チートスキルはやっぱり反則っぽい!?

なんじゃもんじゃ

チート! 010 オークションって半端ないです!

 




 2部が開始されるのでオークション会場に戻るとシローはなにやら視線を感じる。
 1部の頃から視線を感じていたが、なんだか面倒な視線のような気がする。
 敵意を感じないので余計に気になるが、今は無視をする。
 もう直ぐオークションの2部が始まるのに面倒を抱え込む必要はないだろう。


 (さぁ、牛君の肉ちゃんはいくらで落札されるでしょうかね)


 司会進行のローレシアは順に出品物を紹介し競りを進めて行く。
 出品物の良いところとだけではなく悪いところを隠さず正直に参加者に申告するのは好感が持てる。
 とは言え、悪いところを隠して出品すれば冒険者ギルドの威信が地に落ちるだろうし、悪いところを申告しても良いところを強調する事でダメージを最低限に抑えているローレシアの話術には感嘆するシローだった。


 公爵家の嫡男であるクラウドはいくつかの競りに参加はしたが落札はしていない。
 まだ本命は競られていないのだろう。
 ジャイアントモウの肉は今日の出品の中でもかなり希少で高額になるそうなので、もしかしたらクラウドもジャイアントモウの肉を狙っているのかも知れない。


「皆様、お待たせ致しました。本日の目玉商品となります、ジャイアントモウの肉で御座います。しかも上質の肉となり、これだけの肉質のものが前回世に出たのは100年以上も前になります」


 先ずは出品物の希少さをアピールだ。


「量は5Kgもあります。これだけの質でこれだけの量の出品がある事自体破格です。皆様、ご想像下さい。肉汁の滴るステーキ、脂は舌の上でとろけいつの間にかなくなり最良の香りを口の中に残します」
「早く始めろ!」「そうだ、そうだ!」「たまらんな」「付き合ってくれぇ~」「はやくやれ~」
「・・・分かりました、では早速競りを始めさせて頂きます。500万レイルからです!」


 ちょっと違う声もあったが、せっかちな人の声で競りを始めたローレシア。


 (開始値が500万レイルって半端ないな)


「600万だ」「650万!」「700万」「800万だ」「850万!」「900万だ」


 ドンドン値が吊りあがっていく。
 最初は貴族風だったり商人風だったり色々な人が参加していたが、金額が上がるにつれ貴族風の男が2人と豪商風の男が1人の3人で競う状況になっていた。


「1500万」「1700万!」「2000万だ」「3000万だ」


 (ブハッ! クラウドさん?!)


 先ほどまでの3強の戦いにクラウドが割り込み一気に3000万レイルまで値を吊り上げた。
 クラウドの参戦で先ほどの3人も色めき立つ。
 負けずと太った貴族風の男が3100万レイルをコールすると、豪商風の痩せた男が3300万レイルをコールする。
 更にクラウドが3500万レイルをコールすると、もう1人のガッチリ体型の貴族風の男が4000万レイルをコールしクラウドに挑発的な視線を送りニヤリと笑う。
 貴族のプライドだろうか、クラウドもその挑発に乗るように4200万レイルをコールする。
 どうやら他の2人は降りたようで、ガッチリ貴族が4300万レイルをコールし、即座にクラウドがコールする。
 クラウドの表情は余裕綽々だが、ガッチリ貴族の方は顔を真っ青にし数秒考え歯をギリギリと噛む。
 結局、4500万レイルでクラウドがジャイアントモウの肉を落札した。


 (恐るべし公爵家の財力! 4億5千万円相当の5Kgの肉ってヤバイよね? キロ900万レイル・・・900円じゃないよ、9000万円ですよ・・・半端ない・・・出品者としては嬉しい悲鳴だけど本当に良いのかしら? 希少だとは言え、たかが肉ですよ? もの凄い大金ですよ?)


「4500万レイル、他に御座いませんか?・・・4500万レイルで3番の方に」


 カンッ


 (クラウドさんはたかが肉に何でこんな大金をつぎ込んだのでしょうか? いくら何でも大金に過ぎるだろ?)


