婚約破棄から1年後・・・・・・

こうじ

大家の娘はしっかり者です

「えぇっ!? エミーを追い出した奴が来たのぉっ!?」
 そう言って身を乗り出すのは私の住んでいる家の大家、つまり私の乳母の娘である『ミサンガ』、私が一人暮らしをし始めた頃から色々お世話になっているしっかり者の少女だ。
「えぇ、でも私は縁を切られましたから他人ですけどね、でも謝罪してくれました。」
「一発、ビンタとかしなかったの?」
「流石にそれは出来ません。変な噂を立てられちゃうじゃないですか。」
「まぁ、エミーがそれならいいんだけど……、私だったら一発殴ってボロカスに言っちゃうなぁ~。」
 ミサンガは感情がすぐに出るタイプだからそうなるかもしれない。
「でも、エミーを追い出した奴らはそろそろボロが出てくるんじゃないかな? そうすればエミーの冤罪も晴れるんじゃないの?」
「でも、もう1年前の事ですから今更どうしようとも思いません。私は今の暮らしが楽しいですから。」
「……エミーってお母さんから聞いてたイメージと全然違うね。もっと我儘な人だと思った。」
 あれ? 私そんな風に見られてたの?
「ほら、世間的なエミーナは悪役令嬢ていうイメージでしょ?」
 それを言われるとぐうの音も出ない。
 実際、私は我儘で高飛車だった部分もある。
 性格もきつかった、と思う。
 でも、それは公爵令嬢を演じていたに過ぎない。
 実際はガーデニングや小物作りが大好き、派手な所が苦手な普通の女の子、だと思う。
「貴族の社会は見栄とプライドの世界なのよ。誰よりも高貴で自信満々でないと生きていけないのよ。」
「面倒くさいね。」
 そう、面倒くさい世界なのだ。
 だから、そんな世界から解放されて私は幸せなのだ。

コメント

  • RAI

    続き楽しみにしています

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