異世界転移者のマイペース攻略記

なんじゃもんじゃ

002_チュートリアル2

 


 いきなり体育館に拉致られた俺、そこに現れたのは金髪の美人で、その金髪さんは俺たちに別の世界へ行けと言う。
 俺以外にも多くの人がその体育館に集められており、その数は俺を含めて千人。
 そして地球に帰ることができるのはたったの十人で一パーセントの確立だと言う。


 これから行く異世界が俺にとって住みやすい世界なら俺は地球に帰る必要はない。
 親兄弟は居るし会社にも勤めているが未練があるかと聞かれれば、全然ない。
 寧ろ馬鹿な上司に寄生されストレスの多い世界だったから異世界に多少なりとも期待をしている。


 スキルの決定の前に周囲を見回す。
 俺の周りにいた多くの人の姿は今は無く俺が如何に自分の編集に集中していたかが分かる。全然周りが見えてなかった。
 残っているのは俺を含めて十人にも満たない。皆一生懸命目の前にあるだろう画面を見つめて一喜一憂している。
 別にこの人たちを待つ必要もないのでスキルを決定させ俺も異世界に行こうと思う。ポチ。


 『最後に氏名を決めて下さい。尚、氏名を変更するには五ポイント必要です。変更しますか? YES/NO』
 ふざけやがって!?
 気合入れて決定したのに名前決めが最後なんて力が抜けるわ!
 丁度、五ポイント残っているので氏名を変えるとしますかね。
 そして今度こそポチ。


『編集お疲れ様でした。これより転移を行います。転移後はチュートリアルが始まります』


 へ~、チュートリアルまで用意しているのか、結構親切仕様なんだ。
 と思っていると俺の周囲がキラキラ光り出す。
 周囲の人は先ほどから少なくなっており残りは俺を入れても4人だけになっていた。
 俺の周囲を光りが完全に包み込み眩しくて目を瞑ると浮遊感に襲われ数舜後には足に自分の体重の感覚が戻って来る。


 目を恐る恐る開ける。
 視界に入って来たのはこれまた定番の草原。
 ぐるりと三百六十度回転してみるが緑が目に優しい見渡す限りの草原だ。
 ここに来て確信した。この世界とSWGは何の関係もないだろう。
 だってSWGには太陽が二つあるけど、この世界は普通に太陽は一つだ。
 月もSWGでは三つあったが、それも違うのだろうと思う。


「てか、ここどこよ?」
「ここはアルファ草原です」
「そうですか……っ!」


 先ほど三百六十度周囲を見たが俺一人だったはずなのに何で答えが返ってくるんだ?
 俺は恐る恐る声の方を向く。
 ……そこには綺麗なお姉さんが立っていた……何で?


「これからチュートリアルを開始します。私はナビゲーターです、宜しくお願いします。」


 この人がチュートリアルのナビゲーターかよ……
 綺麗なお姉さんにナビゲーターをしてもらえるのに何でこんなに躊躇っているのか、それは……あの金髪さんが目の前に立っていて自分がナビゲーターだと言っているからです。
 この人ってこの世界の管理者じゃないの?


「グローセ・ヘンドラーさんで宜しいでしょうか?」
「え、あ、はい……グローセ・ヘンドラーです」


 俺は日本人の名前を捨て新しい名前を自分でつけた。
 それがグローセ・ヘンドラーだ。
 俺の予想通りの世界ならこの世界では日本名は珍しいだろうから敢えてヨーロッパ風の名前に変えた。


「では先ずはグローセ・ヘンドラーさんのステータスを確認しましょう。『ステータスオープン』と声に出してください」
「あ、はい。『ステータスオープン』」


 俺の目の前に先ほどまで嫌というほど見つめていた画面が現れ、俺のステータスを表示してくれる。


「開いたようですね。その画面を他の人に見せることも出来ますので、その状態で『開示』と声に出して私に見せて下さい」
「はい……『開示』」
「はい、大丈夫ですね。念のためにステータスについて説明しますね」
「……はい」
「どうかしましたか?」


