それでも中二病はカッコいい
第4話 誰だ?お前
 午前の授業が終わり、現在は昼休み、学食へ行く者や、友達と教室で弁当を食べる者と様々だが、如月は1人、屋上へ行っていた。
 この散武高校の屋上のドアは、公式に開いている。昔は開けていなかったらしいが、進入禁止されている所ほど、行きたくなるのが人間の性と言うべきか、不正に屋上に行った学生達が事故を起こした。
 それがきっかけで学校側は、閉じるより、しっかりと、安全管理をして、敢えて進入禁止にしないほうが、いつでも行ける屋上は、生徒からの興味が失せ、事故も減ると考え、対策をとった。
 普通の学校ならば、こんな考えには至らないだろうが、うちの校長が中々特殊な人だったらしい。
 その結果、10分休憩の短い期間は勿論のこと、5月はまだ少し肌寒く、わざわざ屋上に足を運ぶ生徒は滅多にいない。
 如月が屋上に着くと、いつもの定位置らしき隅の方に座り、持ってきた弁当を食べ始めた。
 本人は別に、居心地が悪いとか、空気を読もうとか、そんなそんなことは一切考えてなく、ただ単に外で食べたいから、という呑気な理由で毎日屋上で食べている。
 やがて、弁当も食べ終わると、教室に戻ろうと、腰を上げた、その時──
「あら、ここにいたのね」
「........」
 ドアが開く音が来たと思ったら、そこから出てきた女子生徒が如月にそんなことを言ってきた。
「結構探したのよ? 貴方の名前も、学年もわからないんだもの。中々大変だったんだから」
 すると女子生徒は俺の返事を待たず話を続ける。まるで如月の方は、自分の事が分かっていることを前提としたように....
「....お前、誰だ?」
「........はい?」
 本気で自分の事を知ってると思っていたのだろう。予想外という風に驚いた顔をしている。
「....いや、だからお前は誰だと聞いてるんだ。そちらから話しかけてきたのだから、先に名乗るのが道理だろう?」
「......あぁ、分かったわ。そういう事ね、名前を知らなかったから聞いたのね?」
「....? まぁ、そうだが」
 俺の返答に、勝手に納得して、その女子生徒は満足気に口を開く。
「私の名前は、天条 藍里、1年A組よ。それで、貴方は?」
「俺は如月空斗。1年B組だ」
「あら、隣のクラスだったのね。....まぁいいわ、話を進めるけど。 朝の登校中のこと、と言えば分かるかしら?」
 天条は、屋上のドアを閉めると、そのドアに寄りかかる。天気の良い4月の日差しが、地面に反射して、その綺麗な美貌を照らす。金色の髪は、輝きを増し、如月は、素直に、光合成してる?と感じるのだった。
 「なんの事だ?」
「........」
 如月は、本当になんの事を言ってるのか分からなかった。朝はそもそも途中で引き返したし、誰とも会話してない。
「とぼけないで、貴方、しっかり意識をこちらに向けていたでしょう?」
 ....ふむ、そこまで自信ありげに言うからには、何かあったのかもしれない。
 人の名前を覚えるのは限っては苦手だが、物覚え自体はそこまで悪くないはずだ。
 朝..早朝の登校日、会話はしていない。ついでに遅れ気味であったため、生徒自体全くと言っていいほど見かけていない。....ん?生徒?  生徒といえば........
