだな、
「何の話ですか?」
急にナヴィエが首を突っ込んできた
「ああ、RUSHの話だよ、ライムに秘密だって言われたことをうっかり喋りそうになっちゃって、」
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Tellさん、ナヴィエには絶対喋らないでね…………
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