「あれは父の最期の食事にするんだよ」


 シローの心の声に答えるように話すクラウド。


「へ?」


 シローは急に話しかけられ、更に聞き捨てならない事を聞いたせいで無様な声を出してしまった。


「父はもう長くないのでね。最後にもう一度ジャイアントモウの肉が食べたいと仰っておられるのだよ。そこにこのオークションだ。何か因縁めいたものを感じたよ」
「何といって良いか」
「ははは、別に構わないさ、父は最期の望みが叶うのだから」


 重い話しだが、だからと言ってシローは牛君の肉をあげようとは思わない。
 それにそんな事を申し入れてもクラウドは拒否するだろう、貴族ってのはそう言う生き物だから。


 (しかし4500万レイルか、何に使おうかな? あ、手数料とかで15%が引かれるから、え~っと、3825万レイルが俺の取り分になるわけか)


 3部の出品物は奴隷だった。
 まさか冒険者ギルドが主催するオークションで奴隷が出品されるとは思ってもいなかったが、奴隷も商品と考えれば不思議ではない。
 良く考えれば貴族も多く参加しているので奴隷を捌くには丁度良い環境だ。
 人族だけではなく獣人族やエルフにドワーフなど多種族の奴隷が出品され、ローレシアは淡々と奴隷たちの競りを捌いて行く。


「次で本日最後の奴隷になります」


 最後の奴隷が現れた途端、オークション会場内が騒然となる。


「エルフの女性です。既に多くの方の視線が釘付けになっておられるようですが、この美しさ! エルフは総じて美しい顔立ちの者が多いのですが、この奴隷はエルフの中でも飛びぬけた美しさを誇っております!」


 ローレシアも思わず声を張るほどに美しいエルフの女性だ。


「但し、この奴隷は呪われております。この奴隷を美しいと思う周囲の者に不幸を振りまくと言われる呪いですが、呪いは【光魔法】か【神聖魔法】で解除ができると思われますので財力を持つ方、または優秀な人材を確保されている方であれば問題ないでしょう」


 (うわ~、これは厳しいわ)


 ローレシアの言う【光魔法】はスーパーレアスキルで【神聖魔法】はウルトラレアスキルになるが、共に持っている人を探すだけでも大変な魔法だ。
 と言っても神殿であれば【光魔法】か【神聖魔法】を持った神官がいるはずだが、『解呪』ともなるとそれなりに高位の神官でなければ難しいだろう。
 それでも高額の寄進をすれば『解呪』して貰えるのでオークションに参加している人からすれば『解呪』してから出品しろよと思うだろう。
 つまり、『解呪』を試みたが『解呪』できなかったと見るのが妥当ではないかとシローは考える。
 これだけ美人のエルフなので『解呪』さえしてあればかなり高額にると容易に想像ができるだけに裏を返せばそう言う事なのだと妙に納得できてしまう。


「ただ、【光魔法】がレベル5の方に『解呪』を試みて頂いたのですが成功しておりません・・・」


 (そこまで正直に言うんだね。つまり『解呪』は難しいと・・・あぁ、なるほど・・・普通の人は近寄らない方が良いね)






 ■ 個人情報 ■
 スノー
 エルフ 14歳 女
 奴隷 元姫


 ■ 能力 ■
 HP:26/26
 MP:188/188
 STR:40
 VIT:30
 AGI:75
 DEX:60
 INT:135
 MND:110
 LUK:50


 ■ ユニークスキル ■
 白雪姫


 ■ウルトラレアスキル ■
 精霊術師Lv1


 ■ スーパーレアスキル ■
 氷魔法Lv3


 ■ ノーマルスキル ■
 礼儀作法Lv4
 弓術Lv2


 ■ 状態 ■
 不幸の呪い




 @不幸の呪い
 美の女神の嫉妬による呪い。
 呪いを受けた者を美しいと思った異性が呪いを受けた者に触る事でその異性は不幸となる。
 不幸になった異性はVIT値とLUK値が1となり、6ヶ月後には共に0となるだろう。
 不幸になった異性は呪いを受けた者を忘れるか不細工だと思うことで回復するだろう。
 MND値が300以上、【神聖魔法】のレベルが7以上、更に呪いをかけた神と同格以上の神の加護を持っている者が『解呪』を行う事で呪いは解けるだろう。


 @白雪姫
 異性と永遠の愛を誓うと何かあるのかな?


 @精霊術師
 精霊と契約する事で精霊の力を行使する事ができるようになる。
 精霊が行使する魔法は精霊魔法と呼ばれ魔法より強力であり、消費MPも少ないのが特徴。


 @氷魔法
 水魔法の上位魔法。
 水と氷を操る事ができる。


 @礼儀作法
 紳士淑女が身に着けるべき礼節、そして行儀の所作。


 @弓術
 弓矢の扱いの才能。
 実際に訓練をしないと才能を十全に発揮できない。






「開始値は1万レイルです」
 ・・・・
 ・・・
 ・・
 ・・
 ・


 ローレシアが競りを始めたが『解呪』できない呪い持ちで、しかも周囲の人に不幸を齎すこのスノーと言うエルフを買う人は居るのだろうか? 答えはコールの声にある。
 つまりスノーを購入する者など存在しないのだ。


