ガベージブレイブ【異世界に召喚され捨てられた勇者の復讐物語】

なんじゃもんじゃ

ガベージブレイブ(β)_048_腕試し2

 


 カナンの広範囲殲滅魔法、ハンナの圧倒的なパワーとスピード、ベーゼのいやらしいまでの物量。
 これらが上手いこと連携を生み、三人は格上の相手でも倒していく。


 半径三百メートルの範囲を焼き尽くすカナンの先制攻撃によって数を大きく減らした魔族の軍団。
 もともとは千体ほどいたが、今は半分の五百体ほどになってしまった。


 ベーゼが眷属を召喚する。
 骸骨騎士がざっと五百体。
 それだけではなく、これまで倒したおよそ五百体の魔族も【吸魂】と【眷属召喚】のコンボで、ベーゼの眷属として先頭に立って戦っている。
 魔族が倒れれば倒れるだけ俺たちの戦力アップになるのだから、魔族にとってはたまったもんじゃないだろう。
 これは相手が魔族だからできたことだが、ダンジョンの魔物には使えない。
 ダンジョンの魔物はどうも魂というやつがないようで、【吸魂】ができないのだ。
 だからエンペラードラゴンをベーゼの眷属にすることはできない。
 まぁ、生きたまま使役はできるらしいので、ダンジョン産の魔物を使役したければテイマー系のスキルを取得すればよい。


「なんだこいつら!?」
「嘘だろ、なんでオルダイン様があいつらに味方しているんだ!?」
 魔族の声が聞こえてくる。
 自分たちの味方だった奴らが今では敵になっているので、困惑しているようだ。


「雑魚はベーゼに任せた。カナンとハンナは俺についてこい」
「「「はい(畏まりました)」」」
 さぁ、大詰めだ。
 あの魔族の軍団の後ろには大将がいるはずだ。
 大きなプレッシャーがひしひしと感じられる。


 カナンの魔法によって魔族の層が薄くなった場所に、ベーゼの眷属たちが穴をこじ開けてくれる。
 その穴を通り俺たちは敵の大将の元に向かった。


「まさかアースガルズとアイスヘイムの者がここまでくるとはな……」
 体長は五メートルほど。全身筋肉ゴリマッチョ。雄牛のような立派な二本の角。カラスのような真っ黒な羽根。お尻からは尻尾が生え、その尻尾は独自の意思を持った蛇に見える。
 姿は普通に強そうだが、何故かその魔族の瞳はとても可愛らしいつぶらな瞳だった。
 すっっっっっげーーーーー違和感がある!
 おい、カナン、そんなに笑ってやるなよ!


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 氏名:アマン・ベリートス
 種族:エンシェントエヴィル レベル四百四十
 スキル:【魔闘術III】【危機感知II】【錬金術III】
 ユニークスキル:【魔を支配する者】
 エンシェントスキル:【第二の命】
 能力:体力S、魔力EX、腕力S、知力B、俊敏A、器用C、幸運F
 称号:始祖魔族、試練を課す者


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 強いと思う。レベルもアンティアやクソジジィよりも上だ。
 気になるのはスキルの【錬金術III】とユニークスキルの【魔を支配する者】だ。
 【錬金術】の方はそのままの意味で、金属を錬成して思い通りに操るスキルだ。どうやって使うのか結構興味がある。
 【魔を支配する者】の方は魔族や魔物ではなく、魔力を自由自在に操るスキルだ。これも面白そうなスキルだ。


「俺はツクル。お前には恨みはないが、俺の目的を果たすための糧になってもらう」
「我を倒せるとでも思っているのか? アルスガルズの小僧が舐めた口をきく!」
 シリアスな場面だけど、あの可愛い瞳のおかげで台無しだ。
 これ、ハンナまで笑うんじゃありません!


