ジュエリークラフター 【魔物を宝石に変えて魔王も倒せるけど勇者じゃないおっさん】
007A_ジュエモン
カールたちは訓練を終えて実際に魔物を倒すことになった。
勇者だけあって、少し戦い方を教えただけで武器の扱いがみるみるうちに上達したことで、実戦を経験させることになったのだ。
まだ、一般常識などの座学は残っているが、それは少しづつ進めて行けばいいと上層部が判断した。
「この王都の付近にいる魔物はウサギ、オオカミ、イノシシなど獣型が多い。どれもカッパー級で弱いが、気を引き締めてほしい」
騎士団長のガーランドが5人の勇者の気を引き締めた。
「「「「「はい!」」」」」
5人は王都の外に出て実際に魔物と対峙した。
カールは剣の勇者なので、剣を構えてホーンラビットに斬りかかると、一太刀でホーンラビットを切り伏せた。
「ウサギでは自分の実力が測れないよ」
ホーンラビットを斬ったことで剣についた血のりを拭きとりながら仲間の勇者のそばに戻ってきたカールはホーンラビットを瞬殺できたことにご満悦のようだ。
「一番弱い魔物だって聞いているから、これからだろ?」
アキムも自分の武器である斧を弄び早く魔物と戦いたいようである。
勇者たちの初戦は順調に終わりを迎えた。
「次はダンジョンに入りたいな。ダンジョンの方が強い魔物がいるんですよね?」
「カール殿、あまり急がれますな。勇者の貴殿らは成長も早いのですから」
ガーランドが諫めなければならないほど勇者の5人は魔物との戦いを望んでいた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「はぁー」
俺はため息を吐いた。
アフロディーテさんに頼まれたので魔王を討伐するのは前向きではないが、考えてもいい。
レベルが上がったのだから、さっさと魔王を倒したっていいが、誰かに言われて魔王討伐なんてしたくはないという葛藤がある。
じゃぁ、魔王討伐を先延ばしするか? う~ん、どうしようかな……。
まぁ、魔王のことを調べてからでも遅くはないだろう。もし、魔王が極悪非道なら討伐しに行けばいいし、そうじゃなければ放置だな。
魔王だから悪だと言うのはナンセンスだと思うし、魔王だから無条件で討伐しなければいけないなんて馬鹿げた話だ。
「なんだかんだ言っても自分の目や耳で確認しなければ、最終的な判断はできないし。こんなことを考えていたら気が滅入るな」
地球にいたころは気が滅入ると気合を入れるためにゲームをした。しかし、この世界にはゲームなどない。この世界自体がゲームのような世界なのだから。
地球にはもう戻れないのだからこの世界で何をするのか、目標を、やりたいことを考えよう。
まずはユキだ。ユキの幸せが一番で、他は二の次だ。そうだな、ユキが俺の庇護がなくても生きていける国で、しっかりと生きていける地盤を築いてあげなければ。
そうすると、町に行くのがいいのかな? 町でジュエリーショップでも開いて商売をしながらユキの成長を見守ろう。
「はぁ……」
「何、ため息なんかついて。幸せが逃げるわよ」
もう一つの悩み。それは目の前にいる金髪の美女。こいつがいるせいでため息が津波のように溢れ出てくるんだよ。
「誰のせいだ……」
「それで、これからどうするの?」
「そうだな……魔王の情報を集めつつ、この世界での地盤を築く」
転生がキャンセルできないのであれば、この世界を楽しむしかないだろう。自殺? なんで俺が自殺しなければならないんだ。転生したくないからと言って自殺なんてしない。転生した以上は俺の好きなように生きるさ。
今はユキという俺の生きがいもいることだしな。
「地盤? 魔王を倒せば英雄ってもてはやされるのに? やっぱり変人よね」
変人なのは自覚している。しかしダメ神に言われると無性に腹が立つ。思わずダメ神の頭にチョップを入れてしまう。
「痛いわね、何するのよ!?」
「人を変人呼ばわりするからだ」
「変人に変人って言って、何が悪いのよ!」
「お前は俺のアシスタントじゃないのか? だったら俺に失礼な発言をするなよな」
「何よそれ? あんたは私のご主人様じゃないんだから、私の勝手でしょ!」
ダメ神はぷーっと頬を膨らませる。それだけを見れば可愛いのだが、いかんせん、ダメ神によい感情はない。
「まぁ、いいか。とりあえず、森へ行くぞ。どんな魔物がいるのか見に行くぞ!」
魔物を宝石にして、金を稼ごう。ダンジョンならお宝があるかもしれないしな。
「はいはい」
「『はい』は一回だ、馬鹿者!」
再びチョップをすると、頭を抱えて痛がるダメ神。
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