カードメーカー【最強の魔物をつくりあげろ!】

なんじゃもんじゃ

021 オーク強化計画!

 


 十二層の魔物はオークやゴブリンの上位種に率いられたゴブリン種、そしてグラスタートルが現れる。
 グラスタートルは亀の甲羅の上に草が生えているランクFの魔物だ。
 甲羅は防具に、草は薬に、肉は滋養強壮があり、捨てるところがないので買い取り金額が良い。
 このグラスタートルが中堅探索者の良い収入源になっている。


 またゴブリンに関してはゴブリンナイトやゴブリンアサシンのような上位種に率いられている場合よりもゴブリンコマンダーに率いられている方が強化されているのが分かった。
 ただし、今の将磨たちのパーティーの敵ではない。


 十一層で手に入れた俊足のアンクレットは予定通りテンに装備させた。
 しかしテンは普通に装備しただけで進化やランクアップはしなかった。
 それでも目に見えてテンのスピードが上がったのが分かるほどにテンは強化されているようだ。


 今回から将磨の眷属にオークが加わっている。
 これはゴブリンコマンダーのゴブゴの指揮下にオークが入ったらどうなるのかの検証を兼ねている。
 純粋にパワー型のオークなのでゴブリンナイトのゴブツーと入れ替えている。


「へ~オークもゴブゴの指揮下に入ったら強化されるんだ~」
 オーク対眷属オークの戦いを見て美月が感想を漏らす。
「【カード化(二)】の強化とゴブリンコマンダーの指揮による強化で三割増しかな?」
「そんな感じだと思う」
 純粋にゴブリンナイトよりもオークの方が強い。
 そのオークが将磨の眷属になって三割程度の強化がされているのだから強いのは間違いない。


「そうするとゴブワンとゴブツーはお払い箱?」
「お払い箱って……まぁ、そうなるけど……」
「美月、言い方が露骨よ」
「言いつくろっても仕方がないじゃん~」
 美月は相変わらずである。


 更に検証することはオークの標準装備である木の棍棒に変えて鉄の金棒を持たせてみる。
 そうすると扱いに大差がないせいか金棒を持ったオークは三割強化を考えてもおかしいくらいに強かった。


「ゴブリンナイトの脳みそぐちゃって出たのみちゃったよ~、うえぇ」
「ちょ、ちょっとグロかったよね……」
 金棒で脳天を殴られたゴブリンナイトの首が胴体にめり込み、そして潰れた頭部から脳みそがベチャッと出てきた光景はさすがにグロかった。
 三人は今まで何度も同じような光景を見てきたが、そのなかでも一番のグロさかもしれない。


 オークに初心者用の装備を与える。
 初心者用の装備は自衛隊の迷彩服で、アメリカンサイズも扱われていたので二メートル程のでっぷりとしたデカい体のオークでも問題なく着れた。
 そこにテッパチを被ればオークだとは分からない。
 オークの特徴である豚鼻が少し人間寄りの鼻になっているからだ。


 一体分の装備は持ってきたが、二体分は持ってきていないので将磨は一体だけ召喚して装備を与えた。
 初心者装備と言っても二メートルの巨体がテッパチを被り金棒を持っているので迫力はある。


 オークの名は豚一郎にした。
 人間だと絶対にグレル名前だが、オークは嬉しそうにする。


 オークを加えた将磨たちは十二層を進む。
 出てきた魔物は基本的に霧子、美月、テンが物理的に倒す。
 勿論、将磨も毒魔法で援護するが、三人の前には将磨の援護は意味のないものに見えた。
 しかし将磨はスキルレベルを上げるためにも毒魔法を使い続ける。
 使い続けてレベルが上がればもっと戦力になるだろうと思い続けて使い続ける。


 十二層のボス部屋に到着するまでに何度か探索者に喋りかけられたが、基本的にダンジョン内で他の探索者やパーティーに近付くのは禁止されている。
 それを盾に将磨は探索者から距離を取る。
 話しかけてくるのは感じの悪い探索者ばかりだったので構わないだろう。
 それでもしつこく絡んできたら分からないように影丸に拘束してもらい走って逃げた。


 十二層のボスも情報にない魔物がいたが、ランクFのオークが増えたところで将磨たちには焦る要素はない。
 冷静に対応してボス部屋の魔物を一掃した将磨たち。
 そして運の良いことにまた宝箱が出てきた。


