チートあるけどまったり暮らしたい
ペロン side1
父さんは神聖バンダム王国の王都で『レストラン・クック』と言うレストランを経営している。
父さんの店はお客さんが絶えない店として王都でも有名な店です。
僕の自慢の父さんです。
父さんが頑張っているおかげで僕はお金に苦労する事なく王立魔法学校と言う有名校にも進学できました。
父さんの期待に応える為にも僕は王立魔法学校を卒業し、魔術師として貴族家に仕官できたらと思っているけど、人生は僕の思い通りに行かない事が多いだろうから、休みには父さんの手伝いをして料理の腕を磨いています。
王立魔法学校の入学式の日、僕は運命の出会いと言ってよいほどの出会いをしました。
僕は偶々隣に座った、一見自由民階級の裕福な家の子供でとても綺麗な顔立ちをした―――顔立ちは女性でも通るほど綺麗だけど、制服が男子生徒用だった―――生徒と出合った。
僕は彼も僕と同じ自由民階級だと思い声を掛けてしまった。
「僕はペロン・クックと言うんだ。宜しくね」
「私はクリストフ・フォン・ブリュトゼルスです。宜しく」
帰って来た自己紹介で彼が貴族だって分かった。
「え、貴族様?」
僕達のような平民や自由民階級と貴族階級には大きな隔たりがある。
貴族の不興をかってしまったら最後、色々な難癖をつけられて家を潰されたりする事だってあるのは僕くらいの年齢だったら知っている事だ。
だから、声を掛けて僕は「しまった」と思った。
「一応ですが、貴族ですね」
「話しかけて、すみません」
難癖を付けられる前に謝る。
今の僕にできる事はこれだけだ。
「構わないよ。私は貴族だからって威張り散らす者を軽蔑しているからね。気兼ねなく接してよね。そうだ、君の事をペロンと呼んでも良いかな?私の事はクリスって呼んで欲しいな」
流石にクリスなんて呼べない・・・
「ペロンで構いません。それと流石に貴族様をそのように呼ぶのは・・・」
「じゃ、クリストフで良いよ。宜しくねペロン」
とてもフランクに語りかけてくれる。
僕はそんな彼にあり得ない事を言ってしまった。
「はい、宜しくお願いします。クリストフ君」
しまった!
貴族様にクリストフ君なんて馴れ馴れしくしてしまった。
僕は内心あせりつつクリストフ様の顔を見る。
でも彼は笑顔で僕に接してくれている。
その後、カルラとも出会った。
カルラも貴族だったけどクリストフ君同様に僕に普通に接してくれた。
カルラは僕とは違ってとても快活で明るい性格の綺麗な娘だ。
そんなカルラに誘われクリストフ君とカルラと僕でパーティーを組み、またカルラが立ち上げた『MIツクール』と言うクランにも入りました。
そのクランではクララとプリッツと言う貴族の双子の兄妹と出会ったのですが、この2人も貴族らしくないと言っては失礼ですが、貴族だって事を鼻にかけない兄妹でした。
気が付いたら貴族に囲まれていましたが、4人とも僕に普通に接してくれたので僕は良い友達を得たと思います。
クリストフ君は王族に次ぐ力を持っていると言われる南部の大貴族であるブリュトゼルス辺境伯家の次男でしたが、魔法や魔術の才能も実力も既に宮廷魔術師以上だと言うのがその行動で分かってきました。
規格外もいいところで、それを本人はまったく意識していない感じです。
何故だろう、クリストフ君だけは呼び捨てにできないんだ。
クララとプリッツは双子だけど全く正反対の性格でクララは明るく歯に衣着せぬ物言いが特徴で、プリッツは思慮深く考えてから発言をするタイプです。
クララはいつもプリッツを引っ張って行くタイプですが、実はプリッツが上手くコントロールしているように見えます。
カルラの性格はクララと似ている気がしましたが、クララと違いリーダーシップをとって皆をグイグイ引っ張っていく感じで、いつも明るく誰にも弱みを見せない女の子です。
皆に気を配るんだけど、直接ではなく隠れて手助けをする優しい娘です。
そしていつしか僕はカルラに引かれ、カルラも僕を受け入れてくれました。
クリストフ君は夏季休暇で訪れたセジャーカ鉱山で八岐大蛇と言う水神を討伐したそうで、その所為でクリストフ君自身が神になってしまったとうちあけてくれました。
本人はアッケラカンと言っていたけど、それは凄い事であり僕はクリストフ君の規格外を改めて認識しました。
神になってしまったクリストフ君は僕に加護を与えて下さいました。
加護は僕だけではなく、カルラ、クララ、プリッツにも与えて下さいました。
クリストフ君は魔技神と言う神で、マジックアイテム作成に特化した神様だと言う事です。
その魔技神の加護を得たおかげでしょうか、こんなマジックアイテムを作りたいと思うだけで作り方やそれに付随する魔法陣などが頭に浮かんでくるのです。
王立魔法学校の授業ではクリストフ君から勉強を教えてもらっていたから多くの上級単位も取れており、上級ダンジョンを踏破する事もできました。
そしてある日、担任のブルーム先生から飛び級しての卒業を言い渡されました。
卒業を言い渡されたのは僕だけではありません。
クリストフ君は当然ですし、カルラ、クララ、プリッツも同様に卒業です。
しかし困った事があります。
まさか、たった1年で王立魔法学校を卒業するとは思っていなかったので就職活動をしていないのです。
本来は3回生の夏から始まり11月には就職が決まっているようなのですが、僕達が卒業を言い渡されたのは12月・・・既に良い就職先は残っていません。
「どうする?いきなり言われても困っちゃうよ、ボクは何にも準備していないんだから」
カルラもそうだけど、僕もクララもプリッツも同じ状況だよ。
「カルラ、それは皆同じだよ。あ、クリストフ君はブリュト商会があるし、領地ももらったんだよね?」
「ペロン、領地じゃなくて土地の所有を許してもらっただけだよ」
「同じようなものよ。そうだ、クリストフが私達を雇ってくれれば良いんじゃない?」
クララの一言がボク達の進路を決める事になりました。
「僕もそう思っていたけど、それだとクリストフ君に迷惑がかかるし」
プリッツはクララの考えを一応は否定したけど、期待の目をクリストフ君に向けています。
結局、クリストフ君は僕達4人を雇ってくれました。
そして知ってしまったんだ・・・
これまでクリストフ君の規格外を認識していたんだけど、ブリュト島で僕達は目にしてしまったのです・・・
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