 俺の反応が薄いのが気になったのか、金髪さんは画面を突き抜け俺を覗き込んでくる。
 突き抜けて大丈夫なのかよ!それよりも顔が近いです。
 性格は兎も角、超が付く金髪美人さんなので息が当たるほどに接近されると……柔らかそうな唇だ。


「顔が赤いようですが大丈夫ですか?」
「いえ、あの、顔が近いので……照れてしまって」
「あ、失礼しました!これで宜しいでしょうか?」


 顔を離し普通に目の前に佇む金髪さん。


「それと先ほどから心ここに在らずと言った感じですが、大丈夫ですか?」
「それは……ナビゲーターさんがこの世界の管理者さんだからです……」
「あ、この姿ですか?気にしないで下さい。管理界の者が観察界の方とお会いする時は皆この姿になるのです」
「へ、あぁ、そうなんですか?」
「はい、姿は似ていても私は管理者様ではありません。正確には管理者様の部下ですね」


 なるほど、そういうものなのか。
 しかしこの姿で話されると落ち着かないな。


「落ち着きませんか?」
「……はい」
「では姿を変えましょうか?」
「え?出来るのですか?」
「はい、一度だけですが姿を変えることが可能です。グローセ・ヘンドラーさんが心に思う方をトレースしますので心の中で強く思い浮かべて下さい」
「は、はい!」


 返事はしたものの、俺が思い浮かべた人の姿になるのか……どんな人を思い浮かべれば良いのだろうか?
 アイドルのあの娘、いや、それはあまりに安直。
 なら外国の女優とか……これも安直か。……よし、決めた!
 俺は心の中で強く想像をする。具現化しろ!
 キラキラと金髪さんの周囲が光に包まれ光が収まると俺の想像した姿の女性が現れた。


「スゲーな、本当に変わったよ」
「どうですか?」
「うん、いいっ!」
「有難う御座います!」


 満面の笑みを浮かべたナビゲーターさんは髪の毛が銀髪に変わり、肌の色も雪の様に白く更に耳が尖がった超美人に変わっている。
 耳が尖がった超美人だ、これ大事なんで二回言いました!
 つまりエルフだ。しかも胸なんかメロンが入っているんじゃないかと言わんばかりの膨らみがあるので目のやり場に困ってしまう。


「では、改めましてステータスの説明をしますね」
「はい、お願いします」
「その画面に表示されています項目は氏名、職業、情報、HP、MP、筋力、耐久、魔力、俊敏、器用、魅力、幸運、アクティブスキル、パッシブスキル、魔法スキル、ユニークスキル、犯罪歴です。氏名はこの世界での貴方の固有名称となります。変更されているようなので今後はグローセ・ヘンドラーさんとして生きて行くことになります」


 ここまでは説明を聞くまでもなく分かる。


「情報は種族、性別、年齢を表示しています。HPはヒットポイントで『0』になると死にますし、MPはマナポイントでこちらは『0』になっても死にませんが慣れていないと気分が悪くなったりします」


 想像していた通りの内容だ。


「筋力は腕力や物理的な力のことで、耐久は持久力や耐久力、魔力は魔法の威力に影響を及ぼし、俊敏は行動速度や反応速度に直結し、器用はそのまま器用さを表し、魅力はグローセ・ヘンドラーさんの好感度を、幸運はラッキー発生率、アクティブスキルは任意発動型のスキルで、パッシブスキルは常時発動型のスキル、魔法スキルは魔法ですね、ユニークスキルは滅多に存在しない珍しい上に強力なスキルです。ここまでは宜しいでしょうか?」


 一気にまくし立てたナビゲーターさん。
 しかし幸運がラッキー発生率ってことは俺のラッキー発生率は百パーセントなのか?
 取り敢えずラッキー以外の今聞いたことは説明がなくても分かっていることなので問題ない。


「幸運値が百だとどうなります?」
「幸運値は百が最高です。つまりそういうことです」


 そういうことですか。これ以上聞いてもこれ以上の回答はないだろうな。
 なんだかあの管理者さんとナビゲーターさん被ってしまう。
 やっぱり似た者同士なのかな?