「......合気の娘か」
「やっと思い出したようね。その娘という呼び方は、同級生に呼ばれるのは不愉快だからやめてくれる?」
 天条は、如月がイケメンだからと言って、態度は終始変わることは無く、素直に不愉快そうな顔をしていた。
「あぁ、そうだな。確かに同期にかける呼び方ではなかったな。すまない。それで、早朝のことがなんだ?」
 正直、早朝の件については、如月は全く関わっていない。あのヤンキーを従わせている者にでも見えたのだろうか。
「何個か質問したいのだけれど、良いかしら?」
 昼休みはまだ30分ほど残っている。教室に戻っても、得にやることも無いので、承諾した。
「あぁ、構わない」
「まず一つ。貴方、なんで助けようとしなかったのかしら?」
 その質問は、言外に助けて欲しかった事を伝えてると言うより、ただ単純に、質問しているように見えた。そもそもこの女子生徒に、助けなど必要なかった事がその証拠だ。
「助ける必要がなかったからだ」
 他人が聞けば、言葉足らずで分からず、イライラするであろう如月の回答は、天条には分かったようだ。
「そう。じゃあ2つ目。騒動が収まった後、何故学校とは反対の方向へ歩いていったのかしら?」
「修行をしに行ってた」
 もうここまで来ると、理解どころか、目の前の男は一体何語で話しているんだ?と、軽くゲシュタルト崩壊を巻き起こすほどだ。  だが、これにも天条は特に反応を示さず、涼しい顔を保っていた。
「差し支えがなければどんな修行が聞いてもいいかしら?」
「差し支えるな。とてもじゃないが、口では説明できない」
 数秒黙り込んで、考えるように目を瞑る天条。
 やがて、目を開けると、視線をこちらに向け、口を開く。
「では、警察とかには言ったりしてないのね?」
「....? なんだ、そんなことを気にしていたのか?完全な正当防衛だ。言う理由がない」
 如月は、呆れた様な顔をしながら、やれやれという風に力を抜いて言葉を発する。
「そう。それを聞いて安心したわ」
 天条は、安心したと言っておきながら、先程から全く動じた様子はなかった。
「そもそも、それが聞きたかったのなら、最初からそれを聞けば良かったんじゃないか?」
「回りくどく聞いたことは謝るわ。けど、何事も慎重に物事を進めることは大事よ?」
 慎重に....か。
 少なくとも、慎重に物事を進めていたら、ヤンキーがあんなに怒ることもなかっただろうに。と思ったが、顔には出さない。
「それで、要件はこれで終わりか?」
「えぇ、私の用事は済んだわ」
「そうか。なら俺はもう行くぞ」
 話がないのならもう用はない。と言うように屋上を出ていこうとするが、天条がドアに寄りかかったままで、出ていこうにも、天条が邪魔で出れない。
 天条も、自分がどかないと、如月が教室に戻れないことは気づいてるはずだ。
どうやら、まだ何かあるようだ。
「ところで貴方、さっきの1つ目の質問で、助ける必要がなかったからって言ったわよね?」
「あぁ、言った」
「それは、私があの野蛮人を無力化した後に気づいたのかしら?それとも....」
「前だ。当たり前だろう?後から助ける必要がないと気づいて、なんの意味がある?」
 だが、それがどうしたのだろう?と如月には疑問しか出てこない。あの質問を聞いたあとの納得いった顔は何だったのか。
「冗談を言ってる顔ではないわね........貴方、なかなか面白い事を言ってるの事に、気づいているかしら?......あぁ、気づいていないようね。えぇ、いいわ。気にしないで。私はそろそろ教室に戻るわ。じゃあまた」
「....あぁ」
 ん?また?
 天条は、1人で納得して屋上から出ていった。
「....ふむ、そういえば。今回のは顔が赤くなかったな」
 屋上には意味不明なことを言っている如月だけが取り残された。
 この散武高校の屋上のドアは、公式に開いている。昔は開けていなかったらしいが、進入禁止されている所ほど、行きたくなるのが人間の性と言うべきか、不正に屋上に行った学生達が事故を起こした。
 それがきっかけで学校側は、閉じるより、しっかりと、安全管理をして、敢えて進入禁止にしないほうが、いつでも行ける屋上は、生徒からの興味が失せ、事故も減ると考え、対策をとった。
 普通の学校ならば、こんな考えには至らないだろうが、うちの校長が中々特殊な人だったらしい。
 その結果、10分休憩の短い期間は勿論のこと、5月はまだ少し肌寒く、わざわざ屋上に足を運ぶ生徒は滅多にいない。
 如月が屋上に着くと、いつもの定位置らしき隅の方に座り、持ってきた弁当を食べ始めた。
 本人は別に、居心地が悪いとか、空気を読もうとか、そんなそんなことは一切考えてなく、ただ単に外で食べたいから、という呑気な理由で毎日屋上で食べている。
 やがて、弁当も食べ終わると、教室に戻ろうと、腰を上げた、その時──
「あら、ここにいたのね」
「........」
 ドアが開く音が来たと思ったら、そこから出てきた女子生徒が如月にそんなことを言ってきた。
「結構探したのよ? 貴方の名前も、学年もわからないんだもの。中々大変だったんだから」
 すると女子生徒は俺の返事を待たず話を続ける。まるで如月の方は、自分の事が分かっていることを前提としたように....
