カードメーカー【最強の魔物をつくりあげろ!】
013 六層探索
五層も問題なく踏破した将磨たちは六層に足を踏み入れた。
六層の地形も草原と森で、この草原と森の地形は十層まで続く。
この六層は将磨も初めてなので慎重に進もうと霧子、美月、テンに言う。
しかしこの二人と一体、いやもう三人と言うべきだろう、この三人が近付く魔物を瞬殺してしまう。
慎重という言葉の意味を考え直す将磨である。
将磨の仕事はスマホに表示されるマップを確認し三人に伝え道案内することと、霧子と美月が倒した魔物から魔石などの売れるアイテムを入手することだ。
しかし、ここにきて霧子の索敵能力が急激に成長してきた。
「二時の方向、ゴブリン系が四体です」
ゴブリンアーチャーのゴブスリーよりも索敵範囲が広くなったのだ。
「今度は私ね!」
盾を構えた美月がゴブリン三体とゴブリンソルジャー一体の群れに突貫する。
「あ、待ってっ!」
将磨が美月を止めたが戦闘モードに入った美月の耳には届いていないようで、美月はゴブリンに向かって走っていく。
そしてその美月の姿が一瞬で消えた。
「美月っ!?」
心配して美月が消えた場所に駆け寄る霧子。
「テン、ゴブリンを!」
「了解した!」
将磨も霧子の後を追い美月が消えた場所に向かう。
そして美月を見下ろす。
そう、美月は落とし穴に落ちたのだ。
「美月、大丈夫?」
「うぇ~、気付いたらなんか落ちてた~」
どうやら軽口を叩ける程度には無事のようだ。
「ちょっと待ってくれ、今ロープを出すから」
主に戦闘を担当する霧子と美月はバックパックを背負っていないが、戦闘よりサポート係の将磨はとても大きなバックパックを背負っている。
そのバックパックからロープを取り出し片方の先端を自分に括り付け片方を投げ入れる。
「痛っ!」
「美月、大丈夫なの!?」
「大丈夫、でも足を挫いてしまったみたい」
どうやら美月は右足を挫いているようでロープを頼りに壁を登るのは無理そうだと判断した将磨は霧子に手伝ってもらい美月を引き上げることにした。
「く、重い」
「ちょっと将磨っち、聞こえたわよ!」
思わず漏れてしまった言葉だが、女性に重いという言葉は禁句なのだ。
しかし美月は前衛職なので金属の防具や盾を装備していることから重量がかなり増えている。将磨が思わず口走るのも仕方がない。
なんとか美月を引き上げたところでテンが四枚のカードを持ってやってくる。
将磨はテンが来てから引き上げればよかったと思う。
テンなら将磨より力が強いのでもっと楽に美月を引き上げることができただろう。
「これを飲んで」
バックパックから取り出したポーションを差し出す将磨だったが、美月はそれを拒否する。
「この程度、大したことないよ」
「ダメだ。怪我をしたまま進めないよ」
いつになく将磨が厳しい口調で有無を言わさない迫力だ。
「わ、分かったわよ……」
受け取ったポーションを飲んだ美月の反応は酷い物だった。
「み、みずぅぅぅ~。喉がぁぁぁぁ~」
ポーションは不味いのだ。良薬口に苦しである。
「これに懲りて猪突猛進を控えてくれると助かるよ」
「そうね、美月はこうだと思うと回りが見えないから」
「う~~~」
口をとがらして不貞腐れる美月だったが、将磨と霧子の言うことが正しいと分かっている。
霧子とゴブスリーの索敵で魔物は近付く前に察知できるが、罠はそうはいかない。
それでも罠はスマホのマップで場所が確認できるのでありがたい。
しかしスマホのマップに情報がない罠もないとは言えないので、霧子は罠の発見を心がけて進む。
「罠を注意しているけど、なかなか難しいですね」
「仕方ないよ。【聖弓士の心得】は魔物の発見には高い能力を発揮するけど罠の発見に関しては【盗賊】系のスキルに劣るからね」
【弓士】の最上級スキルだと思われている【聖弓士の心得】が罠まで発見できたら【盗賊】系スキルの立つ瀬がない。
それが分かっている将磨は霧子に過剰な期待をしないが、そうすると罠対策として【盗賊】系スキルを持っている人が仲間にほしいところだ。
しかしここで将磨は閃いた。
ゴブリンシーフなら罠の発見ができるのではないか?と。
シーフは盗賊の意味だから可能性はあるだろう。
「ゴブリンシーフに罠の発見ができるか、ちょっと試してみたいと思うけど良いかな?」
「色々試すのは悪いことじゃないと思うわ」
「いいよ~」
霧子と美月の了承を得てゴブリンシーフのゴブフォーに罠を探させてみる。
そうすると何とゴブフォーは難なく罠を発見してしまう。
