ガベージブレイブ【異世界に召喚され捨てられた勇者の復讐物語】
009_油断
ヘルベアーとの死闘は俺を変えた。
レベルが上がり『体力』や『腕力』も上がった。そしてスキルの【怪力】【屈強】【剛腕】を得たので生存率がグンと上がった。
生存率が上がっただけではなく、戦闘を有利に運ぶスキルが沢山あることで俺はこのボルフ大森林の中でもかなり上位の強さになっている。
ヘルベアーのような強者の雰囲気はないようで魔物に襲われるのは相変わらずだけど、ヘルベアーとの死闘前にはギリギリの戦いをしていたハイエナウルフの群れや、ボアグノンの群れと遭遇しても余裕をもって戦えるようになった。
そんな俺が川を下ること更に五日、俺はまたあのネコの化け物と対峙した。
種族:ムスクレパード レベル二百三十
スキル:【俊足】【暗視】【気配感知】【野生の勘】【影縫い】【闇魔法】
能力:体力B、魔力A、腕力A、知力C、俊敏S、器用B、幸運E
む、【闇魔法】がある……かっけー!
これはあれか?俺に【闇魔法】を覚えろという天啓なのか?
しかしやっぱり『俊敏』は『S』なんだな、スキルに【俊足】もあるので瞬間的には『EX』になると考えた方がよいだろう。
ふふふ、レベル的にはかなり差があるが、俺とお前の差は【闇魔法】だけだぜ!
と考えていた俺を殴ってやりたい。
あ~体中が痛い。
この世界に来て何度目のボロボロ状態だろうか?
ムスクレパードのスピードについていけなかった俺はいいようにいたぶられ絶賛命の危機状態だ。
手足はあり得ない方向に曲がり血もかなり流してしまったので立つことはできない。
今はムスクレパードが勝ち誇った顔で俺を見下ろし、前足で俺の顔面をグリグリしている。【解体】!
ボトッ、ボトッ、ボトッ、ボトッ、ボフン。
もっとスマートに勝ちたいよ。
そしてお馴染みとなったレベルアップロールが視界を埋める。
何で俺はこんなに毎回死を覚悟してるのだろうか?
やっぱ平和ボケの日本人気質なのかな?
それともラノベでよくある逆転劇を無意識に演出しているのだろうか?
取り敢えず生きているから何とかなっているけど、本当に勘弁してほしいよ。
【素材保管庫】から肉を取り出し頬張る。
四切れも食べると体は完全に回復するこの焼き肉を作る【究極調理】は本当に凄いと感服する。
そしてネコの化け物の素材を回収して肉を【究極調理】で焼く。
最初の肉は既に持っている【俊足】だから【素材保管庫】に仕舞う。
次の肉は【影縫い】、その次は『俊敏』底上げ、次は【気配感知】となかなか【闇魔法】が出てこない。
次の肉も、次も……これで最後だ……きたっ!
大ジャコウネコのホホ肉焼き ⇒ スキル【闇魔法】を覚えちゃって、病気や怪我、それに状態異常も治しちゃうから!
ガッツポーズをして肉を頬張り飲み込む。
『スキル【闇魔法】を覚えました』
更にガッツポーズをして踊り出す。
盆踊り見たいな踊りになってしまったけど、構うものか。
俺の喜びの舞を見ろ!
『称号『変出者』が贈られました』
「へ?」
視界に現れた文章を見て踊りが一時停止した。
右足を上げ、両手を上げているその姿で止まっているのだから傍から見れば石化でもしたのかと思われてしまうだろう。
と、今はそんなことよりも……何だよこの称号って!?
しかも『変質者』?違うな、『変出者』って何だよ?
氏名:ツクル・スメラギ
ジョブ:調理師・レベル二百五
スキル一:【究極調理】【着火】【解体】【詳細鑑定】【素材保管庫】【湧き水】【道具整備】【食材探知】
スキル二:【暗視】【俊足】【投擲】【気配感知】【臭覚強化】【野生の勘】【連携】【集団行動】【囁き】【怪力】【屈強】【剛腕】
スキル三:【木魔法】【風魔法】【影縫い】【闇魔法】
能力:体力B、魔力B、腕力A、知力A、俊敏A、器用EX、幸運EX
称号:変出者
闇魔法 ⇒ 闇を支配するものにのみ与えられる魔法だぞ。そこの君、犯罪に手を染めないでね!
変出者 ⇒ 大事な箇所を隠す気もない君にはこの称号を贈ろう!服を着ると目立たず路肩の石程度の認識だよ。
「……」
orz
俺は一生懸命生きようとしているだけなのに……こんなボロボロの服にしたのは魔物たちであって俺じゃないのに……
「ウオォォォォォォォォッ!」
俺は叫んだ。魂から湧き上がる悲しみとそして怒りの叫びをあげた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
脳裏から消去するするのに数日かかった。
何を消去したのかって?消去したのだから知らないよ!
