チートあるけどまったり暮らしたい
093 冒険者ギルド
イーストウッドの北にはルーン迷宮があり日々多くの探索者が出入りしている。
このルーン迷宮はセジャーカ鉱山の廃坑に出来かけていたダンジョンを移設したものだ。
つまりダンジョンマスターは俺であり、今はブルーエレメンタルドラゴンのブルエレが俺の代理としてダンジョンを管理している。
今では23層からなるダンジョンに成長し、魔物も下はランクEから上はランクEXのブルエレまで幅広く配置されている。
しかもこのルーン迷宮の魔物は希少な魔物が多く配置されているので、その魔物たちから得られる素材は高額で取引されている。
つまり世界でも有数の優良ダンジョンである。
「――――ですから、我が冒険者ギルドとしましてはイーストウッドに支部を設置しイーストウッドの発展に寄与したく考えております」
冒険者ギルド神聖バンダム王国王都本部より派遣されてきたセスターと言う男はイーストウッドに冒険者ギルドの支部を設置したいと熱弁を振るう。
この神経質そうで眼鏡が特徴のセスターは王都本部で編成部長をしている冒険者ギルドの重鎮らしいが、俺にはそんな事は関係ない。
「その件に関してはお受けする気はないと先日ご返答したと思いますが?」
「我が冒険者ギルドは神聖バンダム王国だけではなく、中央大陸全域にネットワークを持つ組織です。決してブリュトイース伯爵に損はさせません」
「損とか得とか、そう言う問題ではなく既に我が領内には探索者ギルドがあり、冒険者ギルドと同様の業務を行っているので冒険者ギルドは不要だと言っているのですよ」
「恐れながら、探索者ギルドはブリュトイース地域内のみで活動をされております。我が冒険者ギルドは全国にネットワークを持ち冒険者に至っては神聖バンダム王国のみならず他国でも活動ができますので、優秀な冒険者をイーストウッドに派遣し活動をお約束いたします」
「態々おこし頂いて申し訳ないが、冒険者ギルドについては我が領内での活動は認めません」
俺が何故ここまで頑なに冒険者ギルドの支部設置を拒否するのか、それは俺がこの地を拝領した当初に戻る。
イーストウッドを建設するにあたり、俺は主要ギルドだけではなく多くの小規模ギルドにも声をかけた。
鍛冶師ギルドや商業ギルド、それに冒険者ギルドには当然支部や出張所などの設置をと依頼したのだ。
そして多くのギルドが了承をしてくれた中、冒険者ギルドだけは出張所さえ設置しないと回答があった。
魔物が跋扈するこの世界の街の治安は貴族の私兵だけで担う事はできないのは有名な話で、街の外を闊歩する魔物は冒険者による駆除に任せる部分が大きいのだ。
故に俺は冒険者ギルドに数度足を運び頼み込んだのだが、冒険者ギルドが了承する事はなかった。
だったらと考えたのが探索者ギルドと言う新しい組織である。
領地を拝領し伯爵になった俺の元に仕官してきたベン・アズカスは冒険者から冒険者ギルドの職員となり俺に仕官してきた。
俺はベンの経験を生かして探索者ギルドの初代ギルドマスターに抜擢した。
お陰で俺は資金提供や探索者ギルドの管理システムの構築は行ったが、それ以外の労力は必要はなかった。
ただ、探索者ギルド立ち上げにかかった費用は全て俺が負担しており、その為に他に回す予定だった予算を削らなければならなかった。
探索者を集めるのにも特典や優遇処置の為に膨大な予算をつぎ込んで、ここ最近になってやっと軌道に乗り始めたんだ、今更冒険者ギルドなんていらねぇよっ!
そんな理由から俺の領地では冒険者ではなく探索者でなければ活動を認めていないし、俺の領地から得られる利益を冒険者ギルドに還元する気は爪の先ほどもない!