「ここまでアッサリ発見されてしまうと何だか凹んでしまいます……」
霧子はその罠を発見できなかったので、罠に関してはゴブリンシーフであるゴブフォーに発見を任せることにする。
今の将磨が召喚した魔物はテンを筆頭にゴブリンアーチャーのゴブスリー、ゴブリンシーフのゴブフォーとゴブゴ、ゴブリンメイジのゴブセブン、キラーバイパーのミドリ、ビックキラーキャットのダークの七体だ。
ハッキリ言って戦闘は霧子と美月だけでも過剰戦力に思えるほどで、そこにテンが加われば超過剰戦力だ。
だからゴブスリー、ゴブフォー、ゴブゴの三体は索敵と罠発見に注力させている。
ゴブセブン、ミドリ、ダークは完全に将磨の護衛である。
罠に関してもかなり安全性があがり、索敵は霧子によって非常に広範囲がフォローされているおかげで将磨たちの探索は順調に進んだ。
そして六層のボス部屋の前に辿り着く。
六層のボス部屋の陣容はゴブリンテイマーに率いられたイビルキャットが二匹とグリーンバイパーが六匹である。
しかし将磨のボス部屋の認識はデータにない魔物が現れる、だった。
「〖探索者支援庁〗の情報ではゴブリンテイマーが一体、イビルキャットが二匹、グリーンバイパーが六匹だけど、この他に魔物が出てくる可能性もあるから気を付けていこう!」
そしてボス部屋に入った一行。
「あ~、将磨っちフラグ完璧だね~」
「ゴブリンシーフが三体も余分にいますね」
「……俺のせい?」
ゴブリンテイマーが一体、イビルキャットが二匹、グリーンバイパーが六匹、この他にゴブリンシーフが三体そこにはいた。
「まぁ、シーフが三体多いだけで大したことないよ!」
「そうですよ!神立君のせいじゃないから!」
必至にフォローをしてくれる霧子の姿が余計に将磨の気を重くする。
「そんなに落ち込まないの!ほら行くよ!」
美月は盾を構え突貫する。
「あ、ちょっと美月ー!」
霧子が慌てて弓を構え矢を放つ。
将磨もゴブリンアーチャーのゴブスリーとゴブリンメイジのゴブセブンに慌てて援護射撃をするように指示を出す。
「テンも頼むよ!」
「了解!」
霧子の放った矢がイビルキャットに刺さる。
それだけでイビルキャットは息絶えるほどに霧子の矢には威力がある。
対してゴブスリーの放った矢は同じくイビルキャットに命中するが、息絶えることはなかった。
六層まで戦ってきて成長した霧子の弓は非常に高い殺傷能力を持っているのだ。
「はぁぁぁっ、とうっ!」
美月もショートソードをひと振りするとグリーンバイパーを真っ二つにする。
ここまで綺麗に真っ二つにするのは美月の剣の腕が上がっていることを物語る。
盾の使い方も上手く、剣の腕前も上がっている美月は魔物の中で獅子奮迅の働きを見せる。
霧子と美月に負けてはいられないとテンもゴブリンを殴り殺す。
テンの拳が当たるとゴブリンシーフの頭が爆発したように吹き飛ぶのだ。
まったく容赦がないテンの攻撃は直線的で力強い。
ゴブリンシーフが三体も増えたが今の将磨たちの敵ではなかった。
誰も怪我をすることなく、六層のボスを倒す。
テンとゴブセブンが倒したゴブリンシーフ三体とゴブリンテイマーはカードとなる。
内容はゴブリンシーフのカードが二枚、ゴブリンテイマーのカードが一枚、そしてゴブリンの陰のカードが一枚だ。
「レアリティ★★★が出たよ!」
@ゴブリンの陰
説明:ゴブリンシーフに与えるとゴブリンシャドーに特殊ランクアップする。
レアリティ:★★★
残数:一
「将磨っち、これすごいね~、ゴブリンシャドーなんて聞いたことないよ!」
「初めて聞きましたけど、ゴブリンシャドーなんてゴブリンの種があるのですか?」
「俺もゴブリンシャドーなんて初めて聞くよ。それに特殊ランクアップってなんだろう?」
〖探索者支援庁〗が発表している魔物の情報でもゴブリンシャドーはない。
全くの新種だと考えられるし、何よりシャドーってカッコイイなと中二な将磨だった。
「取り敢えず、木崎さんと林原さんに報告して確認しようか……」
「そうね、今日はここまでにして帰りましょう」
「え~七層も踏破したかったな~」
残念そうな美月と物わかりの良い霧子。
二人の仕草は魅力的だ。
健康的な容姿の天真爛漫な美月、清楚な雰囲気で一つ一つの所作が洗練されている霧子。
共に美少女であり最強クラスのスキルを持っている。
パーティーの雰囲気は良いし、将磨は二人の会話を聞きながら自分は良い仲間に恵まれたと頬が緩む。
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