甘え上手な彼女3 秋編

Joker0808

第43話




「おい赤西、スマホなってるぞ?」

 高志達の部屋では、赤西への質問責めが続いていた。 しかし、そんな時赤西のスマホに着信が入り、一同は急に静かになる。
 赤西はスマホを取り出し、布団から飛び出るとコソコソ電話を始めた。
 もちろん気になった同室の高志達は、電話の相手が気になって赤西の近くで会話を聞こうと試みる。

「も、もしもし」

 赤西は若干息を切らしながら電話に出る。
 
『わ、私……だけど……』

 電話の相手は朋香だった。
 つい数時間前に彼女になった女の子からの電話。
 赤西はなんだか変な気持ちだった。

「な、なんだよ……急に」

『べ、別に何でも無いわよ……』

「な、何でもないなら掛けてくるなよ」

『は、はぁ!? か、彼女からの電話でしょ! ありがたく応対しなさいよ!』

「な、何が彼女だ! つい数時間前までは他人だろ! それに彼女として扱って欲しいなら、もっと可愛げをだな……」

『なによ! 自分の彼女でしょ! 世界で一番可愛いくらい言いなさいよ!』

「あぁ悪い、俺は嘘はつかない主義だ」

『どう言う意味よ!!』

「世界で一番可愛いのは、お前以外にも居るってことだな」

『そんなの私だって知ってるわよ!! 少しは彼女に気を遣うって事が出来ないの!?』

「お前がいつも通りにしろって言ったんだろうが!!」

『いつも通り過ぎるのよ! 少しはアンタも……


 赤西の様子を見て、同室の高志達はがっくりと肩を落とす。
 なんだいつも通りじゃないかと思いながら、早々に興味を失い、みんなでボードゲームを始める。

「なんだよ、結局付き合ってもいつも通りじゃん……」

「あーつまんね」

「うぃ~、何がリア充だバーロー!」

 二人の関係が変われば、二人の反応の変化を楽しめるかと思った一同だったが、あまりにも期待外れで落胆していた。

「高志と宮岡が付き合った時は、面白かったんだがな……」

「あぁ、言えてる言えてる」

「そうだったの?」

「そっか、泉は知らないよな?」

「そんなに俺変わったかな?」

 高志の言葉に、土井と優一は大きく首を縦に振る。
 そんな二人に高志は首を傾げる。
 
「くっそぉ~……なんで、なんで俺だけぇ~」

「あぁ、繁村がまた泣き出したぞ」

「土井、あの酔っ払いを頼む」

「うい~」

 土井は繁村を慰め、赤西は喧嘩口調で彼女と電話をし、泉はなんだか上の空。
 そんな修学旅行二日目の夜も更けて行く。





 翌朝、修学旅行三日目の朝。
 高志は自分の班の異変に気がついた。
 今日は奈良の観光なのだが、なんだか班の一部の女子と男子の様子がおかしい。

「紗弥、紗弥」

「どうしたの?」

 奈良に向かうバスの中で、高志は隣に座る紗弥に尋ねる。
 
「なんか、御門と泉の様子おかしくないか?」

「あぁ……実は昨日ね……」

 紗弥は昨日由美華から聞いた話しを高志にする。
 話しを聞いた高志は、昨日の泉の態度の変化を思い出し納得する。

「だから昨日……」

「そうなの……でも由美華ったら、意識しちゃって……」

「目を合わせるだけで緊張すると……」

「うん、まるで付き合ったばっかりの頃の私達みたいに……」

「なるほどなぁ……」

 高志と紗弥がそんな話しをしていると、後ろの座席で話しを聞いていた優一は肩を落としてため息を吐き、隣の土井に話し掛ける。

「なぁ、目の前の馬鹿二人は放っておいていいんだよな?」

「付き合ったばっかりっていうか、まだ付き合って半年も経ってないけどね……」

 相変わらずだなと思いながら、優一は窓の外を眺める。
 そして、更にその後ろの席では、赤西と朋香が互いに反対方向を見ながら話しをしていた。

「ね、ねぇ……」

「な、なんだよ……」

「なんでこっち向かないのよ……」

「お、お前もだろ!」

「わ、私は外を見てるのよ……そっち何も無いでしょ……こ、こっち向きなさいよ」

「な、なんでお前の方なんて向かなきゃ行けないんだよ」

「な、なんでも良いでしょ! 良いからこっち向きなさいよ!」

「強引過ぎるだろ!」

 赤西はため息を吐きつつ、朋香の言うとおりに朋香の方を見る。
 朋香は赤西と目が合い、思わず顔を真っ赤にし、窓の方に向き直ってしまう。

「こ、こっち見るんじゃないわよ!!」

「お前が見ろって言ったんだろ!」

「アンタの視線がいやらしいのよ!」

「そんな目でお前を……お前を………見てかも……」

「な、なんでそこ正直なのよ! 変態! ドスケベ!」

「いや、だって……俺らもう恋人同士だし……これからの事を考えたら……いつかは……」

「ば、馬鹿!!」

「ぐぼらぁ!!」

 赤西のそんな反応に、羞恥心が限界だった朋香は思わず手を出してしまう。
 朋香の拳を頬に受け、赤西はそのまま気を失う。

「まったく……馬鹿なんだから……」

 そう言って朋香はそっと、赤西の手を握る。
 そんな複雑なカップルの後ろの席には、泉と由美華が気まずい雰囲気で並んで座っていた。

「………」

「………」

 互いに気まずい様子でずっと黙っていた。
 泉は振られた事を引きずっており、由美華は泉が自分の事を好きだったという事実に困惑していた。

「な、奈良……楽しみだね」

「そ、そうだね……み、御門さんは……奈良は始めて?」

「う、うん……鹿に鹿せんべいあげて見たいなって……」

「そ、そうなんだ……」

「う、うん……」

 会話は直ぐに終了し、互いに反対方向を向いてしまう。
 泉は振られた事を引きずっており、元気もあまり無い。
 そんな泉の様子に由美華は気がついていた。

(うぅ……やっぱり泉君元気無い……ちゃんと謝らないと……)

 由美華がそんな事を考えている間にバスは目的地に到着。





 奈良に到着した高志達は班に別れて観光を開始した。 しかし、高志達の班は盛り上げ役の由美華のテンションが低く、班の中はなんだか静かだった。

「よ、よし! じゃあ鹿公園に行くか」

「そ、そうね! わ、私鹿見るの始めてなの!」

「え、紗弥もなのか!? じ、実は俺もなんだよー!」

「そ、そうだったんだー! お、お揃いだねー!」

 周りから見たら馬鹿丸出しのようなオーバーリアクションで、班内の空気を明るくしようとする高志と紗弥。
 しかし、班内の空気はあいかわらずだった。

「なにアホみてーなリアクションしてんだ?」

 優一からそう言われ、高志は少しイラッとする。
 

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コメント

  • HARO

    待ってました~
    面白いです、更新頑張って下さい

    3
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