カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

よばなしのすすめ

「俺が生まれたのは、ドーア町っていう街だった。この街は鉄工業が盛んで、最初のチュートリアルの時点で、かなり良い鉄の剣を手に入れられたんだ。」

「それが、その剣ですか?」

「うん、今使ってるこの剣、だけどね……」



その場所では、この剣すらも通用しないほど、強力なモンスターが沢山いた。
この街でスポーンした時に、俺とほぼ同時にスポーンしてきた仲間がいた。
俺はそいつと協力して、モンスター達から逃げて、別の街へ行く作戦を考えた。

しかし、そう簡単には行かなかった。
この森には、強いモンスターも弱いモンスターも沢山いるけど、俺の街の近くには、レベル1では到底倒せないようなモンスターばかりだった。
仕方なく、俺たちは2手にわかれ、必死に逃げ続けた。




「その後、そいつがどうなったのかは知らない」

「そんなことがあったんですね……」

Tellさんは、とても真剣な表情をしていた。いつも優しい雰囲気のTellさんがそんな顔するなんて……

「ただ、一つだけ言えることがある。そいつは、まだ生きてる。」

「……えっ?」

「あいつとは、1度パーティを組んだんだ、パーティを組むと、自動的にそいつとフレンド登録したことになる。KUMIさんも、俺とパーティを組んだ時に、『フレンドになりますか?』って表示されたよね?」

「確かに、そんな通知が来ました。」

「フレンドになったプレイヤー同士は、お互いの状況を通知で知ったり、メールを送って離れたところから意思疎通をしたりできる。」

「じゃあ、連絡が取れたんですか?」

「いや、それがまだ……」

Tellさんはまた黙り込んでしまった。
Tellさんのフレンドの人、どこに行っちゃったんだろう?

「でも! あいつとはまだ、フレンドのままなんだ、もし、既に死んでいたのなら、フレンドは解消されているはず、」

「なるほど……」

「……どこかで、助けを求めてる。そんな気がするんだ」

Tellさんも、辛い過去があったんだな、

「あれ? 俺なんでこんな話してんだろう?ごめんね、こんな暗い話じゃ、もっと寝られないよね、」

「いえ、大丈夫です。」

多分、Tellさんも1人で抱え込んでたんだろうな。誰かに聞いてもらいたかったんだろうな。誰かに話を聞いて貰えれば、少しでもつらさが和らぐから。

「本当は、誰にも迷惑かけないで、死にたかったのにな……」
「えっ!?」

いま、なんて……? 「死にたかった」!?

「ああ、そう言えば、言い忘れてたね、俺がこのゲームの世界に入ったのは、自殺するためだったんだよ」

「そうなん……ですか……?」

「昔っから、ゲームは大好きだったんだ。ゲームに殺されるなら本望かなって思った。このゲーム、かなり難易度高めだし、普通にプレイしてたら普通に死ねそうだから、」

「そんな事言わないでください! Tellさんなら、きっと生きてこの世界から出られます!」
「どうやって出るの?」
「えっ!? そ、それは……このゲームをクリアすれば……」

「じゃあ、どうすればクリアになるの?」

「えっと……」

そう言えば、考えたこともなかった。どうやったらこの世界から出られるのか、そもそも脱出する術は用意されているのか、

「ナビ妖精だって言ってなかっただろ、クリアしたら出れるとも、どうやったらクリアなのかも、」

「そんな……じゃあ……!」

「一生出られない、そう思ってた方がいい」

現実は、以外にも、あっさりと突きつけられた。
「一生出られない」実際に言葉で伝えられると、一気に絶望のふちに立たされたような気分になる

どうしよう……お父さん……お母さん……先立つ不幸をお許しください……

「さあ、暗い話はもう終わり、そろそろ夜が明けるよ?」

夜明け前が、一番暗い……




朝が来た。テントを片付け再び森の奥へと歩いて行くが、昨日の夜のことがどうしても気がかりでレベル上げにも身が入らなかった。どうすれば出られるのか、この人は本当に自殺してしまうのか、考えても仕方ないのに、考え続けていた。

「さあ、あともう少しだ、」

大きな坂を登り、少しずつ、少しずつ進んでいく、

やっとの思いで登りきると、開けた場所に出た。

「この先に別の街がある。そこまで行けば安全だろう、ここからはモンスターも少なくなってくるけど、油断は禁物だよ、」

「分かりました。 」

度々出現するモンスターを倒しながら、平原を歩いて行く




しばらく歩いていると、小さな町に着いた。
町の名前が視界の右上に表示される。

『カラキエム町』

ここが、新しい町か、

「ここの近くは、強いモンスターが出現するような森は無いし多分難易度も低いと思うよ?」

そうか、ゲーム開始から3日、ようやく安息の地を手に入れたわけか

「よし、ここから先は、君に任せる。この町の町民として働くのもいいだろうし、また旅に再出発するのもいいだろう。じゃあ、ここでお別れだ、」

「……Tellさんは、またどこかへ旅立つんですか?」
「ああ、短い間だったけど、君と旅が出来て良かったよ」

この後、どうしようか?やはり、町民になるのが1番安全なのだろうか?それとも、この世界から脱出する方法をさがしに行くのか?

「……じゃあ、バイバイ」
「はい、さようなら、Tellさんもお気をつけて、」

Tellさんを見送ろうとしたその時だった。

「待ってください!」
「ん?……俺?」
「お二人は冒険者様ですよね?」

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