新・痛々しく甘いチョコレェト

山田 みつき

6

私は自分のデスクに戻り、急いで自分の物を片付けて、上着を羽織った。

落ち着いて私…落ち着け私…。

そのまま鞄を持って走り出した。
途中、何かにぶつかった。

須藤「あっつ!痛っ…。あ!井川さん!?何処行くんですか!!井川さん!!」

誰かが背後から叫んでいたけれど、飛び出してエレベーターに乗り込んだ。

落ち着け私…落ち着いて。

このまま、何処へ向かうのだろう。
アテもない、帰る場所なんて何処にもない、何処へ一体向かったら良いか解らない…。

気付けば私は新宿にある馴染みのゲイバーに逃げ込んだ。
仕事着のまま、グレーのストライプのジャケットが少し煙草の灰で汚れてしまった。

ママ「あれ?咲良ちゃんじゃないのぉ、こんな時間からどうしたのよ?仕事着のまま、面白い事するわね。いつものでいい?」

私「いつもよりキツイの出して。何にも聞かないで。」

指先がカタカタ震えていた。
煙草も上手く吸えない、咳込んで、只、震えていた。

ママ「あらぁ、何があったか解らないけどねぇ。一寸先は闇よ!(笑)まぁアタシも色々あって以前の店舗とは違うの。アンタが来てる此処はねぇ、香澄ちゃんが未だこの店知らない時に知らない時に移転したの。人生色々あるわよ。そんなに慌てなくても大丈夫よ~。」

私「…私ってどう見える…?」

ママ「あらいやだ!今日はネガティブなのね。付き合ってもいいけど突き合わないわよ~(笑)って、そんなどころじゃ無さげね。」

私は深い溜息をついて、テキーラなんて飲み干すなんて。
まるで子どもみたいな事ヤラかしちゃって。

ママ「お金は要らないわ。それよりアッチに座ってるオンナなんとかしなさいよぉ。多分ノンケよ。どんな店かも知らないで入って来たのか、支離滅裂な事言うの。」

視線をママの矛先に合わせると、呆然とグラスワインを飲んでいる綺麗な人が座っていた。

気になって、声を掛けてみた。
どこかで見た事がある様な気がしたけれど、そんな人なんて世の中には沢山存在する。

私「は…初めまして。」

女性は黙って、グラスワインを飲み干した。
其の女性は何も語らない。

私「あ、あの…」

女「…。」

私「私は…!!どうせ誰からも必要とされない人間だから!話したいだけ話せば良いじゃない…!!」

ママ「ちょっと!香澄ちゃん!静かにして!他のお客さんも居るの。その女性にコレ、渡してあげて。後ねアンタ一人じゃないじゃないの。その女の人、きっと誰も居ないわよ。意地悪な事言うんじゃないの。解った?香澄ちゃん!」



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