カードメーカー【最強の魔物をつくりあげろ!】
021 十一層
十一層のボス部屋に配置されている魔物は、ゴブリンナイト、ゴブリンアサシン、ゴブリンスカウトが各一体である。
しかし将磨たちがボス部屋に入るとゴブリンナイト、ゴブリンアサシン、ゴブリンスカウトの他にオークが一体配置されていた。
「うん、いつもの通りだ~」
「サンドスコルピオよりはマシだよね」
「……」
美月と霧子の言葉は将磨を気遣ってのものだと分かる。
「よ~っし!私はオークをもらうね~」
「では、私はゴブリンスカウトを」
「じゃぁ、テンはゴブリンナイトを。ゴブゴは皆を率いてゴブリンアサシンを!」
それぞれが担当の魔物に攻撃を仕掛ける。
「マスター、拙者をお忘れでないですか?」
「影丸はいざと言う時の切り札だよ!」
「そうで御座ったか!」
最初の攻撃は霧子の矢だった。
ゴブリンスカウトも矢を番えていたが、霧子の方が早く矢を放ち、そしてゴブリンスカウトの胸に刺さった。
その衝撃で番えていた矢を落としてしまったゴブリンスカウト。
しかも胸に刺さった矢が邪魔で矢を番えることができない。
もたもたしていると次の矢が首に刺さる。
これがトドメとなりゴブリンスカウトは何もできずに絶命した。
次の戦いはゴブリンナイトに接敵したテンだ。
近付いた勢いそのままにゴブリンナイトの鎧の上からボディブローをぶちかます。
ゴブリンナイトの体がくの字に折り曲がり吹き飛ばされる。
「ふん、たわいもない」
ゴブリンナイトはその一撃で絶命していた。
美月はオーク目掛けて突進した。
その瞬間にオークに毒魔法がかけられたのが分かった。
毒に侵されたが構わずにオークが棍棒をふる。
灼熱鉄鋼の大盾にオークの棍棒が叩き付けられたが、それを跳ね返し手斧をオークのでっぷりとしたお腹に叩き付ける。
「ブモォォォォォォォッ!」
オークが痛みで顔をゆがめ叫び声をあげる。
「まだまだぁ~」
気の抜ける掛け声だが、美月は本気だ。
大盾を大きく振りオークの顔面を捉える。
この顔面への攻撃で動きが止まったとこに手斧がオークの胸にぐさりと刺さる。
胸から大量の血を流しもだえるオークの頭が下がったのでそこに手斧を撃ち込む。
オークの首が千切れ地面に転がった。
ゴブゴが率いるゴブリン部隊がゴブリンアサシンを狙う。
ゴブロクが火の球を放つとゴブリンアサシンはそれを避けるが、その避けた先にゴブスリーによって矢が放たれゴブリンアサシンの足に刺さる。
ゴブリンアサシン最大の武器である機動力が失われた瞬間である。
「フゴフゴー!」
ゴブワンとゴブツーがゴブリンアサシンに飛び掛かり剣を振る。
何とか持ちこたえたゴブリンアサシンだったが、音もなく現れたゴブフォーの短剣によって喉を切り裂かれ絶命した。
魔物が全て倒れてカードになると、ボス部屋の中央に宝箱が現れた。
「お~、当たりだ~」
「まだ分からないわよ」
美月は当たりだと喜ぶが、霧子の言う通り当たりかかはまだ分からない。
宝箱が出なかったら外れだが、宝箱が現れても高額アイテムではない可能性もある。
@俊足のアンクレット
説明:アンクレットをつけると俊敏が大幅に上昇する。また俊敏の成長力も上がる。
レアリティ:★★★★
残数:一
「当たりだー!」
「……当たりだよね?」
「そ、そうだよね?」
将磨が開けた宝箱の中にはやはりカードが一枚だけ入っていた。
それだけで期待ができるが、前回の宝箱から得た剛腕の腕輪並みの★★★★のカードが出てきたのだ。
「しかし俊敏か……このパーティーで俊敏と言われると……」
将磨、霧子、美月の三人はテンを見た。
剛腕の腕輪もそうだが、スピード型の戦いをするのはテンなのだ。
「今は戦力を上げることをしっかりと考えるのが良いからね……」
「そうだね~」
「うん、テンに装備させるといいと思うよ」
「それに十一層からは宝箱も多く出てくると思うから」
「私は~防御系とパワー系を予約ね~」
「もう、美月ったら」
「ははは、いいと思うよ。八幡さんだったら器用かな?」
三人は暫く話し合って転移の渦に入っていった。
そして〖探索者支援庁〗の一室。
「……」
「そうか、やっぱりまた出たか。うんうん、予想通りだね」
林原は将磨がいるとボス部屋の魔物が増えることにもう何も言わなかった。
木崎はボス部屋の魔物が増えるのも、宝箱から能力アップ系のカードがでるのも予想通りだとご満悦だ。
「それで、その俊足のアンクレットはどうするのかな?」
「テンに装備させようと思います」
「そうか、戦力が上がるのは良いことだと思うよ。ただ、今後、神立君たちのパーティーで不要な能力アップ系のカードが出たら買い取らせてほしいな」
将磨たちのパーティーの強化ができてからなら〖探索者支援庁〗へ売っても問題ないなと将磨たちは思う。