「....お前、誰だ?」
「........はい?」
 本気で自分の事を知ってると思っていたのだろう。予想外という風に驚いた顔をしている。
「....いや、だからお前は誰だと聞いてるんだ。そちらから話しかけてきたのだから、先に名乗るのが道理だろう?」
「......あぁ、分かったわ。そういう事ね、名前を知らなかったから聞いたのね?」
「....? まぁ、そうだが」
 俺の返答に、勝手に納得して、その女子生徒は満足気に口を開く。
「私の名前は、天条 藍里、1年A組よ。それで、貴方は?」
「俺は如月空斗。1年B組だ」
「あら、隣のクラスだったのね。....まぁいいわ、話を進めるけど。 朝の登校中のこと、と言えば分かるかしら?」
 天条は、屋上のドアを閉めると、そのドアに寄りかかる。天気の良い4月の日差しが、地面に反射して、その綺麗な美貌を照らす。金色の髪は、輝きを増し、如月は、素直に、光合成してる?と感じるのだった。
 「なんの事だ?」
「........」
 如月は、本当になんの事を言ってるのか分からなかった。朝はそもそも途中で引き返したし、誰とも会話してない。
「とぼけないで、貴方、しっかり意識をこちらに向けていたでしょう?」
 ....ふむ、そこまで自信ありげに言うからには、何かあったのかもしれない。
 人の名前を覚えるのは限っては苦手だが、物覚え自体はそこまで悪くないはずだ。
 朝..早朝の登校日、会話はしていない。ついでに遅れ気味であったため、生徒自体全くと言っていいほど見かけていない。....ん?生徒?  生徒といえば........
「......合気の娘か」
「やっと思い出したようね。その娘という呼び方は、同級生に呼ばれるのは不愉快だからやめてくれる?」
 天条は、如月がイケメンだからと言って、態度は終始変わることは無く、素直に不愉快そうな顔をしていた。
「あぁ、そうだな。確かに同期にかける呼び方ではなかったな。すまない。それで、早朝のことがなんだ?」
 正直、早朝の件については、如月は全く関わっていない。あのヤンキーを従わせている者にでも見えたのだろうか。
「何個か質問したいのだけれど、良いかしら?」
 昼休みはまだ30分ほど残っている。教室に戻っても、得にやることも無いので、承諾した。
「あぁ、構わない」
「まず一つ。貴方、なんで助けようとしなかったのかしら?」
 その質問は、言外に助けて欲しかった事を伝えてると言うより、ただ単純に、質問しているように見えた。そもそもこの女子生徒に、助けなど必要なかった事がその証拠だ。
「助ける必要がなかったからだ」
 他人が聞けば、言葉足らずで分からず、イライラするであろう如月の回答は、天条には分かったようだ。
「そう。じゃあ2つ目。騒動が収まった後、何故学校とは反対の方向へ歩いていったのかしら?」
「修行をしに行ってた」
 もうここまで来ると、理解どころか、目の前の男は一体何語で話しているんだ?と、軽くゲシュタルト崩壊を巻き起こすほどだ。  だが、これにも天条は特に反応を示さず、涼しい顔を保っていた。
「差し支えがなければどんな修行が聞いてもいいかしら?」
「差し支えるな。とてもじゃないが、口では説明できない」
 数秒黙り込んで、考えるように目を瞑る天条。
 やがて、目を開けると、視線をこちらに向け、口を開く。
「では、警察とかには言ったりしてないのね?」
「....? なんだ、そんなことを気にしていたのか?完全な正当防衛だ。言う理由がない」
 如月は、呆れた様な顔をしながら、やれやれという風に力を抜いて言葉を発する。
「そう。それを聞いて安心したわ」
 天条は、安心したと言っておきながら、先程から全く動じた様子はなかった。
「そもそも、それが聞きたかったのなら、最初からそれを聞けば良かったんじゃないか?」
「回りくどく聞いたことは謝るわ。けど、何事も慎重に物事を進めることは大事よ?」
 慎重に....か。
 少なくとも、慎重に物事を進めていたら、ヤンキーがあんなに怒ることもなかっただろうに。と思ったが、顔には出さない。
「それで、要件はこれで終わりか?」
「えぇ、私の用事は済んだわ」
「そうか。なら俺はもう行くぞ」
 話がないのならもう用はない。と言うように屋上を出ていこうとするが、天条がドアに寄りかかったままで、出ていこうにも、天条が邪魔で出れない。
 天条も、自分がどかないと、如月が教室に戻れないことは気づいてるはずだ。
どうやら、まだ何かあるようだ。
「ところで貴方、さっきの1つ目の質問で、助ける必要がなかったからって言ったわよね?」
「あぁ、言った」
「それは、私があの野蛮人を無力化した後に気づいたのかしら?それとも....」
「前だ。当たり前だろう?後から助ける必要がないと気づいて、なんの意味がある?」
 だが、それがどうしたのだろう?と如月には疑問しか出てこない。あの質問を聞いたあとの納得いった顔は何だったのか。
「冗談を言ってる顔ではないわね........貴方、なかなか面白い事を言ってるの事に、気づいているかしら?......あぁ、気づいていないようね。えぇ、いいわ。気にしないで。私はそろそろ教室に戻るわ。じゃあまた」
「....あぁ」
 ん?また?
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