チートあるけどまったり暮らしたい

なんじゃもんじゃ

140 召喚されし者2

 


 何だよ、この剣は!?
 聖オリオン教国が僕たちに用意したのは金属鎧と盾と剣。
 しかし鎧はまだ良い、盾もまぁゆるそう、けど、この剣はないわ~。
 何この剣は?頭おかしいんじゃないの?って感じの剣だ。
 鞘が骨のような模様で、柄の先端には正に髑髏があしらわれているし、剣を鞘から抜くと剣自体は黒に近い赤、何人もの血を吸ってどす黒くなった感じ、もう呪われているんじゃないかと思うような剣だよ。
 これで神がどうこう言われても邪神にしか思えない剣だよ。
 しかも僕が剣を抜こうとすると何故か静電気のような痛みが手に走り抜けないのだ。
 これって隷属されていないから抜けないのかな?だったらマズいよね、抜けないのが見られると隷属下にないと警戒されたり排除されたりしそうだ。


 クラスメートたちは呪われていそうな剣にかなり引き気味だけどエルランが鎧を身に着け帯剣するようにと指示してきたので男子と女子が別々の部屋に分かれて着替える。
 しかしこの剣を帯剣するのは結構勇気がいるぞ。
 帯剣したら呪われたとか洒落にならないよ!


「おい役立たず!」


 山田が僕を役立たずと言って近づいてくる。ウザイから近寄らないでほしい。


「役立たずが鎧なんか着こんでも役に立たないだろ!ギャーハハハハハ」


 こいつは完全にダメな奴ぽい。何だよその「ギャーハハハハハ」って、どんだけ遣られ役的なんだよ。


「何だお前、ビビってるのか?」
「……」
「五月蠅いぞ!弱い者しか相手に出来ない貴様もビビってるんじゃないのか!?」


 止めてくれたのは久城久くじょうひさし、上から読んでも久城久、下から読んでも久城久の久城だ。
 久城は宇津城と違って軽い正義感を振りかざすような奴じゃない。
 そんな久城が珍しく大声を出して山田を威嚇する。体形が筋肉質の久城は空手の有段者でもあるので怒らすと厄介だと山田はそれ以上俺に付きまとうことはなかった。
 多分、久城は僕を庇ったのではなく、山田の変な笑い声が耳障りだったのだと思う。
 それでも庇ってもらったのだからお礼を言っておこう。


「有難う、久城」
「あんな奴は無視しておけ」
「あ、うん、そうするよ」


 その後、着替えた俺たちは大広間に移り5段ほど高いところに置いてある豪華な椅子に座る教皇の前でひざまずいている。
 教皇っていうほどだから一番偉い人だと思うけど、この人が神様の言っていた主なのだろうか?
 教皇は長々と話をしたと思ったら奥に引っ込んでいった。
 残ったのはエルランと騎士のような兵士が30人ほど、それと見るからに怪しい仮面の男性、あとは神官ぽい人が10人ほどだ。
 しかしこの鎧は動きずらい。こんなのを着てよく戦えるなと思う。


「早速だが、敵の侵攻がいつ始まるか分からないので剣の扱いを簡単に教える。過去の勇者の例でいけばそれだけで貴殿らは剣を使えるそうだ」


 本当かよ!と突っ込みたくなるけど、僕は目立たず主が誰なのか見極めないといけないのだ。


「分かりました。教えて下さい!」


 代表として宇津城が受け答えをしている。
 そして僕たちはエルランたち騎士から剣の手ほどきを受けることになったが、なんか彼らの動きを見ていると自然と剣の扱い方が分かってしまうような気がする。
 僕はというと剣を抜くことができないので剣が重すぎて扱えないなどと理由を付けて木剣を用意してもらった。
 その際にクラスメートたちが僕を馬鹿にしてきたが、僕からしてみれば彼らこそ自分の立場を理解するべきだろうと言いたい。
 今、僕が彼らに奴隷の話をするのはできないので彼らには知る由もないのだけど、僕をからかえばからかうほど残念な奴らに見えてしまう。


