異世界転移者のマイペース攻略記

なんじゃもんじゃ

014_風雲急を告げる5

 


 怒号と悲鳴が入り混じる中、冒険者が連携しジェネラルウルフと激戦を繰り広げる。冒険者の中でも特に練度が高いと思われる冒険者が5人とゴウリキーさん、そして脳筋3人娘。
 冒険者の5人は同じパーティーなのか、声を掛け合うわけでもないのに緻密な連携ができている。おそらくこの町でも上位のパーティーなのだろう。そんな5人の中に脳筋3人娘が入れるわけもなく、ゴウリキーさんによって逸る気持ちを抑え込まれている。彼女たちは5人の冒険者が不測の事態に陥った場合のバックアップ要員として待機している感じだ。


 だから俺はジェネラルウルフに手出しはしない。中途半端に手を出して邪魔をしたくない。
 俺が狙うはブラッドウルフ、冒険者が苦戦しているやつにレーザーサイトを合わせ引き金を引く。
 ダンッという音とともに肩に衝撃が来るが大した衝撃ではなかった。俺の放った銃弾はブラッドウルフの腹部に命中し小さな穴を開ける。動きが少し鈍った気がするが微々たるもののようだ。
 ブラッドウルフは何処から攻撃されたのか分からず警戒する為にタンタンと後方に2飛びする。
 そして、冒険者がそれを追って距離を詰めるが、剣を躱され逆に爪で反撃を受けてしまった。何やってるんだよ!
 今度は連射するダダダッと数発が瞬時に発射される。更にブラッドウルフの腹部から赤黒い血が噴き出す。これを続ければブラッドウルフでも倒せるかも知れないが、そうは問屋が卸さなかった。
 ブラッドウルフは今の連射で俺の事を認識したようで、鋭い眼光を俺に向けている。
 その瞬間、そいつは何の助走もなく飛び上がると、どう考えても俺を捉える軌道をとっている。


「主!」


 反応できなかった俺を突き飛ばしたリーシアがブラッドウルフを盾で弾く。弾かれたブラッドウルフも然るもので空中で体勢を整えて城壁の上に着地する。そんなアクロバティックな動きができるのかよ!
 睨み合うリーシアとブラッドウルフ。俺は腰が抜けて動けません!


「グローセさん!」


 腰が抜けて動けない俺を補助して立たせてくれたのはセーラだった。


「主、こいつは俺が押さえる!」
「援護します!」


 リーシアがブラッドウルフと対峙し、俺を助け起こしたセーラがそれを援護する構図ができた。残念ながら俺がMP7で援護したくてもリーシアとブラッドウルフの動きについていけずに下手をすればリーシアに当ててしまうので見守ることにする。
 ブラッドウルフ、遠くで見ていた時も大きいとは思っていたが、こうして近くでみるとその大きさに驚愕する。体高が2m以上はあるだろう、リーシアよりも向こうに居るのにリーシアよりも大きく見えるのでその大きさが嫌というほど伝わってくる。


 ブラッドウルフが大きな前足を振り上げその鋭い爪を振り下ろす。リーシアは左手の大黒盾でブラッドウルフの爪をいなすと右手に持っていたやや大きめの黒斧を鋭く振るがブラッドウルフは後方に飛び退き黒斧を躱す。
 そこにセーラの放った矢が飛んでいくがそれさえも体を半分ほどずらし躱す。
 一進一退の攻防が暫く続いたが、ここでブラッドウルフの動きが悪くなる。俺がMP7の射撃で与えた傷から大量の血を流していたので行動限界が近いようだ。
 かなり呼吸が激しくなっているブラッドウルフを追い込むリーシア、そして今まで躱されていた矢がブラッドウルフの首筋に刺さる。
 悲鳴のような声を上げて後ずさるブラッドウルフを見ると魔物ながら哀れになってしまう。


『マスター、マスターはテイマーなのですからブラッドウルフを【テイム】されては如何でしょうか?』
『え? あのブラッドウルフを?【テイム】できるの?』
『一般的に魔物は瀕死に近い状態まで弱りますと【テイム】ができる状態になります。【テイム】に失敗する事もありますがマスターであれば成功の可能性が高いでしょう』


 俺なら成功確率が高いというのは、魅力が高いからかな? それとも幸運が100だからかな?
 どちらにしろ、せっかくの【テイム】のチャンスなので、やらない選択はない!


