異世界でも自由気ままに
龍神イグニス
「グラァァァ!」
俺は魔法を教えられると言うボールスの知り合いに会いに来ているのだが、目の前の洞窟からは、
「グラァァァ!」
と言う咆哮がずっと鳴り響いている。
この洞窟は森の深部にあるため家を出てから、かなりの数の魔物と戦ったがこれ程の咆哮を上げる者はいなかった。並みの者なら気を失い、鍛え抜かれた者でも動けなくなってしまうだろうと言う程だ。もっとも、俺は平気なんだがな。
洞窟の入り口に辿り着くとボールスが「挨拶してくるからここで待っとれ」と言って、一人で洞窟の中に入って行ったのが今から20分程前なのだが、それから咆哮は止むことなく響き続けている。
「どんな知り合いだよ……」
一人でする事もなく待たされ続けている事に愚痴をこぼしながら、更に10分程待っていると突然咆哮が止み、服がボロボロになったボールスが洞窟から出てきた。
「ふぉふぉふぉ、待たせたの。今から会いに行くぞい」
「じいちゃん、大丈夫なのか?」
「ん?ああ、大丈夫じゃよ。これは挨拶みたいなものじゃての、気にせんで良い」
 自分の恰好を見て苦笑いし、再び洞窟の中に戻ろうとするボールスの後をシグルズは不安を募らせながらついていった。
洞窟の中は縦5m横3m位の四角い道が、真っすぐ500m程続いておりその先に広い空間があることがマップで分かった。壁や天井はごつごつとした天然の岩肌だが、道は平らで非常に歩きやすくなっている。また、幾つもの光る石が壁にはまっているので想像していたような洞窟の暗さはなく、何故か空気も澄んでいる。光る石を解析してみると、
魔光石…大気中の魔力を取り込み発光する石。取り込んでいる魔力量によって発光の強弱が変わる。
という説明が脳内に浮かんだ。これは今後役立ちそうなので物質変換のために触れておいた。掘り出して持ち帰ってもいいのだが、誰かが住んでいる場所にある物を勝手にいじるのは流石にできない。何より触れられさえすれば後でいくらでも作り出せるのでこちらの方が効率がいいのだ。
奥に進むにつれて、魔光石の光を反射して輝いている物が幾つか壁にはまっているのを見つけた。それらを解析すると驚いたことに、属性石であることが分かった。属性石とは長い時間大量の魔力に晒され続けたもので、さらされた環境や魔力の属性と同じ属性を持ち、高い魔力を持っている事から魔道具や武具に使われる希少な鉱石であると本に書いてあった。
魔物からとれる魔石にも魔力や属性を込めることはできるのだが、属性石で作られた物と魔石で作られた物の性能を比べると圧倒的に属性石で作られた物の方が高い性能になる。その上属性石は火山の深部や聖泉などの普通は見つけられない場所にしかなく、入手は非常に困難である事が希少な鉱石であることの理由だ。
属性石を使って作られた魔道具や武具は、国宝として各国の国庫に保管されているか一部の高ランク冒険者が迷宮の深部で見つけて持っている位だ。そのため一般に出回っている魔道具などが魔石で作られていることは当然だろう。
(宝の山だな……)
この洞窟にある物だけでどれ程の価値があるのか非常に気になったが、今の問題は洞窟とは明らかに関係のな属性の属性石が数種類あるという事である。既に火・水・土属性の属性石を見つけているが、土はともかく火と水に関しては全く意味が分からない。考えられるのは道の先にいるであろうボールスの知り合いが、これらの属性石を作り出したという事だが、それはつまり属性石を作れるような膨大な魔力を持ち、属性石と同じ属性の魔法を扱えるという事を意味する。
(本当にどんな奴なんだよ)
シグルズは既にボールスの知り合いが人ではない事に気付いている。初めに聞こえてきた咆哮やボールスがボロボロになる程の力。更に底知れない魔法の力を見せられ、人ではないと思うには十分すぎる状態である。
