カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

狂気の作品

「やっぱり、ライムはもうあの絵の中に……?」

「分からない、でも可能性は十分にある。」

何とかして早く助けに行きたいけど、2時になるまで動けない

「もどかしいが、今は待つしかないな、」

でも、なにか行動しないとどうも落ち着かない。

「なにか、ライムさんと連絡を取れる手段はありませんか?」

「あいつはNPCだから、メールも届けられないし、通話できるようなものも持たせてない」

「ちょっと早めだが、出発してみるか?」

「えっ!?」

「Tell、お前透明化の魔法持ってなかったっけ?」




10時25分、既に美術館は閉館し、周りを警備員がうろついている。

透明化の魔法によって、上手いことバレないように動けてはいるが、ちょっとでも不審に思われたら大変だ、

「キュッ?」

「ごめんね、ちょっと静かにしててね、」

さすがに2回目だから、ぼたんも分かってくれたみたいだ。

今回の敵は絵だ。Tellさんのspを少しでも温存しておかないと、なにが起きるか分からない。強化版は使わずにそのまま進んでいく。

「さすが、警備員が沢山いるな、それに、結界魔法が張ってある。」

美術館が開館している時には、ただで通れた場所も、閉館するとちゃんとセキュリティが作動している。実に面倒くさい。

「仕方ないな、従業員専用階段から2階に上がって、迂回していこう、」

音を立てないようにそ~っとドアを開ける。

上手いこと通れた。どうしよう、すごい緊張する。潜入ミッションってこんなに緊張するんだ……

「……カチャ」

あっ、やばいかも、ちょっと音鳴った……

「ん? なんか、物音しなかったか?」

「あっ、すまん、俺が鍵落としちゃって、」

「いや、鍵落としたというより、もっと違う音だったような……まぁ気のせいか、」

良かった……鍵落とすのナイスタイミング、




潜入ミッションはまだまだ続く、次々と現れる警備員を避けながら進んでいく。

「この先が、例の絵のある展示室だな?」

「そうですね、」

展示室前には、やはり見張りがいる。迂回するルートもないし、どうやって行こうか?

「とりあえず、警備員を気絶させよう。一撃で大きなダメージを与えられたら気絶させられる。」

いわゆる首元を「トンッ」ってするやつかな? あれって、本当に起きるのかな?

「じゃあ、ここは私に任せろ、ヒプノス!」

「ポワンッ……」

ルシルさんがそう唱えると、大きなシャボン玉のようなものがゆらゆらと飛んでいって、

「パチンッ」
「ガタッ!」

警備員の近くで弾けると、警備員が気を失った。

「眠り状態にする魔法だ、どちらかと言うと『意識を奪う』と言った方がいいかな、」

意識を奪う……なにそれこわい、

「サンキュ、これで心置き無く結界を解除できる。」

制御室に行き、一旦結界を解除して、全員結界の向こう側に行ったことを確認し、結界を再発動させた。

「そろそろ、警備員起きるから、急いで逃げよう、」

ヒプノスの効果は少ししか持たないらしい。とりあえず今は先に進もう。




さて、例の絵の前にやってきた。

「これがその絵だな、」

「そのようだな、赤黒い渦巻きのような絵、調査依頼書に書かれていた特徴と一致している。」

「Tellさんどうですか? 昼の時みたいな、触りたくなる衝動はありますか?」

「……今は無いな、あと、ひとつ思い出したことがあるよ、」

「なんですか?」

「あの時のお土産のお菓子の事なんだけど、」




「そうだ、お土産にお菓子買ってきたぞ、」

えっ? Tellさんいつの間にお土産屋さんに行ってたんだ?




「あれ、お土産屋さんで買ったんじゃなかった。この絵の世界で貰ったものだ、」

「えっ!?」

「じゃあ、お前はもうあっち側の世界に入ったって言うのか?」

「ああ、どうやらこの絵は、近づいただけで幻覚を発生させるらしい。」

近づいただけで……幻覚を……?

「き   み   に   も   あ   げ   る   よ」

「ッ!?」

絵の近くに青色の文字が出現した。これがその幻覚なのか?

ふと気づくと、私のアイテムストレージに箱に入ったお菓子が出現した。

「もしかして、これが、Tellさんの貰ったもの?」




「いらっしゃいませ~」

「これをお願いします。」

「こちら、ゼロマニになります。」




突然、頭の中に映像が流れる。お土産屋さんの風景だったが、どこか普通じゃなかった。まるで、一瞬だけ夢を見たような……

もしかしたら、今の映像によって、Tellさんは記憶を書き換えられてしまったのかもしれない。

「おい、大丈夫か?」

「大丈夫です、軽い精神攻撃のようなものを受けただけなので、」

「ちゃんと今までの記憶はあるか?」

「はい、記憶を書き換えられるくらいの、深刻なダメージは受けてないかと、」

「こ   こ   は   き   ょ   う  き  の  せ   か   い」

また、青い文字が出現した。

「と   っ   て   も   た   の   し   い   せ   か   い」

「この文字は、皆さんには見えているんですか?」

「ああ、見えている。」

「私だけに見せている幻覚じゃないんですね、」

「え   に   ふ   れ   て   よ」

「お   い   で   お   い   で」

文字が少しずつ狂気を帯び、少しずつ恐怖を駆り立ててくる。本当にこの中に入るしかないのか……

私は恐る恐る絵の額縁に触れた。

『ダンジョンに入りますか?』

『ダンジョン名:ぼくのあとりえ』
『消費スタミナ:20』

「よし、行こう、」

Tellさんがついに、絵に触れた。Tellさんは絵の中へと吸い込まれて行ってしまった。私達も後を追って絵に触れた。

さあ、調査の始まりだ。

「カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

  • 蛇使い座のな~が

    今日からしばらくは、リアルの都合上により、更新が出来なくなります。ご了承ください

    0
コメントを書く