カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

仕掛けの仕掛け

一瞬ヒヤッとしたが、どうやらこの場所にJHARIBANさんは来ていないらしい。殺されてる訳でもないようだ。

「絵を見た時の解釈は、人それぞれ違う。たまたまあのスライムの彼女が、あの絵からJHARIBANという男を連想したに過ぎない」

「それぞれの絵をライムが見た時に、ライムの解釈した内容が、そのままステージの仕掛けとなって現れているわけか、」

「だとしたら、最初の『妖精たちの歓迎』で、妖精たちに襲われたのにも納得がいくな」

「どういう事ですか?」

 「ピクシー系統のモンスターの中には、スライムを主食としている奴がいるんだ。自分より大きなスライムを見つけて、集団で襲いかかり、体液を固めて球体状にして、巣へと持ち帰るんだよ」

なんか、あれに似てるな、 スズメバチがイモムシに襲いかかって、肉団子にして持っていくやつ、小学生の頃に、怖いもの見たさで虫図鑑を読んで、その事を知ってびっくりしたのを覚えている。

「さて、次の場所に向かうか、」

少しずつ前に進んでいく。

「それにしてもこいつ、めちゃくちゃいっぱいいるな、」

檻の中の悪魔たちを観察しながら、ルシルさんが呟いた。

「こう何匹も同じモンスターばかり見てるとゲシュタルト崩壊を起こしそうだ。」

確かにずっと同じ景色ばかりが続いている。そして、しばらく歩き続けると、不思議なことに、例の空室の檻へと逆戻りした。

「マジか、また戻ってきたぞ……?」

「もうループはいいって……」




「ほら、あそこに巣を作ってる毒グモがいるでしょ? あいつさっきも見たんだよね、」

じゃあ、本当にループしている……?




確かにあの時を考えると、ループ系の仕掛けは2回目だな、

「さて、どうやって進もうか、」

とりあえず、あの空室の部屋が入れるかどうか確かめなきゃだな、

「ガシャンガシャン!!」

「鉄格子はかなり頑丈みたいだ。外れない、」

鉄格子は鎖でぐるぐる巻きにされており、南京錠で施錠されていた。

「随分と古びた南京錠だな、」

確かに所々塗装が剥げており、錆び付いた部分も見受けられた。

「よし、ぶっ壊すか」

「金属だぞ? どうやって壊すんだ?」

「レベルを上げて物理で殴る。RPGの鉄則だよ、」

そう言うとルシルさんは南京錠の前に立った、

「……ヴァオレス」

ルシルさんがそう唱えると、一瞬だけ、ルシルさんの体が光ったような気がした。

「一時的な攻撃力強化の魔法だ。効果持続性は低いが……」

ルシルさんは自分の使った魔法を説明しながら、南京錠に手をかけた。

「バキッ!!!」

「うわぁっ!?」

「とまぁこんな感じに引きちぎることが可能なわけだ。」

引きちぎられた南京錠をルシルさんが投げ捨てる。

「コロンコロンカラン……」

甲高い金属音がこだました。

「へぇ、そんな魔法があったのか、」

「ああ、かなり便利だぞ? これ、自分に跳ね返ってくる反動ダメージも大きいがな、」

そう言ってルシルさんは自分の手を私たちに見せた。

「ほら、さっきのダメージのせいで指の骨が一部折れてしまったらしい。指が動かん」

「それ、大丈夫なんですか!?」

「大丈夫ではない、ものすごーく痛い」

その割には顔色ひとつ変わってないんだよなぁ……

「誰か再生ポーションはあるか?」

「再生ポーションって何ですか?」

「怪我とか、骨折とか、HPを回復しても直しきれないような傷を治すポーションだよ、」

へぇ、そんな物があるのか、

「そして、君がそう聞き返したってことは持ってないって事だな、Tell、お前は持ってるか?」

「いや、俺は持ってないけど、多分、ぼたんが……」

「キュ!」

出た、うちのパーティの回復要員、

「キュキュ!!」

「なんだ? このネズミ、お前のペットか?」

「はい、ボタニカルラットって言って、植物を生やせるんですよ、ポーションを生成する為の薬草なら、この子が出してくれます。」

「ピュ!」

ぼたんの吐き出した種が芽吹き、薬草が生えた。

「なかなか便利な能力してるな、」




ポーションを作り、ルシルさんに飲んでもらった。

「ありがとう、これであとしばらくしたら治るかな、」

「じゃあ、それまで、ルシルさんは戦闘に参加しないで、下がって置いてください」

「そうしたいところだが、なかなかそうもいかんだろう、極力下がるようにするが、一応私も戦闘には参加するつもりだ。」

確かに、まだまだ先は長いのに、戦力が減るのも痛いよな、

「さあ、先に進むぞ、」

鉄格子を開け、中に入る。




檻の中、ここに入れるということは、この先に進めるところがあるのだろう。大量の便箋に、羽根ペンとインク瓶、これを使ってライムさんと話が出来ないだろうか……

『だれ!?』

「うわぁッ!?」

急に便箋に文字が浮かび上がった。

「どうかしたか?」

「いえ、この便箋に文字が浮かび上がってきたんです。」

『そこに居るの? みなさん?』

とりあえず、またこの羽根ペンで、意思疎通ができないかやってみよう、

『私たちはここにいます。』

『お願い、そこに赤い血溜まりがあると思いますけど、』

『はい、あります』

『その中に入れば、こっちに来られます、お願いです!早く来てください!』

この血溜まりの中に……?

「どうだ、やはりライムだったか?」

「はい、そこの血溜まりの中に入れば、こっちに入れると言っていました。」

Tellさんが血溜まりを調べると、確かにそこは深く、池のようになっていた。

「これ、中に入れそうだぞ、」

「よし、そうと決まれば入るしかないだろう、」

え? 大丈夫かな、服が汚れたりとかしないかな、

とりあえず、ライムさんに

『今すぐそちらに行きます。』

と伝え、血の池に足を踏み入れた

「バシャンッ!!…………」

目の前がしばらく真っ赤に染まり、すぐに新たな場所に出た、そこは……

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