(今の俺じゃ勝てないかもな……)
レベルが上がったことで最初からボールスを超えていたステータスは更に高くなり、天堂流武術の技術もあるため肉弾戦で負けることはまずないだろうが、相手が高レベルの魔法を使ってくるとなれば、話は別だ。この洞窟に来るまでも魔法を使う魔物との戦闘が何度かあったのだが、どの魔物も魔法の発動が遅く、その間に近づいて仕留めてきた。しかし近づく間もなく魔法を使われたとしたら、対処できるかは微妙なところだ。
(まあ、師匠が強いならそのだけ俺も強くなれるからいいけどな)
これから自分の魔法の師匠となる者が強者であったことに自然と口元が緩みながらも、属性石(結局全属性あった)を次々に触って道を進んでいくとマップ通りに広い空間にでた。半径200m程の円形の空間で天井までの高さは100m位だろう。ここも魔光石で視界が確保されており、しっかりと奥の壁まで見える。奥まで見えるが故にそれを見つけてしまった。
黄金に輝く鱗に覆われた全長40m程の体躯。あらゆる物を貫き切り裂く巨大な牙と爪。爛々と輝く金色の大きな瞳は見た者を委縮させ、または魅了する美しさを持っていた。たたまれた翼は一度広げられれば全てを吹き飛ばす嵐のような風を生み出すだろう。
「ドラゴン……だと……」
空間の中心には一体のドラゴンが地に伏せた状態でこちらを見ていた。
「やっときましたか」
ドラゴンは怠そうに言うと体を起き上がらせこう言った。
「私はイグニス、龍神イグニスよ。これからあなたに魔法を教えていくからよろしくね」
「あ、俺はシグルズです。よろしくお願いします……って今、龍神って聞こえたんですが」
「ええ、龍に神と書いて龍神よ?」
俺は息を吐き、深く吸いなおすと思いっきり叫んだ。
「神様ってなんでだよぉぉぉぉぉ!!」
これが俺とイグニスの出会いであり、魔法を極める始まりであった。
俺は魔法を教えられると言うボールスの知り合いに会いに来ているのだが、目の前の洞窟からは、
「グラァァァ!」
と言う咆哮がずっと鳴り響いている。
この洞窟は森の深部にあるため家を出てから、かなりの数の魔物と戦ったがこれ程の咆哮を上げる者はいなかった。並みの者なら気を失い、鍛え抜かれた者でも動けなくなってしまうだろうと言う程だ。もっとも、俺は平気なんだがな。
洞窟の入り口に辿り着くとボールスが「挨拶してくるからここで待っとれ」と言って、一人で洞窟の中に入って行ったのが今から20分程前なのだが、それから咆哮は止むことなく響き続けている。
「どんな知り合いだよ……」
一人でする事もなく待たされ続けている事に愚痴をこぼしながら、更に10分程待っていると突然咆哮が止み、服がボロボロになったボールスが洞窟から出てきた。
「ふぉふぉふぉ、待たせたの。今から会いに行くぞい」
「じいちゃん、大丈夫なのか?」
「ん?ああ、大丈夫じゃよ。これは挨拶みたいなものじゃての、気にせんで良い」
 自分の恰好を見て苦笑いし、再び洞窟の中に戻ろうとするボールスの後をシグルズは不安を募らせながらついていった。
洞窟の中は縦5m横3m位の四角い道が、真っすぐ500m程続いておりその先に広い空間があることがマップで分かった。壁や天井はごつごつとした天然の岩肌だが、道は平らで非常に歩きやすくなっている。また、幾つもの光る石が壁にはまっているので想像していたような洞窟の暗さはなく、何故か空気も澄んでいる。光る石を解析してみると、
魔光石…大気中の魔力を取り込み発光する石。取り込んでいる魔力量によって発光の強弱が変わる。
という説明が脳内に浮かんだ。これは今後役立ちそうなので物質変換のために触れておいた。掘り出して持ち帰ってもいいのだが、誰かが住んでいる場所にある物を勝手にいじるのは流石にできない。何より触れられさえすれば後でいくらでも作り出せるのでこちらの方が効率がいいのだ。
