新・痛々しく甘いチョコレェト

山田 みつき

18

私は、どんな風に長谷川編集長と新部長である吉井真冬がそこ迄の接点があったのか、興味深く思い始めた。

私「吉井真冬とゆう一人の人間として、接点が最初から合ったと言う事なんでしょうか?」

長谷川編集長「違うわ。垢の他人よ。原稿用紙を会社に送って来たの。先日貴方が目を通した、いえ、見直した作品。」

私「これですね…痛々しく甘いチョコレェト。」

長谷川編集長「…関心あるんじゃない。…そう。其れになる迄の過程で、まず原稿に目を通して、フィクションなのかノンフィクションなのか疑った。片方は真冬ちゃんから。もう片方は何と男の子からだった。登場人物の、望君。」

私「二人共、うちの出版会社に原稿を送って来て居たと言う事なのでしょうか?」

長谷川編集長「そうなの。しかも別角度から。それって凄い事じゃない?互いの内容に目を通して見ると、とても嘘の話だと思わなかった。内容は、解るわね?」

私「はい…。若い女性が更に若い少年を保護…いえ、その少年と恋愛した過程においての、しかも女性が金銭共に生活の免除をし、同棲していたと。」

長谷川編集長「言い方が余り好きではないわね(笑)でも、そんな感じ。私もヒモを飼っていたと貴方に告げたわね?」

私「…そうですね。」

長谷川編集長「其れは、貴方も戦場に居るから解るでしょう?とても大変な事なのよ。更には、家事手伝いでも無ければ、彼の総てに貴方がなる、想像してみてご覧。実の母親でも無いのに。」

私は、また自分が本当に体験して居ないからなのか、擁護するつもりもなく、持論を述べた。

私「でも…互いに幸せなんだったら、其れは其れでも良いのでは…。」

長谷川編集長「それはそうなんだけど。でも実は傷付くのが、女性側だとは限らないとゆう事。」

私「ど…どうして?だって彼の面倒を総て見ているんでしょう?どう考えたって、彼女が哀れにしか想わないんですが…。」

長谷川編集長「貴方、人を本当に愛した事がないのね。」

痛いところをつかれた気がした。

私「そんな事…!」

長谷川編集長「女性が優位になる。恋愛に優位も劣位も無い。けれど、どう?私も同じだったけれど。つまりは私都合で世界は回せる。幼い男の子より、私の方がよっぽど旨い言葉並べてコロッと飴と鞭を使えば良いだけ。」

私「まあ…確かにそうかもしれません。」

長谷川編集長「けれど、そんな彼がある日突然自分の目の前から消えてしまう事を想像して。仕事も何もかもを失ってしまいたい、そう思ったりするわ。その時の女ってば、まるで乙女化するよ。私もそうだった。それをもっと強い愛情で貫こうとした、自分の背徳と共に苦戦し、愛する自分の背景を、書籍化しようとする吉井真冬に私は自分と似通った所を見付けたの。彼は勿論の事、彼女も可愛いと。」

私「成程…。でも、何故その彼は、仕事に就かないんでしょうか?そこに意味が?」

長谷川編集長「出来ないんじゃない。しない。それに、その女性に委ねている故に、自ら縛りから解放された上での駆け引きにも似てる。そして、女性も同じ。心底、自分がある程度のお金を持っていれば、自分の手元に置いていたいエゴイズム。」

私「私は…自分の生活も仕事も何もかもを棄てる事なんて出来ないです。そんなエゴイストになれるものならば、動物で充分だと考える。」

長谷川編集長「でしょうね。でも、真剣に純愛していたのよ、二人は。故に彼、望君がある日をキッカケに自ら命を経ったの。其れはある意味、始めからの彼の欲求、願望だったのかもしれない。其れに対してショックを受けた彼女は、独り残されて、誰も居なくて、愛した意味も何もかもを…で、彼女がとった行動は勿論…。」

私「じ…自殺……。なのかな…。私だったら消えるなら最初から近付いて来るなって思ってしまうかもしれない。」

長谷川編集長は足を組み直し、煙草に触れた。
長い指…吉井真冬との背景がある。

長谷川編集長「貴方みたいにドライじゃないから可愛いと思った。貴方の返答は独りぼっちじゃない人の返答。私は走ったわ。ニュースになった時、原稿を読み直し、有給を使って北海道行きの飛行機に乗った。…貴方も北海道だったわよね、ふふ。案外早くに辿り着いて、原稿用紙の送り先の住所へ向かったら、警察の人達が張り付いて困った様子だった。」

私「その時に、どうして事件は片付いて居ないと編集長は解ったのですか?」

長谷川編集長「私も、その時に本当の事を知ったの。彼女は戸籍上から両親を消していて、分籍状態にあったの。遺書も遺されて…引き取り手が望だった。更には彼女、彼の死に気付いた時、死亡届を出す前に、彼と籍を入れたのよ。吉井とゆう名字は、彼の名字。最期迄、傍に居ようと誓った吉井真冬。彼と結婚しているの。母親代わりでもあるよね。多分、そんな心境だったんだと思うわ。でもね、彼女には母親なんて存在しない。私は警察に自分の身柄を聴取され、決めた。未だ、吉井真冬が息をするのであれば、私が彼女の身元引受人になる。」

私「そういえば…編集長は、まだ未婚でしたよね…。お綺麗で、何でも出来る人が、どうして…って私ずっと思って居ました。話は…理解しました。吉井部長は驚きませんでした?」

長谷川編集長「驚くに決まっているじゃない。ずっと彼の名前を呼んでいた。そして家には、何も出来なかった敗北の花を持った、女性がチラホラと来たわ。彼目当ての。彼女が目を醒ました時、彼女は支離滅裂な事を口にするの。医師は言ったわ。解離性健忘だと。」

私「なるほど…。其れで吉井部長が。なるほど。…解離性健忘、解離性同一性障害で仕事なんて出来るんでしょうか?」

長谷川編集長「彼女には沢山お金は使ったわ。そんな事どうでも良いの。彼女、強情でしょ?彼の事忘れなさいと何度言っても駄目だった。また自殺しての繰り返しだと思った。ならば、一層の事、と思って彼女の行動をいつも見てたの。私が身元引受人。だから出来る事。もし少しでも社会的地位が残される風になれば、私と一緒に頑張って欲しいと。」

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