チートあるけどまったり暮らしたい

なんじゃもんじゃ

076 告白

 


 やっべ~
 困ったぞ~
 勢いつけて出てきたのは良いけど、何を言おうか?
 言う事を決めていなかったよ。


「学校に手を回しましたね?」


 聞き方が分からないからストレートに聞いてみました。


「何の事だ?」


「先日、担任のブルーム先生より来年の2月で卒業だと言われました」


「ほう、それはめでたいな。たった1年で王立魔法学校を卒業など聞いた事がないぞ」


「とぼけるのですか?」


「何もとぼけるような事はないが?」


 流石は政治の舞台で鍛え上げた、海千山千の父上だ。
 俺の追及などそよ風ていども感じていないな。


「そうですか・・・では、卒業後の話なのですが」


「うむ、卒業後はどうするのだ?」


「はい、私は冒険者になろうと思います」


「ほう、ぼうけ・・・冒険者?・・・ぶ、ブリュト商会はどうするのだ?ブリュト島はどうするのだ?」


 焦ってるな。
 思う存分、焦って下さいね。


「ブリュト商会は既に私がいなくても回っておりますし、ブリュト島は放置しても何の支障もありません」


「それでは陛下より賜った土地を放置すると言うのか?」


 放置も何も俺の土地を俺がどう扱おうと俺の勝手ですよね。


「ブリュト島は領地として拝領したわけではありません。あくまでも軍事物資の代金として頂いたものであり、ブリュト島に関しては開発しなければならない理由もありませんので一生放置でも構いません」


「それは困るっ!あっ」


 馬脚を露わしたぞ。


「聞かせて下さいね」


「・・・分かった・・・ただ、セシリアには内密に頼む」


 ははは、父上も母上が怖いようですね。


「それは無理です。母上には父上が何かしていると、もう言ってしまいました。後から母上の追及があると思って下さい」


「ぐっ!」


 この世の終わりのような顔をする父上を見るのも偶には良いだろう。
 大体、息子を何かの陰謀に巻き込んでいる父上は痛い目を見るべきだ。
 さぁ、吐け!
 とっとと、吐け!
 我に告白するんだ!


「シルクスパイダーだ。・・・シルクスパイダーの糸は流通量が少ないのは知っているな?」


 俺は首肯する。


「陛下とイグナーツの話をした時に偶々クリストフが作った産着の話をしてしまったのだ。私も話した後にしまったと思ったのだが、後の祭りでな・・・」


「私はシルクスパイダーの糸をどこで手に入れたか話しておりませんよ?」


「それは私も陛下に申し上げた。だが私も陛下もシルクスパイダーの糸の出所はブリュト島だと思っていいる。いや、確信している」


 タイミングが悪かったな。
 ブリュト島を俺の所有としてから直ぐにだもんな・・・
 俺にも責任の一端はあるか。


「ここまで言ったのだ。ぶっちゃけるが、シルクスパイダーの糸を供給して欲しい。クリストフなら知っていると思うが、シルクスパイダーの糸から作られた生地で仕立てられたウエディングドレスは王家の婚姻には欠かせぬものだ。最近は流通量が少なく陛下も頭を悩ませておられたのだ」


「そのような話であれば私も拒否する事はありません。最初からそう言って頂ければよかったものを。しかしそのような話があると言う事は王家の何方かの婚儀が近々あるのでしょうか?」


 素朴な質問ですよ。


「年頃の王女殿下が数人いるからな、準備は早めにしておく必要はあるだろう。特にクリストフと同級のドロシー殿下は最も早く婚儀を挙げる事になるだろう」


 何だと?
 ドロシー様が婚儀だと・・・
 まさか!


「ち、ち、ち、ち、父上!」


「何だ・・・」


「ど、ど、ど、ど、ど、ドロシー様の・・・こ、こ、こ、婚儀・・・ですか?」


「大丈夫か、水でも飲んで落ち着け」


「そ、それよりも、ドロシー様・・・」


「何を言っているんだ。―――――とドロシー殿下の婚儀ではないか」


「へ?」


 このオッサン何言ってるんだ?
 何だって?
 あかん・・・
 ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ
 過呼吸だ・・・
 意識が遠のく・・・












「殿下、私に少しお時間を下さい」


 俺は真面目にドロシー様と話さねばならない。
 でなければ、俺は後悔するだろう。


「・・・」


 俺がドロシー様に近付くと、取り巻きの女生徒達が俺とドロシー様の間に割って入る。


「ドロシー様に何の御用でしょうか?」


 邪魔臭い。
 今の俺は他人を気遣ってやれるほど余裕があるわけではないので、女生徒達には退場願う。


『っ!』


 膨大な魔力の奔流が女生徒達を襲う。
 当然の事だが、これだけの魔力を浴びせられ平然としていられる者などそうそういないので、女生徒達はその場にへたり込む。


「・・・クリストフ殿、・・・その魔力を・・・止めて・・頂けますか?」


 ドロシー様は直接俺の魔力を浴びていないので、何とか声を出す事ができていたが、女生徒達は真っ青な顔をして虚ろな目で空を見つめ唇をガタガタ震わせている。


「殿下、お話を・・・」


「・・・アチラの・・・カフェに」


 ドロシー様を脅迫したようで申し訳ないが、今の俺を邪魔する奴は魔力だけで殺せる気がする。


「えっ!」


 俺は頷き、ドロシー様の手を取り校内のカフェに向う。
 今の魔力放出で数人の生徒達が俺に視線を投げてきているが、そんな事は些細な事だ。


 椅子に座り、ウェイトレスに紅茶を頼みドロシー様に視線を移す。
 授業中なのが幸いして、店内には生徒の姿はない。


 沈黙が流れる。
 何をどう言えば良いのか分からない。
 あれこれ考えている内にお茶がテーブルに置かれウェイトレスは下がっていく。


「・・・話とは何でしょうか?」


「・・・」


 勇気をだせよ、ここで何も言わなければ後悔するぞ!


「お話がなければ私はこれで・・・」


 え~い、ママよ!


「私はっ!」


 緊張で声が上ずってしまった。


「私は、殿下にお詫びをしなければなりません」


「・・・詫び?・・・」


 ドロシー様が訝しげに俺を見つめる。


「私は殿下から逃げておりました・・・」


 ドロシー様が目を大きく開け、「何故?」と口を動かしたように見えたが、それは声にはなっていない。


「申し訳ありません。もう逃げる事はしません・・・だから・・・だから・・・」


 ドロシー様は不意に席を立ちこの場を去ろうとする。
 だが、俺も立ち上がりドロシー様の手を取り、ドロシー様を繋ぎ止める。


「離して・・下さい」


 俺はドロシー様の手を握ったまま、ドロシー様の前でひざまづく。
 そしてドロシー様の目をしっかり見て口を開く。


「私はドロシー殿下を愛おしく思っております」


 顔から火が出るかと思った。
 どうやって伝えようか色々考えたが、結局はストレートに言う・・・てか、日本人だった頃から愛の告白なんてした事がないので、気の利いた事が言えないんだよ!


「どうか私の心をお受け取り下さい・・・」




 

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