「リーシア、悪いがそのブラッドウルフを【テイム】するぞ!」
「主の好きにすれば良い!」
「セーラも良いかな?」
「どうぞ!」
「有難う!ブラッドウルフよ、俺の従魔となれっ! 【テイム】」


 俺の体から何かが抜けるような感覚を覚える。恐らくMPを消費しているのだろう。結構キツイ。
 俺から抜けだしているMPがブラッドウルフと俺を繋ぐ感じがしたと思ったらブラッドウルフが光り出した。


「クゥゥン」


 光りが収まると今まで血だらけで首には矢が刺さっていたブラッドウルフが全く傷を負っていない状態で俺たちの前で佇んでいる。


「成功したのか?」


 俺がそう呟くとブラッドウルフが頭を垂れ、前足を折って跪く。


『成功です。そのブラッドウルフに名前を付けてやって下さい』
『成功すると傷とか治るの?』
『はい、マスターのMPを消費して瀕死状態から回復します。それがマスターと魔物を繋ぐ絆となるのです』


 ほう、俺のMPを、ね。
 それはそうと名前を付けないといけないのね?何にしようかな。
 赤黒い体毛からブラッド(血)と言われている狼系の魔物なのだからフェンリルはアウトだな、そうだな……逆に太陽のような狼ってどうかな……太陽サンルーヴで良いか?英語とフランス語だけど良いよな?


「今からお前はサンルーヴだ」
「ワオン!」


 ブラッドウルフのサンルーヴは俺の所までテクテクと歩いてきて俺の頬に顔を擦り付ける。従魔でもデカいし今まで戦っていた魔物なので気押される。


『マスター、従魔の印を着けてやらないと野良のブラッドウルフだと思われ攻撃される可能性があります』
『へ、そうなの?その従魔の印って何?』
『従魔の印は簡単に言えば首輪だと思って下さい。【通信販売】から購入できます』


 犬や猫に首輪を着けて飼い犬や飼い猫だと主張しているような意味合いかな。


『サンルーヴのステータスを確認して下さい』
『おう、了解』




 氏名:サンルーヴ
 情報:ブラッドウルフ ランク3 女 15歳 従魔
 HP:6000(B)
 MP:600(E)
 筋力:800(B)
 耐久:600(C)
 魔力:100(E)
 俊敏:900(B)
 器用:100(D)
 魅力:100(D)
 幸運:5
 アクティブスキル:【牙術(D)】【爪術(D)】【立体起動(D)】
 パッシブスキル:【脚力強化(D)】
 魔法スキル:
 ユニークスキル:【絆】




『ステータスが凄いけど、やっぱ職業はないんだね』
『魔物には職業はありません。その代わりにランクがあり、成長しますと種族進化しランクアップします』
『種族進化・・・それってサンルーヴもジェネラルになれるって事?』
『はい、サンルーヴが種族進化する時にそう望めばジェネラルになれます。とはいえ、種族進化は滅多には発生しませんのであまり期待しない方が宜しいかと思います』
『そうなんだ。じゃぁ、期待せずに待つよ』


「ブラッドウルフを従魔にするなんて凄いですね」
「これもリーシアやセーラのお陰だよ」
「主に仕えるのだから気を引き締めろよ」


 ブラッドウルフのサンルーヴに先輩風を吹かすリーシアが嬉しそうだ。結構可愛いところがあるんだな。
 取り敢えず従魔の印を【通信販売】で購入し首に着けてやる。周りがウルフ系の魔物ばかりなのでできるだけ目立つ黄色の印を着けてやった、これで俺の従魔だと分かるだろう。


「よし、これでOKと。あ、そういえば町の中に入った魔物はどうなったの?」
「数が少なかったので領主軍がすでに対応し殲滅しました」
「そうか、それは良かった。じゃぁ、俺たちは城壁の外の魔物討伐を援護しよう」
「俺はまた見ているだけか?」
「リーシアは俺の護衛を頼むよ。さっきみたいに攻撃される可能性もあるからね」
「うむ、分かった!」
「サンルーヴも俺の護衛を頼むよ」
「ワオン!」


 セーラは早速複合弓を引き絞り矢を放つ。その矢はブラックウルフの首を貫き、ブラックウルフはキャインと悲鳴を上げるが、倒れるまではいかなかった。そこに俺のMP7が火を噴く。連射したのでブラックウルフは数ヶ所から血を噴き出し倒れた。
 俺たちはこんな感じで協力して1体、1体、確実に討伐をしていく。


 さて、問題のジェネラルだが、ゴウリキーさんや脳筋3娘、そして冒険者の1パーティーがジェネラルを押していた。冒険者パーティーがジェネラルの気を引き付け、ゴウリキーさんに統率された脳筋3娘が攻撃を与える。予備戦力である脳筋3人娘が投入されたってことは最終局面だと思うのでもう直ぐ決着がつくだろう。
 暫くするとジェネラルが力尽き倒れる。他の魔物もほぼ殲滅が終わっている。夕日の差し込む中、やっと戦闘が終わった。


 

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