ジュエリークラフター 【魔物を宝石に変えて魔王も倒せるけど勇者じゃないおっさん】

なんじゃもんじゃ

000A_異世界

 


 巨大な白銀のドラゴンは俺に対して、その凶悪極まりない口を開いてブレスを吐こうとしていた。
 これで俺の人生も終わるんだなと、短い異世界転生人生を振り返った。
 ……俺はいい、俺はいいが、この子だけは助けられないだろうか!?
 俺は銀色の髪の毛にウサギの耳が生えている可愛い少女を抱きしめて、白銀のドラゴンのブレスから少女を護ろうとした。
 こんなことで少女を護れるとは思わないが、もしかしたら……。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 おい! 俺の話をきけって!
「……」


 誰に話を聞けと言っているのかだって? そんなの決まっている……いや、そんなことより、俺はどうなった!?
 冷静になれ、冷静になれ、冷静になれ、冷静になれ!
 心を落ち着かせて周囲を見渡した。


 たしか俺は……そうだ、光の輪を通ってこの場所に……。着ている服はYシャツとチノパン。Yシャツの胸ポケットにはスマホが入っているけど、チノパンのポケットには何も入っていない。家にいた時の姿だな。


 ここは……石造りの建物の中……かな?
 かなり広い空間で、壁や天井にはぎっしりと彫刻が施されていて、ヨーロッパでよくある寺院のような感じで威圧感がある。
 さらに視線を動かして周囲を窺うと、俺と同じように佇む5人の少年少女の姿があった。
 俺も彼らのような年齢になっているはずだけど、鏡がないので分からない。
 自分が立っている床を見ると、複雑怪奇な模様が刻まれている。チョークや絵の具などで描いたものではなく、石の床に刻まれているように見えた。


「へ~、本当に異世界なんだ!?」
 少年の一人が声を出しました。この少年、西欧系の白人で彫の深い顔立ちの金髪、サファイアのように透き通った青い瞳、身長も180㎝以上はあり、Tシャツに浮き出している筋肉から細マッチョと分かった。
 物語の主人公や、王子様のような顔立だ。俺なんか若返ったとしてもフツメンだから不平等だと思った。


「僕はカールです。カール・マクマイヤー。ロンドン出身です。よろしく」
 少年カールが自己紹介をすると、他の少年少女もそれぞれ自己紹介を始めました。少年少女はいずれも日本人ではない。
 サウジアラビア出身の白人、190㎝近い身長、黒髪、緑色の瞳のゴリマッチョのアキム・レスキン。
 アフリカ系の肌の色なのは、コンゴ出身、細マッチョのピヤリオ・チェジュム。
 カリフォルニア出身の白人で、染めているのかと思う程の赤毛に碧眼美女のユーリア・ドルスタイン。
 上海出身の黒髪が綺麗な美少女のシャオ・ワン。


「俺は。来瑠木栄児。日本人だ」
 5人の少年少女は皆が美形なので、俺がこの中に入ると見劣りがすごいことだろう。
 俺は元43歳で黒髪黒目、身長はギリギリ170㎝のやや吊り目の中年男性。あくまでもここに来る前の俺だ。


「自己紹介も終わったし、ステータスでも見ようか」
 カールも俺と同じでここが異世界だと分かっているようだ。だからステータスがあることも知っているのだろう。
 五人はそれぞれにステータスを確認し始めた。俺もステータスを確認するとしようか。
「……ステータスオープン」
 ポツリと呟くと視界に今までなかった21インチほどの大きさの半透明の画面が現れた。これがステータス。自分の情報を知ることができるツールらしい。




 ■ ステータス ■
 氏名:エイジ・クルルギ
 職業:ジュエリークラフター1
 HP:100/100
 MP:100/100
 SP:100/100
 ■スキル■
 言語理解I




「本当に異世界なんだ……しかし、このステータスが強いのか、弱いのか、分からないな……ん? スキルがない?」
 5人が俺の最後の言葉に反応した。思わず声に出ていた。不用意だったなと反省をする。
「「「「「え? スキルがないの?」」」」」
「ああ、ないな……」
 5人の顔に困惑が広がった。不思議に思っているようだ。


「だって、神様が言語理解以外に2つのスキルをくれるって言っていたよ?」
 カールはよいスキルを二つもらうという条件でこの世界に転生したと話してくれた。
「私の時もそうだったよ?」
 ユーリアもまたカールと同じように神に説明を受けたそうだ。
「俺もだ……」
「俺も……」
「私もそうです……」
 アキム、ピヤリオ、シャオの3人も同じだ。
 俺だってそう聞いていたが、ないのだから仕方がない。それに職業も勇者ではなかった。これはあのダメ神が俺の希望を聞いてくれたのだろうか?
 そんな雰囲気じゃなかったんだけどな……スキルもないし、もしかして特典なしの転生かよ……。
 まぁいい、勇者召喚より特典なしの方がよっぽどいいからな。
「……ない物は仕方がない」
「おじさんにスキルがないってことは職業も勇者じゃないの?」
 カールがちょっと気まずそうに聞いてきた。
「ああ、勇者ではなく、ジュエリークラフターという生産職のようだね」
 5人がなんともいえない顔をした。でも、俺は全然悲観していない。むしろ、勇者の5人の方が可哀そうに思えているのだ。


 

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コメント

  • ノベルバユーザー337314

    いまいけとものり

    1
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