 俺は黒霧を抜いた。
 にやりと笑うアマンの口元から巨大な牙が上下に四本見える。
 つぶらな瞳がなければとても凶悪に見えることだろう。


「エレキボール!」
 カナンの魔法から戦端が切られた。
「そんなもの!」
 アマンは自身の目の前に数本の棒を作り出す。
 するとエレキボールが軌道を変えてその棒に吸い取られるようにしてなくなる。
 どうやら避雷針を作ったようだ。
 アマンの持っている【錬金術】を使ったのだろう。
 カナンの魔法を雷系だと見抜き瞬時に避雷針を作ったのはよい判断力だ。褒めてやろう。


「次は我の番だ!」
 アマンは空中に五本の剣を錬成すると、その剣を飛ばしてきた。
 俺はカナンを抱え飛びのき、ハンナは剣の腹に蹴りを入れて打ち落とした。
 しかし剣は俺たちを追尾してくる仕様のようで、避けても軌道を変え向かってくる。


「はははは! 我の剣からは誰も逃げれぬわ!」
 逃げられないのであれば、滅すればいい。
 俺は黒霧で剣を迎え撃つ。
 黒霧の周囲に金色の光りがほとばしる。
「はぁっ!」
 俺に向かってきた剣を黒霧で迎え撃つ。
 ガッ! 剣が一瞬眩く光ると跡形もなく消滅する。


「なんだと!?」
 アマンが驚愕の表情をする。
 俺は残った四本の剣の内、三本を消滅させた。
 これは黒霧の刀身に【覇動】を纏わせることでできる技だ。
 黒霧プラス【覇動】のコンボは強力なので剣がその力を受けて壊れるのではなく、分子レベルで消滅してしまったのだ。


 残った一本の剣はハンナが手に取ってアマンに向かって投げつけた。
 自分の剣を投げつけられたアマンは驚いていたが、その剣をなんとか避けた。
「何故だ!? 何故我が剣を!?」
 自分がコントロールしていた剣を投げつけられて驚いているアマン。
 理由は至極簡単でアマンのコントロール以上の力でハンナが剣を投げただけだ。
 言い方は悪いが、ハンナの馬鹿力の方が上だったのだ。


「ご主人様、思っていたほどの強者ではないように見受けられるのですが?」
 ハンナが不思議そうな顔をして俺に話しかけてくる。
「それは俺たちが強くなっているからだろう」
 レベルだけではなく、地力も上がっているはずだ。
 そうじゃなければ、まだ五十近くも上のレベルのアマンと互角以上に戦えることに理由がつかない。
「む~、私の魔法は防がれてしまいました……悔しいです」
 カナンだけは魔法を防がれて不満げだ。


「防がれてもぶち壊すほどの威力の魔法を撃てばいいだろ?」
「そうですね。よし、ぶっ放します!」
 カナンは紅き賢者の杖を掲げると、魔力を練りだす。
 無詠唱で魔法を放てるとはいえ、威力がある魔法にはそれなりの溜が必要になる。
 一般的な魔術師なら詠唱をすることで魔力を練り上げる。
 カナンが今から放とうとしている魔法の威力だと十数分か、それ以上の詠唱時間が必要だ。
 それを十数秒で撃てるのだから、カナンの無詠唱は恐ろしく早いと言える。


「はーっはははは! 舐めるな!」
「うっ!?」
 アマンが何かをしたのか、カナンが片膝を地面につけた。
「どうした!?」
「魔力が……練り上げた魔力が消えました……」
 それを聞いた時、俺はアマンのユニークスキルの存在を思い出した。
 奴の【魔を支配する者】は魔力を支配する。
 それは魔法使いであるカナンには圧倒的に不利なスキルだ。


「そんなことができるのですか……」
 ハンナも驚いている。
「魔法がダメなら物理で戦うまでだ。ハンナ、行くぞ!」
「はい!」
 俺とハンナはアマンに向かって走りだす。


 剣と盾を錬成したアマンはハンナの攻撃を盾で受け止めた。
「グッ!?」
 しかし、盾で受け止めようとハンナの拳から解き放たれたパワーは盾を粉砕してアマンの左手を粉砕した。
「しっ!」
 剣で何とか牽制してハンナと距離をとったアマンに俺は黒霧を横に薙ぐ。
「グオッ!」
 剣を破壊してなお、黒霧はアマンの右手を切り飛ばす。