この件については神聖バンダム王国の国王である陛下と冒険者ギルドの王都本部のグランドマスターも了承し書面として残しており、今更これを覆す主張をする冒険者ギルドの節操のなさに辟易する。
「ブリュトイース伯、そのように頑なな態度は頂けませんよ。我々と関係の深いギルドも多いのですよ」
ほう、俺を脅そうと言うのか。
俺に喧嘩を売るならその喧嘩を買ってやろうじゃないか。
まったりしたいが、権力を笠にきる奴に容赦はしないし、したくないんだよ。
てか、俺のまったりライフを悪意から邪魔する奴はコテンパンのバッキバキのグッチャグチャにしてやる。
あ、捻り潰してやるって事ね。
俺はフィーリアから書類を受け取り目を通す。
「そうですか、それでは探索者ギルドを立ち上げた時の費用である12億8千万Sと探索者を招致する為に使った3億3千万Sを冒険者ギルドで負担頂こう」
「っ!」
「費用の負担以外に探索者ギルドの職員は全員雇用して貰い現在の待遇は最低限補償をして頂きたい。それと私がついやした時間も当然費用に上乗せはさせて貰えると思っています」
「費用が多過ぎると思いますが・・・」
セスターは目を白黒させている。
もっと焦ってくれ。
「組織を一から作ったのですよ。これだけで済めば安いものでしょう?」
「・・・」
結局セスターは俺の要望を飲む事はなかった。
まぁ、漁夫の利を得ようと小癪な考えをしているのだろうから、これだけの費用を負担する事はないだろうし、俺も冒険者ギルドが飲めない条件を出しているつもりだ。
勿論、冒険者ギルドがその気になればこの程度の費用は苦も無く用意するだろう。
しかし実を言うと探索者ギルドの職員は冒険者ギルドの職員よりも高給取りなので、その待遇をそのまま冒険者ギルドが受け入れる事はないだろう。
セスターは暫く俺を睨みつけフィーリアが開けた扉から出て行った。
睨む程度では何もしないが、冒険者ギルドの妨害工作があった場合は覚悟しておいてね、セスターさん。
「フィーリア、今後はアイツを俺の前に通すなと指示しておいてくれ。それと皆に冒険者ギルドの妨害があったらすぐに報告するように通達をしておいてくれ」
「畏まりました」
聖オリオン教国が動いたと父上から連絡があった。
聖オリオン教国は聖クロス騎士団を中心に兵員凡そ12万人を動員しており、船舶の数も大小合わせて1500隻にのぼると言う。
この動員兵数は事前にある程度の規模を掴めていたので今更驚く必要もない。
対して神聖バンダム王国の南部貴族連合軍は1100隻、兵員は10万人を動員する予定だ。
この南部貴族連合軍を纏めるのは南部総督であり、ブリュトゼルス辺境伯である父上だ。
俺はその代理として前線で指揮をとる事になる。
尤も、俺は軍を指揮した経験などないので、フェデラーやブリュトゼルス辺境伯軍を任されているオラーショ・フォン・クリオンス将軍、それに有力貴族が実際には指揮をとる事になるだろう。
俺は全体の舵取りをするって感じだ。
ブリュトゼルス辺境伯軍を纏めるオラーショは子爵に叙されており、ブリュトゼルス辺境伯家の分家の筆頭として軍を預かっている。
「あれの準備はどうか?」
「いつでも出陣できます」
父上からの連絡でブリュトイース伯爵家として軍議を行っており、俺の問いにフェデラーが簡潔に答える。
「物資の状況はどうか?」
「10万の軍を1ヶ月養うだけの食糧をマジックバッグ10個に分けてご用意しております」
熊の獣人でウードの部下であるデリマンは資材管理の担当者となっているので俺の問いに答える。
資材の管理を任せてまだ間もないのだが、この短い時間でよくやってくれている。
イーストウッド城の地下には大規模な倉庫があり、そこには大量の兵糧が保管されている。
俺は兵糧を神聖バンダム王国の各地から集めていたが、それはブリュト島で成長促進させた穀物を混ぜる為で、できるだけブリュト島の開拓の事は内密にしておきたいのだ。
もしブリュト島の開拓の事を陛下が知ったら面倒だから当面は内緒にしたい。
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