ガベージブレイブ【異世界に召喚され捨てられた勇者の復讐物語】

なんじゃもんじゃ

007_理解

 


 ボアグノンとの激闘に勝利した俺はエルリン川に沿って下流に進む。
 流石に徹夜明け後の戦闘は肉体的にも精神的にも堪えるがここにいるとまた猿どもが襲ってくるかもしれないので移動をする。
 日が高くなりそして傾き始めた頃、野営によさそうな大木の胴体に開いた穴を見つける。
 その穴は俺一人なら完全に中に入れそうなほど大きい。
 だが、その穴には先客がいた。


 種族:ダークバット レベル百六十
 スキル:【超音波】【風魔法】【無音飛行】
 能力:体力C、魔力B、腕力C、知力B、俊敏A、器用B、幸運F


 穴の天井に逆さになってぶら下がっている魔物。
 今は昼だからか、蝙蝠の魔物は俺に反応もせずに眠っている。
 これはチャンスか?
 今は誰よりもどん欲にレベル上げをしなければならない。俺はそのダークバットとの戦闘を決意した。
「【湧き水】」
 ドバっと穴の中から大量の水が湧き出しダークバットを押し流す。
 やっと見つけた寝床を火で焼くわけにはいかないので【着火】は使わない。
 寝ていたところに大量の水で押し流されたダークバットが立ち直る前に【木魔法】で拘束して近づき【着火】でトドメをさす。
 【湧き水】【木魔法】【着火】の三連コンボだ。
『レベルが上がりました』
 と四回文章が現れる。これで俺のレベルは百四十一となった。


 穴の中が湿ってしまったが、河原に大量にある石を穴の中に敷きつめその上に木の枝などをおいて【着火】で火をつける。
 火力はそれほど強くないようにイメージしているので焚火よりも弱い感じだ。
 これで暫くすれば穴の中は乾燥するだろう。
 穴を乾燥させている間に先ほどのダークバットを解体して肉を【調理】で焼いてみる。


 黒蝙蝠の胸肉焼き ⇒ スキル【風魔法】を覚えちゃうよ?


「よしっ!」
 思わず声が出てしまう。
 相変わらず一口大に切り分けられているので一切れ頬張る。
 先ほどの猿よりはましだけどパサパサしておりあまり美味しくない。
 どうやら魔物や肉の部位によって味に差が出てしまうようだ。
 当然と言えば当然か。なんでもかんでも美味ければ希少な肉とか必要ないからな。


 穴の中も乾いたので火を消し石が冷えるのを待って取り除く。
 そして穴や木の周りを【湧き水】で水を流す。
 俺の匂いを嗅ぎつけて魔物が近づいてこないように匂いを洗い流すためだ。
 そして穴の入り口を【木魔法】で塞ぐ。
 塞ぐと言っても葦を大量に出し何重にも穴を覆う。
 これで適度に空気を取り込めて外からの視線を遮断できるだろう。
「何だか疲れた……もしかしてこれが魔力欠乏なのか?」
 【着火】や【湧き水】では味わったことのない疲労感が俺を襲う。


 小鳥のさえずりが聞こえる。朝か……
「っ!?」
 寝てしまったようだ。日差しが夕方のものではなく朝のものなので昼過ぎから一晩寝てしまったようだ。
「疲れが溜まっていたとは言え、どんだけ寝たんだよ!?」
 穴を葦で塞いでおいて正解だったと思うよ。


 穴の中で【素材保管庫】から猿の肉を取り出し【調理】で焼く。
 美味しくないがそれでも食べるものがないよりはよほどましだ。
『スキル【投擲】を覚えました』
「え?」
 一切れ頬張り不味いので咀嚼もそこそこに飲み込んだ直ぐ後に文章が視界に現れた。
 手の上にある焼かれた肉を【詳細鑑定】で確認してみる。


 森猿の肩肉焼き ⇒ スキル【投擲】を覚えちゃうよ?


 これって……
 もしかして魔物の肉でも部位によって得られる効果が違うってことか?
 これまでの経験で魔物が所持していたスキルを得られるのは何となくだけど分かっていたけど、一種類のスキルしか覚えることができないと思っていた。
 しかしそれが俺の思い込みで部位毎、個体毎で違うスキルを覚えられる可能性が見えたってことだよな?
 もしそうなら……ダークバットの肉で【無音飛行】がゲットできるのか?
 ただの【飛行】だって嬉しいけど、【無音飛行】なんてとても心がくすぐられる響きだ。


 ここで考える。
 このボルフ大森林を抜けて人間の住む土地に行くには力が必要だ。
 そしてその力はレベルであり、そしてスキルなのだ。
 俺は魔物の肉を【調理】することでスキルを得ることができる。
 それはつまりレベル上げをして尚且つスキルも手に入るということなのでやらない選択肢はない。
 じゃぁ、何を狩るのか?
 生存能力を上げるためのスキル。あるかどうかは分からないけど感知系のスキルがほしい。
 それまでは自分の耳と目だけじゃダメだ、六感を全て駆使して生き残る!