しかしそれだけ多くの能力アップ系のカードが入手できるかは分からないので、あくまでも余った場合に限定する。
今日はランクFの魔物のカードも多く入手した。
@オーク
説明:オーク〈ランクF〉を召喚できる。
レアリティ:★
残数:二十
@ゴブリンナイト
説明:ゴブリンナイト〈ランクF〉を召喚できる。
レアリティ:★
残数:二十
@ゴブリンアサシン
説明:ゴブリンアサシン〈ランクF〉を召喚できる。
レアリティ:★
残数:二十
@ゴブリンスカウト
説明:ゴブリンスカウト〈ランクF〉を召喚できる。
レアリティ:★
残数:二十
@ゴブリンハイメイジ
説明:ゴブリンハイメイジ〈ランクF〉を召喚できる。
レアリティ:★
残数:二十
@ゴブリンコマンダー
説明:ゴブリンコマンダー〈ランクF〉を召喚できる。
レアリティ:★
残数:二十
@ゴブリンコマンダー
説明:ゴブリンコマンダー〈ランクF〉を召喚できる。
レアリティ:★
残数:二十
@魔石(ランクF)
説明:魔物から得られる魔石。
レアリティ:★★
残数:一
ランクFのカードが大量に入手できた。
このうち、将磨が使う可能性があるカード以外を〖探索者支援庁〗へ売ることになるが、ランクFの魔物なので買い取り金額は一枚百五十万円が提示された。
これは〖名古屋第二 ダンジョン〗の十一層から十五層の付近で活動している探索者の年収を考えて試算されていると聞く。
簡単には買えないが、ちょっと頑張れば買える程度の金額らしい。
ランクFの魔物の魔石の買い取り金額が八千円なので、五人パーティーが一回の探索で二十五体を倒せたとすると二十万円となり、一人四万円の収入になる。
月に十五回探索すれば月収六十万円だ。
この金額は既に所得税、住民税、年金などが引かれているので丸々収入となる。
武器防具の手入れや新品の購入費、他にもポーションなどの消耗品を購入する費用は必要だが、魔石以外にも薬草や鉱石の採取でプラスアルファも狙える。
だからちょっと頑張ればランクFの魔物のカードも買えるのは嘘ではないのだ。
「そうそう、もうすぐ福井ダンジョンに行く時期になってきたね。準備は大丈夫かな?」
「はい。移動手段と宿の方は木崎さんの方で手配してもらえてますから大丈夫です」
「私も問題ないよ~。最悪、向こうでも買えるしぃ」
「あの、私も行けると思いますので、宜しくお願いします」
「おぉ、それは良かった。三人揃って行けるのは何よりだ」
霧子に関しては最近やっと福井行きの許可が下りた。
母親が最近まで福井行きにNOを出していた。
その母親を説得するのに時間がかかったが、外堀から内堀を埋めてやっと許可が下りたのだ。
霧子の家族は両親と二人の兄がいる。
その中で父親と二人の兄は早い時期から霧子が探索者になるのを認めていた。
まぁ、男性陣は霧子が言い出したら結構頑固なところがあるのを知っているし、何より認めずにいたら霧子に嫌われると思って早い段階で味方になった。
勿論、男性陣も危険な探索者に霧子がなるのは良いとは思っていなかったので、父親などは一千万円以上もする装備を買いそろえようとしたほどだった。
男性陣を味方に付けても母親は落ちなかったので、次に霧子が食指を伸ばしたのが祖父である。
言わずと知れたヤワタ生産所の創業者で八幡家の長である。
祖父は若い時に苦労をして世界に名だたるヤワタ生産所を作り上げた。
だからか今でも開拓精神旺盛で、霧子の探索者を応援した。
霧子の従姉にも探索者がいるのは祖父のそう言った考えがあってのことだ。
そして一族の長が許可を出したことで内堀も埋まり、母親も陥落したのだった。
祖父が許可を出しても母親はかなり抵抗した。
しかし祖父の「勉学は歳をとってもできるが、探索者は若い時にしかできぬ」とういこの一言で母親は項垂れて認めたのだった。
元々、霧子の分も新幹線や宿を抑えていたのでそれが無駄にならなくて木崎は良かったと思う。
そして何よりもパーティーが揃って福井ダンジョンに挑戦できるのが良い。
「武器や防具、それ以外で大きな荷物は宅急便で運ぶから二十七日の午前中にここへもってきてほしい。大丈夫かな?」
「「「はい」」」
その日は既に学校も冬休みに入っているので問題はないだろう。
年末なので運送会社も忙しい時期だが、木崎は既に一車をチャーターしているので荷物に関しては問題ない。
当日の将磨たちは身一つと貴重品を持ってくれば良いだけになっている。
「それから福井で神立君たちと一緒にダンジョンに入るのは、支援課の宇喜多と他に二人を予定している。神立君は宇喜多とは一度会っているかな」
「はい、四層の同行をしてもらいました」
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