ジュエリークラフター 【魔物を宝石に変えて魔王も倒せるけど勇者じゃないおっさん】
007D_ジュエモン
森の中を神力眼の機能の1つである透視で見てみたら、木々の間から警戒をするように俺たちを窺っている魔物の姿があった。
ピント合わせはまだ甘いけど、魔物がいるかどうかくらいはピントを合わせなくてもある程度は分かる。透視を使いこなせばリスクをかなり減らせるから、早めにこの能力を使いこなさないとな。
「なぁ、草原の魔物は俺から逃げるのに、ダンジョンの魔物はなんで逃げないんだ?」
「ダンジョンの魔物はダンジョンが生み出すから、生れ出た場所からあまり遠くにはいけないの。もっとも、魔物の量が多くなるとダンジョンの外に魔物を放出したりするけどね」
「縛りつけておいて、要らなくなったら放出するなんて、ダンジョンも勝手だな」
俺は経験したことはないが、日本の会社のようだと思った。使うだけ使って要らなくなったらリストラするのは最近の流行らしいからな。
警戒しながら森に入った。先頭はロウガ、その後ろに俺、さらに後ろにテンポウに守られたユキがいる。ダメ神は俺の横辺りを歩いている。ダメ神はなんだかんだ言って俺のことが好きなんじゃないのか? ないわー。
雨脚は激しさを増し、まるでゲリラ豪雨のようだ。でも森の木々が傘の代わりをするので、木の下は意外と雨は当たらない。
最初に遭遇した魔物は人型のオーガだった。俺たちが近づくとオーガは怯えた表情で後ずさった。
覆面をしたロウガの目が笑っているように見える。その視線は獲物を見つけた狼のようだ。
この森はダンジョンなので、魔物は逃げないけど怯えがないわけではないようだ。
オーガは全部で12体で行動をしていた。12体がお互いに見合い、お前行けよ、いやいやお前行けよ、といった感じで俺たちへの攻撃を譲り合っている。
「なぁ、魔物ってこんな感じなのか?」
「そんなわけないでしょ。あんたたちが異常だからよ!」
体長250cmほどの巨体で丸太のような棍棒を持っているのに、170㎝の俺や小柄なロウガに怯え、徐々に俺たちから距離をとる構図がシュールだ。
青白い肌の色が余計に怯えているように見えてくる。
「この森の魔物はオーガばかりなのか?」
「この森でオーガは底辺の魔物よ。奥に行けば行くほど強い魔物が出てくるわ」
このダメ神は意外と知識がある。残念ながら俺にはこの世界の知識がないので、不本意ながらよく話しかけてしまう。使える物は使う。リサイクルできる物はリサイクルする。俺は勿体ない精神の持ち主なのだ。
理由がなければ逃げる魔物を追いかけて倒すようなことはしないが、逃げないのであれば話は別だ。遠巻きに敵意を向けられるのは気持ちのよいものではない。
俺が勝手にこの森に入ったのだから勝手な理論なのは分かっている。でも、俺に敵意を向けているのだから、排除させてもらう。
「ロウガ、警戒を頼む」
「おっけ~♪」
ロウガが軽いノリで返事をしてくる。ちょっと不安だ。
「神力眼、発動! 麻痺だ!」
俺の視界内にいるオーガがびくんと体を跳ねさせたと思ったら、その場に倒れ込んだ。オーガはぴくぴくしているけど、とても自力で動けそうには見えない。
「ロウガ、オーガたちの確認をしてくれ」
「はいはーい」
瞬時にオーガたちの前に移動したロウガはつんつんとオーガたちをつっついて回った。
「我が君~、全部麻痺してますよ~」
「了解だ」
安全が確保できたようなので、俺たちもオーガのそばに寄っていく。そして、12体のオーガを宝石に変えていった。
「おとうさん、すごいのです~」
「そうか、お父さんはすごいか!」
ユキが嬉しそうに俺の腰に抱きついてきた。外套のフードがなければ頭を撫でているところだ。残念!
その後、俺たちは森の奥へどんどん進んでいった。
いつの間にか雨も上がっていたので、外套を脱いでアイテムボックス(極)へしまう。
しかし、アイテムボックス(極)は便利だ。雨に濡れた外套から雨水だけを取り除くことができるので、次に取り出した時にはちゃんと乾いているのだ。
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コメント
黒音
新しい感じで気に入りました