それでも中二病はカッコいい

第3話 おもしろい提案だ

 如月が教室に着き、ドアを開けると、少し遅かったのか、授業が始まり出していた。そして、クラス内は必然と、静かな空間を破った乱入者に視線が行く。だが、その人物を見た途端、ある者は興味が薄れ前を向き、ある者は冷たい視線を送った。

「外せない用事があって遅れた。あぁ、職員室へは向かったから、心配せず授業を進めてくれ」

 誰もお前を心配してない。という視線がありありと注がれる中、如月は堂々と歩き、自分の席に着く。

「......じ、じゃあ授業を始めから、教科書126ページを開けー」

 先生も、中々イラッとくる発言だった筈だが、言っても通じないことは分かり切っているため、言及はしない。それにより、他の生徒からの不満が溜まるかと思いきや、その逆で、生徒からすれば、こいつを喋らせないでくれ、という願望にも似た感情が湧き出ており、先生がスルーする事に少なからず感謝している者も多い。

 何故そこまで、喋らせないで欲しいという願望を、抱いている生徒が多いかと言うと........

「ちょっと」

「....」

「あんたに言ってんのよ、如月...!」

「ん? 俺に何か用か?」

如月が席に着くと、そのすぐ隣、以前如月に散々な目に合わされた女子生徒、篠崎 優香しのざき ゆうかは昨日、喋りかけてくるな。と言ったにも関わず、自分から話しかけてきた。

「昨日。あんたが話し掛けて来たせいで、どれだけ先生に怒られたと思ってるの?」

 昨日の態度はどこへいったのやら、如月への態度は冷徹を極めていた。

「確かに話しかけたのは俺だが、あれは音量を間違えたそちらのミスだろう」

「....うっ...く、それはあんたが挑発的なことを言うからでしょ!?」

 また同じ轍を踏むのはゴメンだというように、声は抑えて如月に反論する。

「ふむ、まぁ一般人からしたら、確かに意味がわからないものではあったかもしれないな」

 いちいちわざとらしい「ふむ」に、イライラする篠崎といった女子生徒だが、ここは堪え、ある提案をする。

「昨日のこと、許してあげるから先生にあんたが事情を話してきなさいよ」

 今更如月が先生に自白しにいっても、篠崎が先生に散々怒られたという事実は変わらない。だが、少なくとも成績には影響するだろう。だからこその自白提案。

 普通なら、イジメを発展してもおかしくない事ではあったが、如月が仮にもイケメンだった為に免れたと言えよう。

 ここで本人にも謝っておき、先生に自白しに行けば、まだ如月の高校生活は、穏やかなものになっていたのは確実だろう。だが、それを簡単に崩すのが如月クオリティ。

「なるほどな、それは....面白い提案だ」

「....そ、そうでしょ?」

 どっちがマウントを取っているかを分かっていないのか。という心の言葉を、堪えながら飲み込む篠崎。顔はこれ以上なく引きつっているが。

「あぁ、まさか俺に頭を下げろなんて言う愚か者がいる事に、驚いたよ。無知とは怖いな。だが、少しお前に興味を持った。本当にただの無知の愚か者か、または....」

 篠崎はその言葉を理解するのに数秒かかった。そして、昨日に続き、2度目のぷつんがやってきた。

「あんたぶっころ───」

「煩いぞ篠崎!廊下にたってろ!!!」







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