「双葉君、剣の扱いに慣れたようね」
「何とかなったよ、佐々木さん」


 木剣を振っていると佐々木さんが話しかけてきた。
 綺麗な黒髪が少し乱れているけど佐々木さんはやっぱり美少女だな。


「この剣を持つと何だか私にもできる気がするんだ。双葉君はどう?」
「ぼ、僕には重たくて……」
「あ、ゴメン……でも練習すれば双葉君も剣を持てるわ!」
「有難う……」


 佐々木さんと話しているとクラスメートから殺気のこもった視線が僕に集中する。主に男子生徒からだけど。
 ため息がでるよ。佐々木さんから話かけてくるのだから僕にどうしろっていうのだろう。
 佐々木さんと少し話してまた剣の練習をする。


 そうだ、ステータスカードを確認しておかないと。
 頭の中でステータスカードと念じると手の中にステータスカードが現れた。隠蔽を解除してステータスを確認してみる。




【氏名】ソウタ・フタバ
【種族】ヒューマン
【性別】男
【生年月日】表示不可・17歳
【身分・職業】真の勇者
【体力成長】覇王級
【魔力成長】精霊級
【属性適性】
 無:精霊級
 雷光:覇王級
 固有:ぜつ:覇王級
 固有:神器召喚
【称号】真の勇者
【賞罰】無し
 ===隠しステータス===
【体力】10,000/10,000
【魔力】10,000/10,000
【筋力】2,000
【耐久】2,000
【俊敏】2,000
【器用】2,000
【知力】2,000
【精神】2,000
【魅力】2,000
【幸運】2,000
【状態】良好
【ギフト】魔技神の加護




 ……多分、これ不味い気がする。
 何この【身分・職業】に記載されている『真の勇者』って!?
 勘弁してほしい!てか、あの神様何考えているんだよ!?
 それに【体力成長】の覇王級、【魔力成長】精霊級だって多分異常なことだよね?
 確か宇津城が覇王級だったと思うけど、そのステータスを見たエルランが大騒ぎしていた。精霊級はそれより上そうだからマズいよね?
 それに【属性適性】だって覇王級と精霊級だから大騒ぎどころの騒ぎではない気がする!
 固有のぜつや神器召喚もやばそうだし、【称号】にも『真の勇者』ってあるからこれもマズい!
 能力値も高いだろうと思われるわけで……この【ギフト】の魔技神の加護はこの神様が先ほどの金髪の神様なのかな?多分そうなんだよね?


 隠蔽は必須だってことがよく分かったよ!
 ところで、魔法はどうやれば使えるのかな?それに固有の絶と神器召喚もどうすれば使えるのか分からない……困ったぞ!


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 通信を繋げての会議の後、兵が撤退するのを待ち、S級装備者は高い城壁を越えてクリセント・アジバスダ内に侵入する。


 情報が錯綜していて前線の被害はまだ明確になっていない。
 だから最前線で戦っていたフリード中将の生死は不明だ。恐らくあの光に巻き込まれて……あまり期待はできない。


 聖オリオン教国としてはこれまでの負け戦と夢作戦でその権威は失墜し、国民の不信をかっているだけにここで負けるわけにはいかないと思ったのだろうが、やることがクソすぎる。


 しかし……ここまでの暴挙をしでかすとは思ってもいなかった。
 俺の見通しが甘かったことで発生した被害だ。
 俺は失われた命にどうやって詫びれば良いのだろうか?兵の家族にどう詫びれば良いのだろうか?
 魔技神だの何だのといってもこの体たらく、俺はどうやって彼らの無念に報いれば良いのだろうか?
 はぁ、どうしてこんな思いをしなければならないのか、考えてみれば田舎の小さな町でまったりと暮らしたいと思っていたのが今では公爵だし、聖オリオン教国を倒すための方面軍司令官となっている。
 どこで間違ったのだろうか?


「クリストフ、どうかしましたか?」
「ん、あぁ、何でもないよ。ちょっと考えごとをしていただけだから」
「そうですか……」


 いかん、今は目の前の敵に集中しよう。これ以上は誰も死なせない為に。




 

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