奥に進むにつれて、魔光石の光を反射して輝いている物が幾つか壁にはまっているのを見つけた。それらを解析すると驚いたことに、属性石であることが分かった。属性石とは長い時間大量の魔力に晒され続けたもので、さらされた環境や魔力の属性と同じ属性を持ち、高い魔力を持っている事から魔道具や武具に使われる希少な鉱石であると本に書いてあった。
魔物からとれる魔石にも魔力や属性を込めることはできるのだが、属性石で作られた物と魔石で作られた物の性能を比べると圧倒的に属性石で作られた物の方が高い性能になる。その上属性石は火山の深部や聖泉などの普通は見つけられない場所にしかなく、入手は非常に困難である事が希少な鉱石であることの理由だ。
属性石を使って作られた魔道具や武具は、国宝として各国の国庫に保管されているか一部の高ランク冒険者が迷宮の深部で見つけて持っている位だ。そのため一般に出回っている魔道具などが魔石で作られていることは当然だろう。
(宝の山だな……)
この洞窟にある物だけでどれ程の価値があるのか非常に気になったが、今の問題は洞窟とは明らかに関係のな属性の属性石が数種類あるという事である。既に火・水・土属性の属性石を見つけているが、土はともかく火と水に関しては全く意味が分からない。考えられるのは道の先にいるであろうボールスの知り合いが、これらの属性石を作り出したという事だが、それはつまり属性石を作れるような膨大な魔力を持ち、属性石と同じ属性の魔法を扱えるという事を意味する。
(本当にどんな奴なんだよ)
シグルズは既にボールスの知り合いが人ではない事に気付いている。初めに聞こえてきた咆哮やボールスがボロボロになる程の力。更に底知れない魔法の力を見せられ、人ではないと思うには十分すぎる状態である。
(今の俺じゃ勝てないかもな……)
レベルが上がったことで最初からボールスを超えていたステータスは更に高くなり、天堂流武術の技術もあるため肉弾戦で負けることはまずないだろうが、相手が高レベルの魔法を使ってくるとなれば、話は別だ。この洞窟に来るまでも魔法を使う魔物との戦闘が何度かあったのだが、どの魔物も魔法の発動が遅く、その間に近づいて仕留めてきた。しかし近づく間もなく魔法を使われたとしたら、対処できるかは微妙なところだ。
(まあ、師匠が強いならそのだけ俺も強くなれるからいいけどな)
これから自分の魔法の師匠となる者が強者であったことに自然と口元が緩みながらも、属性石(結局全属性あった)を次々に触って道を進んでいくとマップ通りに広い空間にでた。半径200m程の円形の空間で天井までの高さは100m位だろう。ここも魔光石で視界が確保されており、しっかりと奥の壁まで見える。奥まで見えるが故にそれを見つけてしまった。
黄金に輝く鱗に覆われた全長40m程の体躯。あらゆる物を貫き切り裂く巨大な牙と爪。爛々と輝く金色の大きな瞳は見た者を委縮させ、または魅了する美しさを持っていた。たたまれた翼は一度広げられれば全てを吹き飛ばす嵐のような風を生み出すだろう。
「ドラゴン……だと……」
空間の中心には一体のドラゴンが地に伏せた状態でこちらを見ていた。
「やっときましたか」
ドラゴンは怠そうに言うと体を起き上がらせこう言った。
「私はイグニス、龍神イグニスよ。これからあなたに魔法を教えていくからよろしくね」
「あ、俺はシグルズです。よろしくお願いします……って今、龍神って聞こえたんですが」
「ええ、龍に神と書いて龍神よ?」
俺は息を吐き、深く吸いなおすと思いっきり叫んだ。
「神様ってなんでだよぉぉぉぉぉ!!」
これが俺とイグニスの出会いであり、魔法を極める始まりであった。
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