ジュエリークラフター 【魔物を宝石に変えて魔王も倒せるけど勇者じゃないおっさん】
004B_白銀のドラゴン
俺は次の確認をすることにした。それは最後の、3番目の補助アーツだ。
まずは小石を宝石にする。今回の宝石はアメジストだ。アメジストは紫色の綺麗な宝石で、品質を極上まで上げる。綺麗だ。
俺の剣を取り出す。この剣にはスロットというのがある。武器屋は何も言わなかったけど、俺の神力眼で見たらこの剣にはスロットが1つあった。
高価な剣にはスロットが3つある物もあったけど、そこまで高価な剣を買うだけの資金がなかった。
だけど、俺が買った剣と同じ剣は見た目も価格も一緒なのにスロットがない物がほとんどだった。その中でスロットが1つあったこの剣を買ったのだ。
おそらくだけど、このスロットがある武器や防具にしか宝石を合成できないのではと、俺は踏んでいる。
先ほど作ったアメジストと剣に集中する。剣にアメジストを合成するとどんな剣になるのか分からない。でも、合成したら分かると思うんだ。
なんだか、若い考えだな。
「よし、俺の剣よ、伝説の魔剣になるんだ!」
剣と宝石が光った! そして1つになると、光がさらに眩しくなった。思わず目を閉じてしまった。
「……」
目を開けると普通のショートソードだった俺の剣に紫色の筋が中心に走っていた。
「……かっけーーーっ!」
しまった。思わず叫んでしまった。ユキは起きなかっただろうか? よし、起きてないな。
神力眼で見てみる……雷撃剣。
むっちゃかっけーのですが!?
何々、この雷撃剣で切られたものは全身に雷が走り感電する……だと……俺は……俺は……魔剣を手に入れたっ!
「俺はチート剣を手に入れた!」
「ご主人様……」
「え? ユキ……見てた?」
「はいなのです……見ていましたのです……」
めっちゃはずかしい……。
「これはだな……」
「ご主人様……かっこいいのです!」
え? かっこいい? 俺が? いや、俺のこの剣のことだよな?
「その……ありがとう」
恥ずかしい思いをしたが、ユキをもう一度寝かせてユキの篭手、脛当て、胸当てにも補助アーツを行使して強化した。
そして夜が明けた。2徹だけどまだ大丈夫。
「……ご主人様……その魔物は……」
ユキがアースボアとブラックアイアンウルフを見て目を剥いて驚いている。そりゃそうだな。こんなデカい魔物が2匹もいるんだから。
「こいつらは俺の召喚した魔物だ。アースボアとブラックアイアンウルフだ。これからよろしく頼むよ」
「す……」
す?
「凄いのです! ご主人様は、魔物使いなのですね!」
「あぁ……ありがとう……」
ユキは凄い食いつきようだ。
「でも、このままだと他の魔物と区別がつかないのです」
なるほど、それなら……。俺はアイテムボックス(極)からロープを取り出した。それを適度な長さに切って2匹の首に巻いてやった。
「これで区別がつくだろう」
「可愛くないのです……」
「じゃぁ、次の町でいい物があれば買おうか」
「はいなのです!」
この2匹、夜のうちに魔物を結構狩っていた。俺は周囲を警戒してくれと言っただけなのに、合わせて15匹の魔物が死体で俺に捧げられた。
どうやら戦闘力もかなり高い魔物のようだ。
「アースボアとブラックアイアンウルフは共にスチール級の魔物なのです!」
スチール級?
「えーっと、そのスチール級というのはどういうものかな? 説明を頼むよ」
「はいなのです! 魔物には強さによってランクがあるのです。下からカッパー級、ブロンズ級、アイアン級、スチール級、シルバー級、ゴールド級、そしてプラチナ級があるのです。その2匹は真ん中のスチール級なのです! とても強いのです!」
「ランクが真ん中なのに強いのか?」
「はいなのです。魔物を狩るための組織があるのです。その組織は冒険者ギルドと言って、ギルドに所属する人たちを冒険者と言うのです。その冒険者が6人以下のパーティーで倒せる魔物のランクによってカッパー級の冒険者とかブロンズ級の冒険者というのです。でもスチール級の冒険者はあまりいないのです」
「その理由は魔物が強くて6人パーティーでは倒せなくなってしまうからなのか?」
「そうなのです!」
なるほど、だいたい理解できた。そう言えば、種族は神力眼で簡易的に見たから分かっていたけど、他のステータスを見ていなかったな。確認してみるか。
■ ステータス ■
氏名:
職業:ジュエルモンスター8
種族:アースボア
HP:5,280/5,280
MP:128/128
SP:542/542
■ ステータス ■
氏名:
職業:ジュエルモンスター7
種族:ブラックアイアンウルフ
HP:5,120/5,120
MP:548/548
SP:524/524
えーっと、職業がジュエルモンスターって何? 俺のジュエリークラフターのアーツで召喚した魔物だから?
俺のステータスでは種族はなかったけど、こうしてしっかり見ると差が分かる。氏名は俺が名づけをしないといけないのかな?
「よし、お前たちに名前をつけよう!」
「ドキドキ、なのです!」
2匹に名前をつけてやろうと思ったら、ユキが目をキラキラさせていた。
イノシシの方は猪八戒の天蓬元帥からとってテンポウ。オオカミの方は狼に牙でロウガだ。まぁ、猪八戒は豚だけどいいや。
「お前はテンポウ。お前はロウガだ」
「ブルブルー」
「ガウグルー」
2匹は喜んでいるようだ。
ここで俺は夜のうちに売る用に作っておいた宝石に2匹が狩ってきた魔物の魔石を合成した。
売る用だから品質は上質にとどめていた宝石だったせいか、魔石と合成された宝石に封じ込められた魔物はアースボアとブラックアイアンウルフとは違っていた。
上質のエメラルドにはフォレストウルフ、上質のルビーにはレッドボアが封じ込められていたのだ。元はブルボアとリトルウルフなのでまた種族が変わっている。
「フォレストウルフとレッドボアはアイアン級の魔物なのです。テンポウちゃんとロウガちゃんよりはランクの低い魔物なのです」
これは俺の予想だけど、宝石の品質と魔物のランクは密接に関係していると思う。もしかしたら、宝石の種類でも変わるのかもしれない。
今は旅の空の下なので検証は後にするが、もし俺の考え通りなら最下級のカッパー級の魔物の魔石を入手して、アイアン級やスチール級、もっと上のシルバー級やゴールド級の魔物を使役できるかもしれない。夢が広がるけど、1つ問題がある。今の俺ではどんなにMPを注ぎ込んでも極上までの品質しか作れないのだ。極上の上の品質はなかなかハードルが高いようだ。
「よし、出発しようか!」
「はいなのです!
「ブル」
ジュエルモンスターはテンポウを出したままにして、その背中に乗ってみた。ちょっと毛がごわごわするけど、テンポウの乗り心地は悪くない。
「うわー、高いのですー」
ユキは楽しそうに俺の前でテンポウに跨っている。ウサ耳が俺の視界を遮っているが、テンポウは俺の言うことをしっかりと理解して忠実に実行するので、視界が悪くても問題はない。
それにテンポウは俺たちが落ちないように気を使って歩いている。いい感じだ。
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