新・痛々しく甘いチョコレェト

山田 みつき

5

席に戻ると、長谷川さんが私を見ている事に気が付いた。
長谷川さんが近付いて来て、話始めた。

長谷川「ちょっと…井川さん、いいかしら。…その原稿、早速目を通したのね。その顔…。」

二人で1階の喫茶店に入った。

長谷川「出すわ。私の都合だもの。」

私「いえ…大丈夫です。私も少し疲れて居たみたいで…お気遣い有難う御座います。」

長谷川「ダージリンと、エクスプレッソ。」

そう言ってテーブルに置いた。

私「一体…何なんでしょう。」

長谷川さんは煙草に火を付けた。

長谷川「ふぅ…須藤君にも届いたみたいなの。」

私「…みたいですね。」

長谷川「貴方…どう思う…?」

何か企みのある様な顔で私に問い掛けて来る。

私「どうって…良くあるんじゃないでしょうか。まぁ、小説家志願者なんて、何処か人と違う人が多いと思いますから…私は気にしてません。」

長谷川「そうかしら?顔色悪いわよ。動揺してるからなのよ。以前に話した事無かったかしら。」

私「何の事でしょうか。」

長谷川「うちの出版会社に貴方が入社仕立ての頃。うちではまぁまぁな売れ行きになった本を覚えてないのかしら。同じ社内の人間として。記憶にないなんて。」

私「そんな…そんな作品なんて幾らでもありますよね。何を指しているのかは私には…。」

長谷川「じゃあ…私が話した話は覚えているかしら。まぁ、単刀直入に言うわ。私、ヒモを飼っていた事があるの。」

私「え?…まぁ、個人の自由ですけれど…私の概念にはないもので…。」

長谷川「それはそれは、可愛いかったわ。それはさておき。多分…その事なんだけれど。凝縮したかもしれないわね。真冬、とゆう女性について貴方にお話をした事がある事を、貴方は忘れてしまったみたいね。残念。」

…思い出した。
あの本の事、著者の事だろう。
忘れる筈もなかった。
学生時代の頃に『まふゆ』と言う変わった名前の人が居た事は流石に覚えてて、著者と同じ名前だったから。

私「それが、何かこの原稿と関係性があると…?」

長谷川「私は、大いに関係があると見ているわ。長年、務めていたら何となく解るものよ。私にも届いたわ。勿論、名前は無かった。けれど、多分、その女性からなの。私は随分と、目にかけて居たから。」

私「…その方と私には利害関係もない。すみません、失礼します。」

長谷川「そっか…。面白くない社員が増えたものね。」

私「私は会社には、面白さなんて求めて居ませんから。仕事をこなすのみです。失礼します。」

長谷川「良いわよ別に。何だか御免なさい。なら…貴方、今日から出社しなくて大丈夫よ。」

私「そ…そんな!!困ります。私、仕事失ったら…!!どうしよう…どうしたら…!!」

長谷川「何とかなるわよ。自分で考えてみなさい。貴方じゃなくても代わりはいくらでも居るわ。」


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