俺は川を下る。出てきた魔物は【闇魔法】を使い俺の経験値になってもらう。
【闇魔法】マジ便利!
夜ならもうやりたい放題だし、昼間でも影があればかなり使える。
しかも闇の中に潜り移動までできるんだ。
魔物と会いたくないときは闇の中に潜って移動すればそれで魔物をスルーできる。
ゴースト系や気配に敏感な魔物もスルーできるので移動速度は上がるし戦闘でも闇に紛れて暗殺者よろしく近づき【解体】すればもう最強コンボの完成だ。
【解体】は触らないとできないので、感の良い魔物や気配に敏感な魔物は俺が闇から手や足など体の一部を出した瞬間に反応する場合もあったけど、そういう場合は【着火】で代用できる。
【着火】だと闇から体を出さなくても発動できるので魔物は気が付いたら火に包まれているから避けることはできないのだ。
だから最近は命の危機に瀕していない。
常に闇の中に潜っていれば見つかることもないし、睡眠だって闇の中だ。
食事も排泄も全て闇の中。風呂に入りたいな……
そうだ、あれから何頭か初めて見る魔物を倒した。
種族:サンドアルマジロ レベル百五十
スキル:【頑丈】【転がる】【鉄壁】【土魔法】
能力:体力B、魔力C、腕力C、知力D、俊敏B、器用D、幸運E
種族名の通りアルマジロの魔物だ。
大きさが象くらいあるアルマジロで丸まって【転がる】とその圧力に恐怖を覚えるけどね。
下敷きになったら紙のようにペラペラになるのかな?と考えてしまう。
アルマジロは兎に角硬く【着火】で火をつけても全然平気な感じだったので【湧き水】の大量の水でダメージを与えてみたらかなり効果的で嫌がっていた。
【湧き水】一発では倒れなかったけど三発で倒せた。
魔物によっては【着火】でさえあまりダメージを与えられない場合もある。
相性を考えるきっかけとなった戦いだった。
肉は腹部の僅かしか入手できなかったが、【頑丈】【鉄壁】【土魔法】と三つもスキルを手に入れることができたので嬉しかった。
種族:ソウルイーター レベル百七十
スキル:【魂食い】【幽体】【死霊召喚術】
能力:体力C、魔力A、腕力D、知力B、俊敏B、器用D、幸運E
種族名の通り魂を食うし、実際に【魂食い】というスキルを持っている魔物だ。
しかもスキルの【幽体】がある為かはたまた体が透けているゴーストタイプの魔物の特徴なのか、物理的な攻撃は効果がなかった。
更に周囲には必ずスケルトン系とかゾンビ系の魔物を召喚しているので邪魔くさい。
でも火には弱いようで【着火】で焼いたら結構すぐに倒せてしまった。
ゴースト系なので【解体】しても食べられる部位はないだろうと思っていたら、何と目玉が食用として得られた。
その目玉を【究極調理】で調理したけど、そのグロテスクな見た目から食べるのを躊躇し口に入れるまでに二時間もかかってしまった。
しかし一度口に入れると意外や意外、コクのある甘味に清々しい酸味がアクセントのデザートのような味でとても美味しかったし【死霊召喚術】も手に入った。
食べず嫌いはだめだよね。
種族:ウッドドール レベル百六十
スキル:【光合成】【格闘術】【直感】【木魔法】
能力:体力B、魔力C、腕力B、知力B、俊敏B、器用C、幸運E
こいつは……【着火】で瞬殺だった。木だしね。
外見は百七十五センチメートルの俺より少し大きいだけの人型の人形で、何故か頭の上にリンゴやオレンジのような果物をつけている。
【解体】しても肉はなく木材が何本かと頭の上につけていた果物が入手できる。
そしてその果物を【究極調理】で調理すると見た目も味もナイスなお菓子になった。
肉しか食べていなかったので暫くこいつ目当てで狩りをしたほどだ。
ソウルイーターの目も美味しいけど、見た目があれなので積極的に狩ることはしなかったので、ウッドドールにはその分も狩らせてもらった。
勿論、【格闘術】と【直感】も手に入れた。
種族:ソードリーパー レベル二百
スキル:【剣術】【魂食い】【霊体】【死霊召喚術】【腐食魔法】【転移術】
能力:体力A、魔力A、腕力A、知力B、俊敏B、器用B、幸運E
こいつは骸骨の頭に黒いマント、そして手には剣を持っている死神のようなやつだ。
死神なら鎌を持っているイメージなんだけど何故か剣を持っている。
そしてその剣も剣身がどす黒く血管のような赤い線が走っているのでとても不気味な感じがする。
残念ながらソードリーパーは滅茶苦茶逃げ足が速くて倒せていない。
【直感】や【気配感知】のようなスキルを持っていないのに闇の中にいる俺を敏感に感じ取り俺が近づくと離れた場所に転移するんだ。
いたちごっこになったので諦めて放置した。
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