ガベージブレイブ【異世界に召喚され捨てられた勇者の復讐物語】

なんじゃもんじゃ

011_黒霧

 


『貴方は神を信じますか?』
「……へ?」
『だから、神を信じるか?って質問しているわけよ』
「……新手の宗教の勧誘?」
『違うわっ!』
「言っておくけど神の存在は信じるが、宗教には入らないからな」
『そうか、神の存在は信じているのだな?』
「勿論だ!でなければ神を殴ることができないじゃないか!」
『なっ!?神を殴るのか?』
「殴る!気が済むまでボコってやる!」
『神に何かされたのか?』
「神を祀る神殿の神官に拉致されてこんな魔境に廃棄された」
『……それはその神官が悪いのではないのか?』
「そんな神官を放置している神の責任が大きいと思うが?」
 俺は異世界がある以上は神の存在を信じる。
 日本の頃は神など感じたことも信じたこともないが、こんな世界に拉致られ魔境に廃棄されてからは神はいると思っている。
 神がいなければ異世界なんてファンタジーな設定を受け入れるなんて無理だ。
 そして俺がこの魔境に廃棄された原因は神にある。
 神が勇者召喚を許し、神が神官の腐敗を許し、神が人間の傲慢を許した、その結果が今の俺なんだ。
 だから俺は神を殴ってやるんだ!
「神はいる!そして神を殴る!」
『ふっ、っはーっははははは!そうか、神を殴るか!?』
「お前が俺を止めようというのなら俺は戦うぞ?」
『いや、止めはせぬ。寧ろ貴殿に協力しようじゃないか!』
「……やっぱ神は敵なのか?」
『ん?何故だ?』
「だって不気味な剣だし?」
『不気味言うなっ!』
 そんな感じで不気味な剣は俺を所持者として認めてくれた。
 よく分からないが、剣も神に何かしらの遺恨があるようだが、深く聞かないでおいてやろう。武士の情けだ。


『私を持て。そしてイメージするのだ。自らに相応しい剣を』
「お、おう。こうか?」
 剣の柄を両手で持ちそしてイメージする。
 イメージって思った以上に難しいよな。
 特に剣なんてイメージしたことないし、剣なんて持ったこともないし。
 こんな感じで良いのかな?
 そして剣がまた光る。目、目がぁ~っ!
「おい、光るなら行ってくれよっ!」
『そんなに怒るな。禿げるぞ』
「五月蠅いわっ!」
 俺は禿げない!オデコが広いのは禿げじゃないんだ!


『もう目を開けても良いぞ』
 剣を信じて目を開ける。
 俺の手には剣ではなく刀が握られている。
 長さは八十センチメートルほどで緩やかに反り上がり波のような波紋が美しい。
 だが、俺が見惚れるのはその漆黒の刀身だ。
 波紋と刀身のコントラストがとても良い。
 禍々しかった先ほどまでの黒ではなく、何故か神聖なものを感じる黒だ。
「綺麗だな」
『っ!……そ、そうか?』
 何故か照れる剣。まぁ、剣に向かって言ったのだから間違ってはいないけど何か違うような?
『わ、私に銘付けを!』
「銘付け?……そうだな……黒霧ってのはどうだ?」
『黒霧……よい、それでよいぞ!』


 銘:黒霧(第一形態)
 スキル:【不壊】【鋭利】【浄化】【進化】【必殺技(一)】
 能力:体EX、魔力S、腕力G、知力S、俊敏G、器用G、幸運S
 称号:死神剣


 急に俺の視界に黒霧のステータスが浮かび上がる。
 俺自身や魔物以外は【詳細鑑定】で見ても基本的に説明だけだったが、黒霧に銘付けした瞬間にステータスが見えたのだ。
 多分だけど黒霧が俺を所持者として認めたからだと思う。


 黒霧のステータスを見てみる。
 スキルの【進化】【必殺技(一)】の二つが気になる。
 黒霧の横にも『第一形態』って記載があるから【進化】するのだと理解が追いつく。
「なぁ、【必殺技(一)】って何だ?」
『それは私に魔力を込めると超強力な技を発動できるのだ!』
「超強力……どの程度の威力なんだよ?」
『ふふふ、それは使った時のお楽しみだ』
「何だよ、教えてくれてもいいのに!?」
 黒霧は【必殺技(一)】についてそれ以上教えてくれなかった。


