カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

選択の時

Tellさんは荷物を片付けていた。私も早く荷造りをしなきゃ、

「KUMIさん、修行に付き合っていただきありがとうございました。」

「いえ、私こそ、綺麗な絵が沢山見れて良かったです。」

あの魔法の絵の具凄かったな、同じ絵の具なはずなのに、どんどん色が変わっていって、1回も違う絵の具を使うことなく、色鮮やかな絵が完成してしまった。

「あの絵の具、これからは使うの自粛しないと、せっかく貰ったのに、すぐに切れたらもったいないですからね、」

ちゃんと、ものを大切にするいい子だな……こんないい子が猛毒を操るような超危険モンスターだとは思えないな。

「もし、今度またどこかで会えたら、また、一緒に修行しましょう。」

「分かりました。その時はまた、素敵な絵を見せてくださいね、」

「もちろんです!」

ライムさんにはもっと有名になって欲しいな。もっと世間がモンスターに寛容になってくれればいいのに……




荷造りを終え、Tellさんを迎えに行く、TellさんはRUSHさんと話し込んでいるみたいだ。

「本当に、全部買い取ってくれるのか?」

「ああ、使ってみたが、全部本物と遜色の無いものだったよ、本物と同じ値段でいい、買い取らせてくれ、」

Tellさんは、大量のマニの札束をRUSHさんに明け渡した。

「それ、どうしたんですか?」

「海賊船で手に入れた宝を質屋で換金したんだ。」

あれを全部集めたらこんだけの額になるのか、

「それと、この『裂星剣パーセク』、しばらく借りるぞ? 」

「いや、お前にやるよ、うちにあってもインテリアにしかならないし、」

「分かった、せっかくだから頂いておくよ、」

Tellさんはパーセクをアイテムストレージにしまった。パーセクがどんどん縮んで行く……

「別に、邪魔だったら置いてってもいいんだぜ?」

「いや、思い出の品として持っておくよ、」

随分でかい思い出の品だな……

「じゃあ、もう行こうか、」

「待ってくれ!」

急にRUSHさんが大きな声で引き止めた。

「 あのさ、ひとつ、頼み事があるんだけど……ちょっと、2人ともこっちに来てくれ、」

急になんだろう? RUSHさんに案内され、普段RUSHさんが仕事をしている工房へと入った。




「ライムから聞いてんだろ? 俺たちに届いた手紙の話。」

手紙って……




『絶対秘密ですからね』

『JHARIBANさんが私に課してくれた最後の仕事になるかもしれないんです。最後まで全うさせてください。』




あの話か……絶対秘密ってことは、ライムさんの手紙の内容を知らないんだよな、RUSHさん、

「師匠は、黒い鎧をまとった謎の組織に殺された……」

心が痛むな、教えてあげたい、あの人はまだ生きてるんだって……

「でも、死ぬ直前に、俺に最後の希望を託してくれた。」

RUSHさんは自分の机の上に置いてあった鍵付きの箱から、1枚の手紙を取り出した。

「それがこの手紙だ。手紙にはこう書かれている。『お前が諦めずに武器を作り続けていたら、いつかお前の目の前に、世界を揺るがす程の強さを持ったプレイヤーが現れるだろう』って、」

世界を揺るがすほどのプレイヤー……私が知ってる中ではTellさんしか居ないな

「……えっ、もしかして、俺の事……?」

「ああ、師匠は手紙の中で、『何故自分が武器を作り続けたか』を教えてくれた。昔、師匠に聞いたことがあったんだよ、『師匠が武器を発明し始めた理由』をさ、そしたら、『お前が1人前になったら教えてやる』ってはぐらかされたんだけど、師匠はそれを覚えててくれたんだよな。」

「武器を発明した……理由……?」

「あの人は、『最強のパーティ』を完成させようとしていた。『最強の武器』を発明し、それを量産して、全員でこのゲームをクリアしようと考えていたんだ。」

「そんな理由が!?」

「ああ、俺もびっくりしたよ、あの人はまだ、冒険者の心を捨てていなかったんだ。」

「驚いたな……」

そんな理由があったなんて夢にも思っていなかった。JHARIBANさんも、必死にこの世界に抗っていたんだな……

「世界を揺るがすほどのプレイヤー、きっと師匠は、自分の後継者を俺に探させようとしていたんだ。そして、俺は見つけた、師匠の野望を実現させられる後継者を……Tell、お前だ!」

「お、俺が、『最強のパーティ』を……?」

「ああ、『最強の武器』なら、俺が作る、俺と一緒に、師匠の後継者になってくれないか……?」

「そ、それは……」

私には、Tellさんの悩んでいる理由がわかる。私たちがゲームの世界を旅している目的は、あくまで『死ぬため』だからだ……

「無理にとは言わない、お前の旅の目的とは違うものだからな。でも、俺は、師匠の後継者はお前しかいないと思っている。」

「……せっかくだけど、俺は元の世界に戻る訳には行かないんだ。」

「そうか……もし考えが変わったら、いつでも俺に連絡してくれ……」

RUSHさんにとって、Tellさんは最後の希望だったのかな……JHARIBANさんが生きているなど、知る由もないのだから……

「なんで……こんなことになっちまったんだろうな……」

「大丈夫、きっとすぐ見つかるさ、俺ぐらい強いやつなんてさ……」

「そっか……あのさ、」

「何?」

「このこと、ライムとナヴィエには内緒な、あいつらNPCだから、このことを運営に報告するかもしれないだろ?」

「そうだな、そうしておこう、」

私は、Tellさんを促し、RUSHさんの部屋を出ようとしたが、突然Tellさんが立ち止まり、RUSHさんに背を向けたままこう言った。

「なぁ、もし、JHARIBANがまだ生きていたら、どうする?」

「だとしても結果は一緒だよ、『Tell、師匠のパーティに入ってくれないか?』って頼んでるさ……」

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