ゼロの魔女騎士《ウィッチナイト》
プロローグ
最後の敵は自分が騎士として守り、救おうとした相棒の魔女だった。
「最後になるんだろうな、こうして話すの。だからさ、話させてくれないか。これまで思ってたこと、全部」
俺の目の前に一人の少女が立ちはだかっている。
少女は黒髪をつゆも揺らさず、周囲にカードを浮遊させて戦闘態勢を取っている。明らかな敵意、殺意。辺りには彼女の攻撃によってむざむざとえぐられた跡が残っている。
「バカなこと言わないで! ここで死にたいの!? 死にたいのかって聞いてるのよ! 太刀川黎!!」
彼女は耳も貸さず、カードを飛ばす。カードは氷塊に変化し、頭目掛けて直進してくる。
俺はその場から動かず、無抵抗を貫いた。氷塊が頬をかすめる。威嚇だということは最初からわかっていた。
幾日も相棒としてともに過ごしてきた俺と彼女。しかしお互いの願い、希望を譲れなかったがために敵対することになってしまった。
俺自身、いつかはこうなるんじゃないかとは考えていた。でも……このまま戦いたいとは到底思えなかった。
「相変わらずつれないな。遺言くらい言わせてくれてもいいと思うけど?」
「いいわ、元主従のよしみで聞いてあげる。それで思い残すことなく、遠慮なく殺し合いができるならね」
彼女の敵意は未だ張り詰めているが、攻撃をしてくる素振りは見られない。俺はゆっくりと武器を収めた。静寂が二人の間を流れていく。
最後の二人になるまで変わらなかった彼女の願い。それを否定する最後のチャンスは今しかなかった。だから彼女には知ってもらわないといけない。
――二人で過ごしてきたかけがえのない日々の中で俺がなにを思っていたのかを――
今の彼女にはまだ俺の言葉が届く。いや届けなければならない。
「僕が君に伝えたい気持ちは——」
特別ではなかった『僕』を特別な『俺』に変えてくれた君――『九条愛梨彩』へ。
君がいなければ今の俺はいなかった。君がいたからここまでこれた。
今度は僕が君を救う番だ。
なぜならこれは……『太刀川黎』が魔女の魂を救うまでの物語なのだから。
「最後になるんだろうな、こうして話すの。だからさ、話させてくれないか。これまで思ってたこと、全部」
俺の目の前に一人の少女が立ちはだかっている。
少女は黒髪をつゆも揺らさず、周囲にカードを浮遊させて戦闘態勢を取っている。明らかな敵意、殺意。辺りには彼女の攻撃によってむざむざとえぐられた跡が残っている。
「バカなこと言わないで! ここで死にたいの!? 死にたいのかって聞いてるのよ! 太刀川黎!!」
彼女は耳も貸さず、カードを飛ばす。カードは氷塊に変化し、頭目掛けて直進してくる。
俺はその場から動かず、無抵抗を貫いた。氷塊が頬をかすめる。威嚇だということは最初からわかっていた。
幾日も相棒としてともに過ごしてきた俺と彼女。しかしお互いの願い、希望を譲れなかったがために敵対することになってしまった。
俺自身、いつかはこうなるんじゃないかとは考えていた。でも……このまま戦いたいとは到底思えなかった。
「相変わらずつれないな。遺言くらい言わせてくれてもいいと思うけど?」
「いいわ、元主従のよしみで聞いてあげる。それで思い残すことなく、遠慮なく殺し合いができるならね」
彼女の敵意は未だ張り詰めているが、攻撃をしてくる素振りは見られない。俺はゆっくりと武器を収めた。静寂が二人の間を流れていく。
最後の二人になるまで変わらなかった彼女の願い。それを否定する最後のチャンスは今しかなかった。だから彼女には知ってもらわないといけない。
――二人で過ごしてきたかけがえのない日々の中で俺がなにを思っていたのかを――
今の彼女にはまだ俺の言葉が届く。いや届けなければならない。
「僕が君に伝えたい気持ちは——」
特別ではなかった『僕』を特別な『俺』に変えてくれた君――『九条愛梨彩』へ。
君がいなければ今の俺はいなかった。君がいたからここまでこれた。
今度は僕が君を救う番だ。
なぜならこれは……『太刀川黎』が魔女の魂を救うまでの物語なのだから。
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