 視界に映るステータスに再び意識を移す。
 非常に尖った能力だ。
 『S』があると思ったら『G』まである。『体力』の『EX』はやっぱ『エクストラ』で良いよな?
 しかし俺以外で『EX』を初めて見たよ。
「なぁ、お前の能力だけど『体力EX』ってあるけど『EX』ってどういう意味だ?」
『ん?能力?はて、能力とは一体何のことを言っているのだ?』
「ステータスにあるだろ?能力の表示が」
『何を言っているのだ。ステータスと言うのは氏名とジョブ、そしてスキルが表示されるものだぞ』
「……なぁ、【詳細鑑定】というスキルを知っているか?」
『【鑑定】ならば知っているが?【詳細鑑定】などというスキルには聞き覚えがないぞ』
「その【鑑定】ではステータスプレートと同じ内容の氏名とジョブ、そしてスキルが見えるのだな?」
『当然のことだが?』
 当然かよ。まぁ、この世界の常識なんて知らない俺にとっては非常にありがたい情報だった。
 その後は黒霧に色々聞いた。
 しかし『調理師』が魔物の肉を【調理】するとスキルを覚えたり能力アップするなんてことはなく、何故俺だけが特殊な効果があるのかは分からないままだ。
 それにレベル二百を超えているのが異常だというのも分かった。
『レベル百を超えるには条件がある。自分より百レベル高いものを倒す必要があるのだ。そしてレベル二百を超えるには自分より百五十レベル高いものを倒す必要があるのだ。つまりツクルは自分より百レベル以上高いものを倒した経験があるということだ。人はそれを限界突破と呼称している』
 ……心当たりはある。
 この森で最初に遭遇して死を覚悟したあのムスクレパード化け物だ。
 あの時の俺はレベル一だったし、ムスクレパードは恐らくレベル二百三十程度のはずだ。
 つまり俺は二百以上もレベルが高い魔物を倒していると思う。
「なぁ、二百以上レベルが高い魔物を倒していたらどうなるのだ?」
『ふふふ、そんなことなどあり得ない話だ。だが、一説では限界突破は三段階あると言われているぞ。三段階目の条件がレベル差二百だと聞いたことがあるが、真意のほどは分からぬな』
「三段階目の限界突破を超えると?」
『レベル上限はなくなると言うぞ』
「……」
『ははは。まぁ、そんなことはあり得ぬぞ。過去の魔王や勇者でも限界突破は一段階が限界だったのだ。一段階でもレベル差百だ、これだけでも凄いことだ』
 俺が三段階目の条件をクリアしている可能性があると言ったら信じてくれるだろうか?
 それにしても俺のスキルってどうなっているんだ?
 この世界の常識を俺より遥かに知っている黒霧でさえ分からないスキルの数々。
 そして恐らく誰も知らないであろう能力。
 俺は一体どうしてしまったのだろうか?


「そう言えば、このボルフ大森林の魔物はレベル二百を超えているから二段階目の限界突破の条件をクリアしたのか?」
『魔物は生まれた時からそのレベルなのだ。その分、成長もしないようだが、詳しくは私も知らないぞ』
 生まれた時からあのレベルって異常なことだよな?
 レベルっていうのは経験を積みレベルアップするものだ。
 なのに魔物は生まれた時からレベルが高いなんて……可哀そうに。
 レベル上げの醍醐味を味わうこともなくただ存在するだけなんて面白みのない人生、いや魔物だから魔生だな。
 俺なら絶対にそんな存在にはなりたくない。


 色々聞いて考えて、結論が出ないことの方が多いが足を進める。
 今の俺はコートを羽織っているので原始人ではない。
 コートの中はほぼスッポンポンなのである意味非常にヤバい状況ではあるけど、コートを脱がなければ問題ない。
『しかしこのボルフ大森林に一人で入る者がいるとは思っていなかったぞ。しかもこんな深い場所で生き残るとは、それでこそ私の主として相応しいのだがな』
「別に好きでボルフ大森林に入ったわけじゃない。騙されて転移門を通ったらボルフ大森林だったんだよ」
『騙されてこのボルフ大森林に?そいつは相当ツクルが嫌いだったか、邪魔だったのだろうな』
「なんでだ?」
『転移門を使うには多くの魔力が必要だ。ツクル一人をボルフ大森林に送るだけに使うにはコストが見合わないと思うぞ』
「確かに、こっそりと牢屋にでも放り込んだほうが確実だし」
『確実ならこのボルフ大森林以上の場所はないぞ。生き残った者はツクル以外にいないからな』
「……」


 更に川を下る。
 しかし魔物が付近にいても俺に気付かない。
 俺には気配を隠すスキルはないからオカシイ。
『その隠者のコートの効果だな』
「このコート凄いな」
『隠密効果があるアイテムでは最高レベルのものだからな』
「おぉ~、それほどの物なんだ!」
『アイテムにはランクがあってな、下級、中級、上級、特級、国宝級アーティファクト伝説級レジェンダリー神話級ミソロジーの七段階あるんだ』
「へ~七段階か、この隠者のコートはどのランクなんだ?」
伝説級レジェンダリーになるな』
「ほ~なるほど。じゃぁ、黒霧は?」
『私は神話級ミソロジーだ!(ドヤ顔)』
 エッヘンと聞こえてきそうに自慢顔の感じがした。
 顔などない剣なのだが雰囲気で分かる。


 

「ガベージブレイブ【異世界に召喚され捨てられた勇者の復讐物語】」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く