カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

呪われた私

    私、黒崎 亜美くろさき あみはいじめられている。

   どうやら、 私が、この学校のことをあまり好きじゃないって思っているように、学校も、私のことをあまり好きじゃないと思っているらしい。
    人間は、自分とは異なるものを排除しようとする性質がある。私のような暗い人間は、ほかのクラスメイトにとっては排除するべき対象なのだろう。

「……なっ!黒崎もそう思うだろ?」

一瞬、思考が止まる。今まで全然違うことを考えていたから、話を聞いていなかった。どう返すのが正解なのだろうか?

「お前、急に振られたから黒崎困ってんだろ?」
「ははは、だって面白いんだもんこいつ、」

ああ、何だ、いつものやつか、

    私は人と話すのが得意じゃない、だからそれを面白がって、男子たちはわざと私に急に話を振ってきたりする。しかしこれは、私のことをおもちゃにされているだけだ、言うことを聞いていれば、とりあえずは対処できる。
    本当に問題なのは、女子たちからの理不尽な仕打ちだ。私はほかの女子たちと違って、周りに合わせたりするのが苦手だ。これは、共感によって仲間を作る他の女子からすれば、異質な存在である。それを排除しようとすることで、彼女たちは共感を深め、仲間でいられるのだ。

    教室に入ると、さっきまで賑やかだった空気が一瞬だけ凍りついた。しかしすぐまた、狂騒が戻ってきた。

「またあいつ学校来たの?」
「いい加減にして欲しいよね、」
「マジでウザイ、」

グループの仲間たちは、わざと私に聞こえるように悪口を言った。

「おはよう、黒崎さん」

リーダー格の女子が、不敵な笑みを浮かべながら話しかけてきた。

「今日の昼休み、廃校舎の女子トイレに来てね、実験がしたいの、」

    何を考えているのか分からないけど、どうせまた、私は酷い目に会うのだろう。
    廃校舎のトイレ、誰かをいじめるにはもってこいの場所だ。先生たちも近寄らないし、ほとんど悪行がバレることは無い。この間は思いっきり頭から水をかけられたっけ、服を脱がされたこともあったな、
    そんな惨めな私の様子を彼女達は悪魔のように笑いながら、スマートフォンで写真に撮る。

「はやく来ないと許さないからね、」

小さな声で耳うちされた。もう逃げられない。




午前の授業が終わり、廃校社の女子トイレに向かった。入るやいなや、8人くらいの女子たちが私を取り囲んだ。

「今日はあんたにやって欲しいことがあってね、実験台になってもらいたいの、」

    リーダー格の女子はまた意地悪な笑顔を浮かべている。でも、周りの女子たちは少しいつもと雰囲気が違った。まるで、リーダーであるはずの彼女に、不信感を抱いているような、そんな目をしていた人が何人かいた。

「あのさ、本当にやるつもり?どうせデマだとあたしは思うけど?」

    女子たちの中のナンバー2と思われる女子が口を開く、

「まあまあ、それも含めて実験だから、それに、もし本当だったら面白くない?みんなだって気になるでしょ?あの噂が本当なのかどうか、」
「それは……そうだけど、」

「あのさ、しの、私がやりたいんだからさ、わざわざ止めないでよ、」

リーダーに気圧されて、「しの」と呼ばれた女子も、黙ってしまった。

「じゃ、しのから承認も得られたことだし、早速実験を始めまーす。」
「あっ!!」

    リーダーに携帯を強奪されてしまった。リーダーが携帯を操作し、しばらくすると、私の携帯に見たことの無い画面が映し出されていた。

「これね、ゲームアプリ、このゲームをインストールすると、一生呪われるんだって、」

画面には、同意する、というボタンしかなかった。おどろおどろしく、ゲーム名が赤い文字で表示されたアイコンが映し出されている。ゲーム名は「カースオブダンジョン」ダンジョンの呪いという意味だ。

「はい、早く押して。」

    私にはおろか、リーダーやほかの女子達もどのような呪いが降りかかるのか分からない。そんな状況でこのボタンを押さなきゃいけないなんて……

「早く押せよ、」

リーダーが追い詰めるように、声のトーンを少し落として言った。

「お~せ……お~せ……」
「お~せ……お~せ……」

誰かが押せ押せコールを始めた。まるで病が伝染するかのように、最初は不信感を抱いていた女子たちも一緒になってコールに参加している。私は少しずつ、着実に追い詰められていった。もう、押すしかない……




こうして私は、このゲームに呪われた。その後、「私」がどうなったのかは知らない。

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