「まぁ、一般的な探索者よりもボス部屋が強化されているんだから宝箱くらい出てもいいよね~」
 美月はお気楽だ。
 しかし自分たちだけボス部屋の魔物を多く倒しているのだからご褒美があってもいいと将磨は思う。




 @魔力のネックレス
 説明:ネックレスをつけると魔力が大幅に上昇する。また魔力の成長力も上がる。
 レアリティ:★★★★
 残数:一




 これは文句なしで将磨が装備することになった。
 毒魔法に魔力が関係するのは想像でる。
 しかし魔力が魔法を撃てる回数に関係するのか、魔力の威力に関係するのか、は分からない。
 元々、将磨は毒魔法を使い続けていたが魔力が枯渇してだるくなったりしたことはない。
 だから後者の方だろうと考えている。


 〖探索者支援庁〗で林原に報告をして、余分なカードを売る。
 今日は木崎が出張中なので林原一人での対応だ。
 林原は将磨担当の窓口係りなので将磨たちが探索をしない日に休みを取っているそうだ。


 ランクFの魔物のカードは最低でも百五十万円で売れる。
 十枚売っただけで千五百万円だ。
 それでも〖探索者支援庁〗は将磨が出したカードを全て買い取っている。
 これは〖探索者支援庁〗で魔物のカードの販売が本格的に決定したからだ。
 将磨たちの安全を考えて探索者の少なくなる十八層以降に将磨たちが到達してから販売を開始すると言う。


 今、将磨たちが探索をしている十一層から十七層には多くの探索者がいる。
 これが十八層になるとぐんと探索者の数が減るのだ。
 十八層から群れを構成している魔物の数が一気に増えるため、かなり危険なのだ。
 だから十八層以降の層には探索者の数が少なくなる。


 月曜日は休んで火曜日、将磨たちは十三層を駆け抜けた。
 魔力のネックレスは予想通り魔法の威力に関係するようで、毒魔法のスリップダメージが多くなった。
 更に、麻痺の効果も上昇していた。


「即効性はないけど、長期戦には凄く有効だよね」
「十五層になると普通に十体以上の魔物の群れが出てくるから期待できるよね~」
 戦闘で少しは役に立てると将磨は嬉しく思う。


 十三層のボス部屋はオークの上位種であるオークリーダーが出てきた。
 オークリーダーは十六層以降に出てくる魔物なので強いが、その能力の神髄は配下の魔物を強化するものだった。
 つまり従えていた二体のオークとゴブリン種六体の能力は強化されていた。


 オークリーダーは最初に将磨の毒魔法を受けてスリップダメージを受けていたので配下の魔物が倒された時には虫の息だった。
 そんなオークリーダーをテンのワンパンで倒す。
 残念ながら今回は宝箱は出なかった。
 それでもオークリーダーのカードが手に入ったので戦力強化ができるだろう。


 オークリーダーの検証は次の探索日である木曜日にすることにして地上に戻る。


「今回はオークリーダーですか。今までの傾向でいくと、そろそろヤバそうなのが出てきそうなので注意してくださいね」
 将磨は林原から優しい言葉をかけられ感激する。
 霧子と美月は林原にしては珍しく優しいことを言うから二人は次の探索で本当に命がけにならなければ良いなと思った。


「福井遠征の前に怪我をして遠征に行けないなんてなったら笑えませんから」
 林原はやはり林原であった。
 将磨は先ほどの感動を返してほしいと思い、霧子と美月は「あははは」と苦笑いをする。


「明日は買い物行こうね!」
「うん、行こう!」
 〖探索者支援庁〗を出た三人はバス停の前でバスを待つ。
 将磨は原動機付自転車があるが、バスが来るまで二人に付き合って一緒にまっているのだ。
 そして待っている間に放すことは来週の福井遠征に何を着ていくとか、どんなお菓子を持っていくかなど、遠足のようである。


 バスが停留所に泊まりドアを開ける。
「神立君、また明日ね」
「将磨っち、バイバ~イ」
「また、明日」
 二人はバスに乗り込み後方の席に座ると窓越しに手を振る。
 ここで恥ずかしがって手を振らないと美月からグチグチとLINGリングがくる。
 しかもそれに返信をしないと電話をかけてくるのだ。
 本人は将磨をからかっているだけなのだが、将磨にしてみれば迷惑千万な話である。


 

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