チートあるけどまったり暮らしたい

なんじゃもんじゃ

141 召喚されし者3

 


 剣の練習の後、魔法の使い方を神官ぽい人から教えてもらったのでクラスメートたちは何とか使えるようになっていた。
 しかしだ……僕の所有している雷光という属性の説明はなかった。
 普通に雷とか光はあったけど、雷光は誰もしらないようだ。ヤバすぎる!


 そんな中、無属性だけは何とか使い方が分かった。
 無属性はどうやら身体強化系の属性で無属性だけはどんな人でも必ず持っているそうだ。
 そして一般的には上級や特級の適正があれば素晴らしいことで、下級や中級が大多数を占めるので勇者であるクラスメートたちは特級以上の王級、帝級、覇王級なので高いレベルで身体強化ができるらしい。
 尚、僕のステータスにある精霊級は覇王級の上で過去の勇者でも精霊級のステータスはいなかったそうだ。
 ……おいっ!僕は普通に精霊級があるんだけど!?


 何とか気持ちを落ち着け、無属性の身体強化を練習する。
 今の僕が頼れるのは精霊級の無属性だけなので必死で練習した。
 使い方の分からない雷光属性の魔法や固有のぜつや神器召喚のことは考えない。


 あとは隠しステータスのことだけど、隠しステータスは流石に誰も知らない感じだった。
 知っていればそれも確認するだろうから、多分そうなんだろうと思う。


 さて、無属性の練習も少し落ちついたので神様が言っていたクラスメートたちを隷属下に置く主を探したいと思う。
 周囲を見ると騎士と神官ぽい人、あとは……仮面をつけた人もいる。
 怪しさから言えば仮面の人だけど、まさかこの人かな?
 片足をやや引きずりながら歩く姿は大きな怪我をして顔にも傷を負ったから仮面をしていると思わせるけど、見た目は一番怪しい。


 もしかしたらここにはいない可能性もあるけどクラスメートたちが反乱を起こしたら止めることができるのは主だけのはずだから近くにはいるはずだ。
 教皇って偉そうな爺さんの可能性もあるけどあの爺さんは殆ど顔を出さないから違う可能性の方が高いだろう。


 無属性の身体強化の練習と主探しをしていたらエルランたちが敵が攻めてきたと騒ぎ出した。
 とうとう来たかとクラスメートたちに緊張が走る。
 中には顔面蒼白になっているクラスメートもいる。無理もない、平和ボケとか言われていた日本で戦争なんかとは疎遠の生活をおくっていたのだ。
 僕だって逃げ出したいと思う。


「短い時間で詰め込んだが、今から勇者殿たちには前線に出てもらう!」
「ぼ、僕たちに出来るでしょうか!?」
「我らより遥かに高い能力を持っている貴殿らであれば必ず邪悪なものより我が聖オリオン教国を守ってくれると信じている」


 言うのは簡単だよな。でもエルランの目は本気っぽい。
 しかも僕たちを前線に出すことについて一応は申し訳なく思っているような感じもする。
 それに比べ教皇や周囲の神官ぽい奴らの方はヤバい。
 勇者だから戦うのは当たり前だという感じで、しかも上から目線でものを言ってくる。
 僕たちがこいつらを守る義理なんてないのに然も当然だと言わんばかりの物言いだ。


「双葉君……生き残ったら……言いたいことがあるの」


 え、それってフラグだよ!


「佐々木さん……」


 何て返せばよいか分からない。
 死亡フラグなんて言えないし、言いたいことがあるなら今言ってとも言えない。
 何とか佐々木さんだけでも守ろう、そう強く思う。


 僕は神殿のような巨大な建物から出て城壁のような巨大な塀の上に立つ。僕の周りにクラスメートたちとエルランたちもいる。
 結局、誰が主なのかもわからずじまいで、このままではクラスメートたちが戦いに突入して相手を殺してしまったら……マズい。


「はぁ、どうしよう……」


 思わず声が漏れる。
 逃げるのはできるかも知れないけど、佐々木さんを放置はできない。
 どうすれば良いのか。


 考えても良い考えは浮かんでこない。見通しがよいので誰もいない街を眺めながら考えていると視線の先の空に何かの陰が……それはどんどん大きくなってくる。


「……ど、ドラゴン?」


 クラスメートの誰かが呟いたのが聞こえた。
 陰がある程度大きくなると影の主がしっかりと視認できるようになり僕たちは一歩、二歩と後ずさる。
 何あれ!?いきなりラスボス級の魔物じゃん!
 ドラゴンは僕たちに攻撃せず遠巻きに監視するように旋回をする。
 その綺麗な緑色の姿は正に伝説的な神秘さを僕に見せてくれた。
 しかもドラゴンの上に人がいた……とても綺麗な女性が僕たちを見下ろしていた……何かを抱えていたけど、まさか爆弾じゃないよね?
 爆弾を空から……空爆されたら僕たちのように飛べない人は大変なことになる……


「ゆ、勇者殿!敵に魔法を!」
「は、はい!」


 宇津城がエルランに促されると禍々しい剣を抜き構え詠唱を開始する。
 あの剣は本当に勇者用の装備なのかと思うほど怪しい剣を構える宇津城は勇者というより魔王の方がシックリくる気がする。
 魔王ウツシロ、うん、ロゴも問題ない。


 宇津城の詠唱が佳境に入ったようで僕でも感じることができるほど魔力が膨れ上がる。


「行け、シャインスラッシュッ!」


 剣をひと振りするとその先から三日月状の光が放たれ物凄い速度でドラゴンに向かって飛んでいく。
 しかしドラゴンもかなり高速で飛んでいるように見えるのだけど、宇津城の攻撃はあたるのだろうか?と思ってしまう僕は間違っていないと思う。
 その光は飛んでいるドラゴンを追尾するように少しづつ角度を変えながら飛んでいく。僕の考えは危惧に終わったようだ。
 ドンッという大きな音がしドラゴンに宇津城のシャインスラッシュが命中した。
 結構大きな音がしたのでドラゴンは大丈夫だろうか?
 一応、ドラゴンの方が僕に加護を与えてくれた魔技神という神様の陣営のはずだからここで僕の味方にダメージがあるのは嬉しくない。何するんだよ、宇津城は!?


 しかし僕の不安はここでも危惧に終わった。
 宇津城のシャインスラッシュを受けたはずのドラゴンは「え、何か当たった?」的な感じで悠然と空を飛んでいるのだ。
 やっぱりドラゴンは魔物の頂点に君臨する最強種なのだろうか?


「まったく効いてないぞっ!?」
「うそ、宇津城君の攻撃が効かないなんてっ!?」


 クラスメートたちが騒ぐ。
 この中では最高の攻撃力を持っているはずの宇津城の攻撃を受けても平然としているドラゴンが頭の上で悠然と旋回しているのだから騒ぐのも無理はない。


「狂信者に告ぐ、ただちに降伏しなさい。さもなければ攻撃を開始します。10分だけ待つ。少しはまともな思考が残っていることを願う」


 急に聞こえてきた声に僕たちは城壁の下に視線を移す。
 そこには僕たちと同じか、少し年下のような少女がいた。
 一見すると僕たちと同じ黒髪にも見えるけど、やや青みかかっているようだ。


「貴様は何者だっ!?」
「私は神聖バンダム王国のカルラ・クド・アダチ。貴方たちに最後の勧告を行う者よ」
「小娘の戯言に付き合う気はないっ!」


 えっ!?
 エルラン、アンタこんな大事なことを1人で決めて良いのか?
 あのアダチって少女は最後の勧告って言っているよ?


 

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