後輩は積極的

Joker0808

第18話




「石川さん! 荷物持とうか?」

「あ、大丈夫。そんなに重たくないから」

 男子達と合流し、私たちは夏祭りを楽しんでいた。
 射的に金魚すくい、お馴染みの屋台がところ狭しと並んでいた。

「石川さんは夏休み何してたの?」

「えっと、バイトと勉強かな?」

 鬱陶しい……。
 正直そんな事を思ってしまうほど、先ほどから男子が代わる代わるに私に話し掛けてくる。
 
「バイト? どこでやってるの!?」

「えっと……」

「はいはい、男子。愛実が困ってるでしょ」

「てか、下心丸見えだし」

 鬱陶しいと思っていたら、友人の女子達が間に入ってくれた。
 ありがたいが、元はといえばこの子達のせいなのだが……。

「私らにも構いなさいよ!」

「えぇ……俺らの目的は石川で……」

「あんたらごときが、愛実と釣り合う訳ないでしょ」

「なんだとぉ!?」

「大体男なんてものはねぇ……」

 なんだか良く分からないけど、言い争いを始めてしまったクラスメイト達。
 私は先ほど買ったリンゴ飴を舐めながら、早く終わらないかと様子を眺めていた。
 確かに他にも女の子が居るんだから、平等に扱うべきだと思う。

「はぁ……」

 私はため息を吐きながら、スマホを取り出す。
 すると、スマホSNSには一件の通知が来ていた。
 確認してみると、通知の主は先輩だった。
 ようやく返信が来た。
 私は直ぐにアプリを開いて、メッセージを確認する。

【温泉ナウ】

 そのメッセージと一緒に、先輩が居るのであろう温泉の写真が送られて来た。
 私はその写真を見て、思わずニヤケてしまう。
 私は直ぐに自分の浴衣姿を写真に撮り先輩に送る。

【どうですか? 可愛いですか?】

 写真とともに、私はメッセージを送る。
 すると、今度は直ぐに先輩からメッセージが返ってきた。

【良いと思うよ】

【可愛いかを聞いてるんですが?】

【可愛いよ】

【興奮します?】

【何でだよ】

 思わず先輩とのやりとりに夢中になってしまう。
 やっぱり先輩とのやりとりは楽しい。
 友達と祭りに来ているのを忘れてしまう。

「愛実?」

「え、あぁごめん。終わった?」

「お待たせ! もう大丈夫よ! 愛実に近づいた男子は、二学期から女子全員から無視される事にしたから!」

「酷すぎない?」

 私はそんな事を話しつつ、先輩に返信を返す。

【水着姿を想像して、何回しました?】

【何もしてねーよ!!】





「まったく……」

 俺は愛実ちゃんからのメッセージにため息を吐く。

「お、なんだ岬。彼女か?」

「違いますよ」

 桐谷さんからの言葉に俺はそう答えてスマホをポケットにしまう。
 俺たちは現在、全員でお祭りに来ていた。
 メンツがメンツなだけにかなり目立つ。
 正直あまり目立ちたくない俺からすれば、正直離れて歩きたい。
 
「なかなか混んでいるね」

「そうっすね、出店も普通だけどなんかテンション上がるっすね」

 地元の祭りにしては、結構規模が大きかった。
 家族連れやカップルなど、いろいろな人たちが居る。
 まぁ、異彩を放っているの俺らだろうけど……。

「蒼! さっきのでカップルは6組目だ! 爆発させて来て良いか!?」

「蒼、かき氷食べたい」

「岬君、私には綿飴買ってきて」

 高部先輩はカップルを見つける度、鋭い視線をカップルに向け、伊島先輩は桐谷先輩にべったりとしがみつき、間宮先輩はいつものように俺にわがままを言ってくる。

「先輩自分で買ってきて下さい」

「いやよ、面倒だし」

「じゃあ食うなよ……」

 そんな文句を言いながらも、俺は先輩の言うとおりに綿飴を買いに向かう。
 綿飴屋には列が出来ており、並ばなければならなかった。
 
「先輩め……これを知ってて俺に行かせたな……」

 俺は文句を言いながらも列に並び、綿飴を購入する。

「はぁ……少し並んだな……ってあれ?」

 周りを見ると、いつの間にか皆の姿が消えていた。
 綿飴を買っているうちに皆は先に行ってしまったらしい。

「はぁ……折角買ってきたのに……少しは待ってろよ……」

 不満を口にしながら、俺は綿飴にかじりつく。
 どうせ、見つけた時には「もうお腹いっぱい」とか言うんだ。
 だったら、もったいないので食べてしまおう。
 俺は皆を探して歩き始める。
 そう遠くには行って居ないと思うのだが、人が多いせいで先が良く見えない。

「はぁ……最悪電話するか」

 そんな事を考えていると、突然俺は後ろから両目を塞がれた。

「だ〜れだ?」

 この感覚は最近経験した。
 しかし、この声の主が俺の予想通りだとしたら、彼女はなぜここに居るのか気になった。

「えっと……もしかして愛実ちゃん?」

「ピンポーン正解でーす!」

 その声と共に俺の視界が明るくなり、目の前に浴衣姿の愛実ちゃんが現れる。
 
「ビックリしたな、友達と来てるの?」

「はい! 先輩こそ、今日はバイトを休んで一人で夏祭りですか? 寂しいですねぇ〜」

「違うわ! 今日はサークル活動だ。この後は飲み会」

「へぇ〜、じゃ…じゃあ、他の人も一緒なんですか?」

「あぁ、でもはぐれちゃってね。皆を探してたところだよ。そう言う愛実ちゃんは? 一人だよね?」

「いやぁ〜私もはぐれちゃって」

「そういうことね……じゃあ、一緒に探すか」

「え!? 良いんですか!?」

「あぁ……色々と心配だしね」

「? なんでですか?」

「気にしなくて良いよ」

 だってさっきから愛実ちゃんを狙った男達が、ちらちら愛実ちゃんを見ているし、話しかけようとスタンバイしている。
 愛実ちゃんはお世辞抜きで可愛い。
 だから、悪い男に何かされないか心配だった。
 夏だし、変な奴も多いだろう。
 だから俺は、愛実ちゃんを守る為に、友達の元まで愛実ちゃんを送り届けようと決めた。

「じゃあ、行こうか」

「はい! あ、それより先輩、私に言うことありません?」

「言うこと? 何かな?」

「いや、私浴衣ですよ?」

「知ってるよ?」

「どうですか?」

「あ、うん。可愛いよ」

「……なんか、社交辞令感が否めないんですけど」

「まぁ、半分社交辞令だし……ってイテテテ!! お腹を抓るのはやめてよ!」

 不機嫌そうに頬を膨らませる愛実ちゃんと、俺は並んで祭り会場を歩き始めた。 

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