「他にはありませんか?」
「はい」
「では、次は空欄となっています職業と犯罪歴についてですが、職業はこの世界の町や村などにある教会へ赴けば職業に就くことができます。転職も教会でできますので、この後に行く町では教会に必ず行きましょうね」
「あ、はい」


 俺の返事を聞き、話を続けるナビゲーターさん。


「犯罪歴はグローセ・ヘンドラーさんが犯罪を犯すと【盗賊】とか【殺人】などが表示されますので町や村に入る時に犯罪歴があると捕まったり追い出されたりしますから気を付けましょうね」


 うんうん、と自分で納得するナビゲーターさん。仕草が可愛い。


「次はスキルの説明です。【鑑定(S)】は鑑定系スキルの上位である『Sランク』のスキルですね。ほぼ全てのステータスを鑑定できますし、隠蔽系や偽装系のスキルを高確率で見破ります」


 おお、【鑑定】にポイントを多く振った甲斐があった。
 異世界だから【鑑定】は必須だよね!


「【偽装(B)】は偽装系の中位の『Bランク』なので鑑定系の上位ランクや看破系のスキルで見破られる可能性はありますが『Bランク』なので滅多なことでは見破られることはないと思います」


 この【偽装】は念のために取得しておいた。
 俺が取得したスキルを偽装するべきだと思ったからだ。


「【魔道具作成(E)】は魔道具の作成用のスキルですが最低ランクの『Eランク』なので最低限の魔道具しか作れません」


 俺のこの世界で商人をしようと思っている。
 だから商品になる物を自作できないかと生産系スキルを取得しておいたのだ。


「【時空魔法(E)】も低ランクの『Eランク』ですが、この時空魔法自体が高位魔法なので非常に有用な魔法だと言えます。現在使えるのは『ストレージ』と言う収納用の魔法と補助魔法である『スロウ』と『ヘイスト』ですね」


 この【時空魔法】はポイントの消費が多かった。
 しかし目的の収納系魔法が使えるのが分かって嬉しい。
 基本的に『ストレージ』以外は使うつもりはない。『ストレージ』の為のスキルだ。


「【通信販売(E)】はユニークスキルの中でも特に高位のスキルです。このスキルではグローセ・ヘンドラーさんの出身地である地球のネット通販に繋がっております。つまりお金さえ用意できれば地球の商品を購入できるスキルですね。それとこの世界の商品や魔物も売ることができますので要らない物があれば売るのも良いでしょう」


 スキルのことは取得時に説明文がなかったのである意味博打的な所があった。
 今の説明を聞くと俺の選択は間違っていなかったと思う。
 しかも魔物まで売れるとは、パネェな。後は最初の金をどうするか、だな。


 氏名:グローセ・ヘンドラー
 職業:
 情報:ヒューマン 男 20歳
 HP:150(C)
 MP:150(EX)
 筋力:30(C)
 耐久:25(C)
 魔力:20(C)
 俊敏:25(C)
 器用:100(S)
 魅力:50(A)
 幸運:100
 アクティブスキル:【鑑定(S)】【偽装(B)】【魔道具作成(E)】
 パッシブスキル:
 魔法スキル:【時空魔法(E)】
 ユニークスキル:【通信販売(E)】
 犯罪歴:




 スキル取得時の消費ポイントは【鑑定(S)】が二百二十、【偽装(B)】は七十、【魔道具作成(E)】は十、【時空魔法(E)】は三百、【通信販売(E)】は『ストレージ』六百十だ。
 これで残りポイントが五になったのを思い出す。


 他に取得可能なスキルがないか探したが、消費ポイントが五のスキルは無かったので五ポイント残しで決定した。
 そしたら氏名の画面が出てきて残っていた五ポイントを消費して氏名を変更できた。
 こうして俺は全てのポイントを使い切ったのだ。


「以後は声を出さなくても念じるだけで画面が現れますし、開示も同様です。因みに開示は開示対象者を決めてしまえば、その方にしか見えません」


 

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