 アマンはたまらず空に逃げ出す。
 その間にアマンの手は再生していく。
「やってくれたな! 許さぬぞ! 我の怒りを知るがよい!」
 アマンが両手を天空に向かってかざすと、力みだす。
 だが、俺がそれを許すと思う方がおかしい。


 闇の中に久しぶりに潜った俺は、アマンの陰から黒霧を奴に突き刺す。
 俺には【闇魔法】があるから、空に逃げようともわずかな影があれば追撃できるんだよ。
「グオーッ!」
「ちっ、わずかにずれた」
 黒霧がアマンの急所から少しずれたと舌打ちをする。
 俺はそのまま闇から抜け出しアマンへ流星牙斬衝を放った。
「な、なんだとぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
 【覇動】を纏った黒霧の金黒の残影が残る。
 流星牙斬衝に【覇動】を纏わせることで威力を大幅に向上させた『真・流星牙斬衝』の威力は半端ない。
 しかし空中なので威力は半減してしまった。
 それでも奴の体を爆散させるには十分な威力を誇る。


 胴体がなくなったアマンの頭部が落下していく。
 俺はその頭部を完全に破壊するようにハンナに言う。
「はぁっ!」
 ハンナの千手観音拳が炸裂する。
 その名の通り、手が千本あるかの錯覚を起こすほどの手数を瞬時に繰り出す技だ。
 アマンの頭部は肉片一つ、骨の欠片一つ残さず消滅した。


「やりました! あのクソジジィさんと同じエンシェント種を倒しました!」
 カナンが嬉しそうにぴょんぴょん跳ねる。
「まだです! あいつはまだ生きています!」
「ハンナの言う通りだ。奴には命が二つある。今頃復活しているだろう」
「あっ!? そうでした!」
 と、言ってもどこに奴が復活するのか分からない。
 奴の気配を探るしかない。


 一方、ツクルたちがいる場所、アマンとの戦闘があった場所から二十キロメートルほど離れた場所ではアマンが復活をしていた。


「なんだ、あいつらは!? あんな化け物が何故この空間にいるのだ!?」
(くそっ! 今は逃げるしかない! あ奴らに見つかっては二つ目の命まで危うい! これほどの屈辱を味わったのは初めてだ! 決して、許しはせぬぞ!)


「アマン様。ご無事で!?」
 アマンが復活したところにオールドエヴィル種の部下が駆けつけた。
「不覚をとった。体が本調子になるまで、この場から離れるぞ」
「はっ!」
 部下がアマンを護衛する形でツクルたちから距離を取ろうと移動する。
 既に体は元通りになっているエンシェントエヴィルであるアマンを弱い魔族たちが護衛をしている。
 この構図は魔族の中にも不思議な感覚を芽生えさせた。


 アマン一行が急ぎ足で移動する中、ツクルたちもアマンを追って移動をしていた。
「ご主人様、あっちです」
 ハンナがアマンの臭いを嗅ぎつけたのだ。
 メイド服のハンナが先頭になり、ツクルがカナンを抱えて走る。
 ベーゼに至ってはいつでも呼び出せるので、放置しても構わない。
 ちなみに、ベーゼの眷属軍団と魔族の軍団の戦いはベーゼの勝ちで終結を迎えている。
 倒した魔族がその場でベーゼの眷属として復活するのだから魔族にしたらたまったものではないだろう。
 魂を眷属にして軍団に加えるベーゼは今回のことでより強大な眷属軍団を作り上げたと言っても過言ではない。


 純粋な索敵範囲としてはカナンの【魔力感知】の方が広い。
 しかし一定の条件を満たすとハンナの嗅覚の方がカナンの【魔力感知】以上の索敵範囲になる。
 今回は、その条件を満たしたことで、ハンナの嗅覚が【魔力感知】を上回ったのだ。
 風下にいるとさすがに臭いを頼りにするのは難しいが、アマンは風上にいる。
 風上にいるアマンの臭いがハンナに届き、完全にロックオン状態だ。


 

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