カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

ついにボス戦へ

シャレにならないくらい怖い思いをしたが、ジャンプの出来ないライムさんを向こう岸に運ぶだけでなく、私たちもアスレチックを飛ぶことなく、向こう岸に着けた。

「よいしょっ!!」

「はぁ、引き上げてくれてありがとうございます、」

完全に伸びきってしまったライムさんは、下半身を切り離し、上半身だけの状態でルシルさんに引き上げられた。

「大丈夫なんですか? その体、」

「大丈夫ですよ、こうやって一旦体をまとめて……」

ライムさんが普通のスライムのような球体状になった。そして数秒後、ライムさんの形に再構成された。

「もっかい作ってしまえばOKです。」

しかし、上半身だけをまとめて、そこから体を作ったため、最初の時よりかなり背が縮んでしまった。

「なんかすごい優越感……」

ルシルさんが優越感を感じている。自分より背の低いものを見たからだろうか、

「ごめん、今のナシ、自分で言ってて虚しくなった」

可哀想に、もっと牛乳飲みな? ルシルさん、




遅れてTellさんもこちらにたどり着き、ついにボス戦まで漕ぎ着けた。

「その部屋には僕がいる。」

カルキノスの声、最後に、カルキノスと戦わなくてはいけないようだ。

「さぁ、そのドアを開けてくれ、僕をこの部屋から救ってくれ……」

『封魔の扉』

ボス部屋にも額縁がはってある。封魔の扉、カルキノスはここに封印されていた魔物だったんだ

「……行きましょう!」

私たちはドアを開け、ゆっくりとその部屋に足を踏み入れた。

部屋に入るとすぐに、巨大なキューブの形をした、青い物体が目に入った。

エネルギーで作られた結界だ。




「さすが、警備員が沢山いるな、それに、結界魔法が張ってある」




あの時、セキュリティとしてかけられていた結界魔法だ。よく見ると、キューブの中に小さな人型の何かを見つけた。人間の胎児のような姿の物が体育座りの姿勢で浮かんでいる。彼がカルキノスなのだろう、厳重に封印してあるようだ。

「……バチッ!!」

「ッ!!?……こ、これは!!」

Tellさんが結界に触れると、電流の様なものがTellさんに流れた。

「僕はその中にいる、壊してくれ、その檻を、僕はここにいる、だから道を切り開いてくれ、僕はその道を行く、僕の行く道はやがて、君の行く道にもなる。新たな誰かを導くために、今度は君が僕を導いてくれ!」

『多次元思念体』
『カルキノス:出現』

カルキノスの結界を中心に、無数の石が浮かび上がる。

「どうやら結界魔法を施した魔法石らしい、あれがこのボスの基本攻撃のひとつだろうな、」

「これらは僕の意思に関係なく、僕を守ろうと君たちを攻撃してくる。奴らの攻撃をかいくぐり、僕本体を倒すんだ、」

ボス自らが倒し方をナビゲートするなんて珍しいな、

「ビュウウン!!」

「みんな伏せて!!」

「ドゴーン!!」

レーザー攻撃、まずはあの魔法石を壊さないといけないようだ。

「あの石を壊しましょう、」

「そうだな、行くぞ!」

浮かんでいる魔法石は20前後、私たちは3人、単純計算で1人7個は破壊しなければならない。

「はぁっ!!」

「ガキンッ!!」

魔法石に攻撃をあびせてみたが、甲高い音を奏でるだけで、破壊には至らない、

「どうだ?」

「ダメです、硬くて壊せません!」

「破壊力が必要ってことか、なら早速!」

「ジャキンッ!!」

Tellさんの装備していた剣が変わった!『クイックイクイップ』を使ったのか!!

「行っけぇ!! ダッシュアタック!!」

「ズギャン!! ドゴーン!!」

Tellさんの動きが前よりも格段に早くなっている。よく見ると剣の刀身がとても細くなっている。レイピアのような武器なのだろうか、一瞬で近くの魔法石を全て壊してしまった。

「よっと! まあいい感じだな、」

「Tellさん凄いです!!」

「……驚いたな、かなり使いこなせてるじゃないか、」

「今のは武器がよかったから何とかなっただけだよ、」

そう言ってTellさんは、先程のレイピアを私に見せた。

「『フラッシュレイピア』、元々かなり早いスピードで連続攻撃をするように造られたものだから、多少乱暴に扱っても問題ないし、こいつより重い剣を装備してる時に交換すると、剣が軽くなった気がして、より早く動けるようになるんだ。」

『フラッシュレイピア』か、武器の特性を理解し、それをいつでも引き出せる記憶力、即座に状況を理解する状況把握能力、そして身体能力、どれかひとつでも欠ければ使いこなせないスキルを、まだ、荒削りながらも、Tellさんは身につけつつある。

私には到底たどり着けそうもない次元だ。

「このまま全部壊すよ!!」

「ビュウウン!!」

「あっ!?」

まずい! レーザー攻撃だ!

「やっ!!」

「キーン!!ドガーン!!!」

「えっ!? 今何が起こって……!?」

突然レーザーは剣に当たって跳ね返り、レーザーの反射で魔法石は壊れた。

「KUMI、よく見てみろ、」

Tellさんの装備している剣を見ると、それは金色に輝いていた。




「これは、金の剣か、戦闘に使うよりも、売ってお金にしてしまう方が、遥かに得であるとされる、」




「あいつ、金をレーザーの反射に使ったんだ。レーザーも所詮は光、鏡を利用すれば簡単に反射できるからな。」

鏡の反射を一瞬で思いつく発想力、この人、一体どこまで強くなるんだ……?

「ドガーン!!!……ドガーン!!!」

魔法石は次々と破壊され、石から解き放たれた魔力は無尽蔵に爆発音を響かせる。

「これで最後だ!!」

「ジャキンッ!!ドガーン!!!」

全ての石は壊れた。わずか数十秒の出来事だった。

「……そうか、壊れてしまったか、 」

「なっ!?」

「壊れて……しまった……?」

「全ての魔法石を壊すと、私の閉じ込められている、この、結界牢が作動する。」

カルキノスを閉じ込めていた、キューブ形の青い物体が、少しずつ展開し、複雑な形状になった。

「さぁ、君ならたどり着けるはずだ、進め! 結末は君自身が知っている……!」

ここからが……本番ということか…………

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