カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

新たなる道

アジトへと帰宅した私たちは、明日から始まる新しい旅に備えて、荷造りをしていた。

「Tell、はいこれ、」
「これは?」
「新しい剣だよ、ボス戦でドロップしたあれ、」

青銅の剣、私たちが初めてのダンジョンで初めて倒したボスから、手に入れた戦利品だ。

「でもこれは、KUMIさんのものじゃ……」
「いいえ、Tellさんにあげます。私たちで倒したから、私たちのものです。」

「そっか、ありがとう。」

「あっ、RAYさん、包帯変えないと、」
「ああ、ごめんな、頼むよ」

RAYさんはかなり無理をしていたらしい、包帯には所々血が滲んでいたところがあった。

「……だから無理するなって言ったのに、」
「あはは、ごめんね、少し傷口が開いてしまったらしい。」
「……痛くないんですか?」
「うん、まぁ、痛み止め飲んでたから大丈夫だよ?」

自分の痛みよりも、親友を元気づけることの方が大事だったんだ。

「あっ……やばい……」
「どうしました!?」
「薬切れてきた……身体中が痛い……!!」
「大丈夫か!?」
「今すぐ薬持ってきます!!」




今日は、疲れていたのか、薬を飲んだあとRAYさんは眠ってしまった。時刻は既に深夜12時を過ぎていた。

「今日はもう、明日に備えて寝ようか」
「そうですね、」
私たちは、部屋に戻り、それぞれの部屋のベッドに着いた。




出発の朝、私は武器の手入れをし、ゼットさんが作ってくれた朝ごはんをRAYさんの部屋に運んでいった。

「ありがとうな、君たちのおかげで、予定より早く完治しそうなんだ。明後日にはもう戦線復帰できるって、」
「良かったですね、色々と事件は起こりましたけど……」
「昨日のことは心配ないよ、直ぐに包帯を巻き直してくれたからね、応急処置さえしっかりしてたら、あとはゼットの治癒魔法があれば1発だよ」

そんなにすぐに治るんだ、治癒魔法って凄いな……

そういえば、RAYさんに一つだけ、聞きたかったことがあった。

「あの……RAYさんは行かないんですか?」
「えっ?」
「Tellさんの死に方、好きだなって言ってたのに、RAYさんはTellさんについて行かないんですか?」
「……ボクがこのギルドを作ったのは、みんなを救うためなんだ。ゲームクリアの方法を探して、この世界から出る。それがボクたちの目標だ。」

「……えっ?でもそれって……」




「ナビ妖精だって言ってなかっただろ? クリアしたら出れるとも、どうすればクリアなのかも、」
「そんな……じゃあ……!」
「一生出れない、そう思っていた方がいい」




「ああ、たしかにそんなことも言われたな、でもボクは、この世界から出れる方法があるって信じてるよ、例え本当に出ることが出来ない世界だとしても、ボクたちは最後まで足掻き続ける。」

「そうなんですね……」

「やっぱり、確証がないから諦めるっていうのは、違うと思うな、 確証がないからこそ、その可能性に賭けるべきなんだとボクは思うよ。」

強いひとだな、RAYさんは、

「まぁ、TellにはTellなりの考えがあるからさ、君たちは楽しく旅行してなよ、でももし、君たちが死ぬよりも先に、助かる方法が見つかったら、その時はみんなでここを出よう!」

「……はい、約束です!」

「お~い! KUMIさん用意出来た~?」

Tellさんが大声で呼んでいる。

「出来ました~! すぐ行きま~す!」




こうして私たちは新しい旅のスタートをきった。道中で出てきた敵を倒したりしていたから、ボスを倒した時の経験値も相まって、一気にレベルが上がった。今の私は、レベル30、Tellさんは「このゲームはレベル30になってからが本番」と言っていた。

「さて、次はどの町を目指そうか?」

Tellさんが聞いてきた。この辺りの大陸の地図を見てみると、ここからかなり近い距離に、3つほど街があることがわかった。

「じゃあ、この港町にしましょうよ?」
「いいね、じゃあ、ここに向かおうか、」

私が指さした町は、トロンティア町、ここは、漁業や、海洋生物学が、進んでいる町らしい。
目的地まであとどれぐらいかかるかは分からないが、日中には着けるだろうと、Tellさんは言っていた。




「さぁ、着いたぞ?」
「ここが、あの港町ですか?」

そこには活気ある街並みが拡がっていた。市場では大小様々な魚が並んでおり、街の人達が買い物を楽しんでいる。通路は左右に大きな壁がそびえ立っており、、その壁は色とりどりに装飾されたレンガで出来ていた。

視界の右上に文字のようなものが表示される。

『トロンティア町』

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品