 彼女の呪いを『解呪』するにはいくつものハードルがあるのが分かるだろうか。


 まず1つめのハードルはMNDだ。
 MNDが300以上ある人は滅多というか数えるほどしか存在しないだろう。


 2つ目のハードルは【神聖魔法】だ。
 シローが【解析眼】で確認した結果は【光魔法】とはなっていない。
 つまりウルトラレアスキルである【神聖魔法】の持ち主だけがこの呪いを解けるのであり、しかもレベル7の【神聖魔法】が必要なのだ。
 【神聖魔法】の持ち主であればMNDが高い可能性はあるが、【神聖魔法】をレベル7まで育てている人など殆ど、・・・いや、ほぼ存在しないだろう。


 3つ目は術者が神の加護を持っていなければいけない事だ。
 神の加護はウルトラレアスキルの【神聖魔法】を持っている人を探すよりも更に難しく見つかる確立は低い。
 しかも美の女神と同格以上の神の加護が必要である。
 美の女神がどれほどの神格を持っているかは分からないが下手をすれば上級神なんて話しにもなるのでかなり厳しいだろう。


 4つ目はMNDが300以上で、持っている人が少ない【神聖魔法】と、持っている人が少ない神の加護、の3つをクリアしている人がどれだけ居るかって事だ。
 この世界に存在しているのだろうか、というレベルの話だ。


 当然、シローの事は考えずにだ。
 シローは加護持ちではあり、【チート】を使えばMNDを300以上、【神聖魔法】もレベル7にする事はできる。
 但し、エクリプ神が美の女神よりも神格が高いのか低いのかがまったく分からないのでシローであっても『解呪』できるかは不明だ。
 それに仮に『解呪』できたとしても、それによりシローのステータスについて勘ぐる輩が現れないとも限らない。


「入札される方は居りませんか?・・・」
 ・・・・
 ・・・
 ・・
 ・・
 ・


 予想通り誰も入札しない。


「入札がないようです。残念ではありますが・・・」


 カンッ


 スノーは終始俯き加減であり、入札がなかった事で奥に連れて行かれる。
 最後に嫌な気分になってしまったが、これでオークションは閉会となった。


「シロー、機会があれば再会もあるだろう」
「クラウド様もお元気で」


 クラウドと軽く言葉を交わしシローは指定された場所に向う。
 オークションで落札した場合の支払いは即金が原則で、当然の事だがジャイアントモウの肉を落札したクラウドもすぐに代金を支払わなければならない。
 そして出品者であるシローも冒険者ギルドからすぐに支払いがあるのだ。


「ジャイアントモウの落札価格が4500万レイル。当ギルドの鑑定料、保管料、オークション手数料、税などの諸経費が15%となっておりますので675万レイルを引かせて頂き、3825万レイルがシロー様へのお支払いとなります」


 ここはギルド会館内の個室。
 支払いの説明をしているのはメアリーだ。
 少し手が震えていたが、それは見なかった事にしてあげるシローである。
 額が多かったので3800万レイルはギルドに預け、25万レイルを現金で貰う。


 やや放心状態のメアリーと一緒に個室を出ると丁度先ほどの呪い持ちのスノーと言うエルフが商人らしき男と通り過ぎるところだった。


「可哀想に・・・恐らく鉱山行きではないでしょうか・・・」
「あんな細い体で鉱石なんか掘れるのですか?」
「難しい・・・でしょう」


 (はぁ、嫌な事を聞いてしまいました)


「ちょっと待って下さい」


 シローの声に商人らしき男は足を止めて疲れ切った感じの顔をこちらに向ける。


「・・・何でしょうか?」
「その奴隷について話があるのですが、時間を頂けますか?」


 男はスノーを一瞥し、シローを一瞥し、メアリーを見る。
 何故かメアリーが頷いており、男も頷く。


「分かりました」
「この部屋を使わせて頂いても宜しいですか?」
「はい、どうぞ」


 メアリーは即答で部屋の使用をOKし、一緒に部屋の中に入っていく。
 席に座った男の向いにシローとメアリーが座り、スノーは男の後ろで立つ。


「お話しとは何でしょう?」


 いきなり本題に入るよりも当たり障りのない話から入り少し場を温めるシロー。
 そして良い? 雰囲気になったところで本題を切り出す。


「その娘を俺が買い取っても良いと思いまして、ジョエルさんの条件を伺わせて下さい」


 ジョエルと言うのは椅子に腰掛けて驚いた顔をしている奴隷商人の事で、最初の自己紹介でそう名乗っている。


「本気ですか? あ、いえ、購入して頂けるのであれば・・はい」
「いくらで売って頂けますか?」
「き、金貨2枚で・・・」
「分かりました。これで」


 シローは金貨2枚をジョエルさんに渡し早速奴隷契約をして貰う。


「俺はシローです。君の名前を教えてもらえますか」
「・・・す・・のー・・・で・す」






 

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