 当面の行動指針は決まった。
 ここで俺は【素材保管庫】からあのネコの化け物の肉の塊を取り出す。
 まだ【調理】していない肉の塊だ。その数は四。
 一つ目を【調理】する。


 大ジャコウネコの肩肉焼き ⇒ スキル【影縫い】を覚えちゃうよ?


 やっぱり個体が同じでも肉の部位によっては違うスキルを覚えることができるんだ!
 これが分かっただけでも嬉しい。
 他の肉も【調理】してみる。


 大ジャコウネコのスネ肉焼き ⇒ スキル【俊足】を覚えちゃうよ?
 大ジャコウネコのランプ肉焼き ⇒ スキル【気配感知】を覚えちゃうよ?
 大ジャコウネコのイチボ肉焼き ⇒ 『俊敏』をちょっとだけ底上げしちゃうよ?


 ん?イチボ肉焼きが『俊敏』の底上げになっている。
 まさか能力まで底上げできるとは思ってもいなかったよ。
 夢が広がるぜ!
 しかもほしかった感知系のスキルである【気配感知】があるぞ!


 全部の肉を食べてみる。
『スキル【影縫い】を覚えました』
『スキル【俊足】を覚えました』
『スキル【気配感知】を覚えました』
『能力の『俊敏』のランクが上がりました』
『能力の『俊敏』のランクが上がりました』


 あれ?『俊敏』が二つ出たぞ?まさか……


 氏名:ツクル・スメラギ
 ジョブ:調理師・レベル百四十一
 スキル一:【調理】【着火】【解体】【詳細鑑定】【素材保管庫】【湧き水】【回復食】【道具整備】【食材探知】
 スキル二:【暗視】【投擲】【俊足】【気配感知】
 スキル三:【木魔法】【風魔法】【影縫い】
 能力:体力D、魔力D、腕力D、知力B、俊敏B、器用EX、幸運EX


 暗視 ⇒ 暗くても見えちゃうよ。でも覗きはだめだからね♡
 俊足 ⇒ 一時的に『俊敏』ランクを上げてあ・げ・る♡
 投擲 ⇒ 投げることができる物なら何でも投げちゃうよ。投げキッスもOK!
 気配感知 ⇒ 周囲の気配を敏感に感じちゃうから♡
 木魔法 ⇒ 植物を操る魔法が使えちゃうよ。三十歳DTは脱出かな♪
 風魔法 ⇒ 風を操る魔法が使えちゃうよ。スカートめくりしたらダメだよ♪
 影縫い ⇒ 影で縛っちゃえ♪


 説明は無視だ、無視!
 それよりも『俊敏』が二ランクアップしている。
 説明には「ちょっとだけ」とか書いてあったけどどういうこと?
 嬉しい誤算だから良いけど、この説明いい加減すぎないか?
 それにしても相変わらずフザケタ説明文だな、【影縫い】の説明なんか何か違う気がする。いや、あっているのだろうけど……
 もし手にステータスプレートを持っていたらまた投げつけてしまいそうだ。
 さてと……説明文は気にしてはダメだというのがよく分かった。
 でもステータスのスキルスロットがまた増えているのは何故だろうか?
 考えられるのは『スキル一』が職業由来のスキル、『スキル二』が『魔力』を消費しないタイプのスキル、『スキル三』が魔力を消費するタイプのスキル、かな?
 『スキル二』の【暗視】はほぼ一晩中つかってハイエナウルフと我慢大会していたけど『魔力』が欠乏するようなことはなかった。
 だけど『スキル三』の【木魔法】は葦を大量に生やして入り口を塞いだときにかなりだるくなり恐らく『魔力』が欠乏したと思える症状となった。
 今のところはこの程度の予想しかできないけど大きくかけ離れていない気がする。


 さて、考えるのはお終いだ。
 日がある内に先に進むべきだからこれからは行動の時間だ。
 俺は葦を引きちぎるように外に出る。
 葦は俺の意志で丈夫にも脆くもできる。魔法に限らずスキルって便利だよね。
 そしてスキルも充実してきたし、やることも分かってきた。
 俺は必ず生き残ってやる!


 

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