ダンジョンコアになった俺は最強のダンジョンを目指す!

宇宙 のごみ

両雄? 死闘を繰り広げる





 エンジェルとコボルは魔力を身体に纏わせていく。
 "魔力強化" これは魔力を纏って身体能力や視力といった、すべての能力値を一時的に引き上げる基礎的な技術だ。
 纏っている魔力の密度によって身体能力の高さが変わってくるわけだが、その点に於いてコボルは現状、圧倒的。


 ただ、それが魔力の総量を表しているかと言われればそうではない。
 格闘戦が得意なコボルは"魔力強化"に比重を置いているだけなのだ。


 対して、エンジェルは魔力強化の密度は最低限だ。


「魔法主体か……」
 その様子を見たコボルはエンジェルの出方を伺い冷静に分析する。
 魔力強化を最低限に行っているところを見てそう分析したようだ。まぁ、あのプニプニの身体を考えたらどう考えても魔法主体だろう。


 ひとしきりすきを窺いあったのち、先に仕掛けたのはエンジェルだった。


「"キュイ"」


 魔法での牽制。
 ……この魔法は……! 分からない……! 
 理由はこのスライムがなんて言っているか分からないからだ!


 羽をはためかせて浮遊するエンジェルが、
 魔法を放出したところを視認するところまで確認すると、コボルは驚愕の表情を見せる。


 いや、俺とルナも結構驚いている。


 放ったのは何の変哲もない中級魔法 "ホーリースピア"
 いつもと同じように「キュイ!」って言ってたようにしか思えなかったが、あのスライムもどきは"ホーリースピア"を放っている。
 これは槍状に形取られた光を射出する攻撃魔法。
 驚くべきは、それを魔力強化の密・・・・・・度の増加無し・・・・・のノーモーションで放ったところだ。


 そもそも、魔法の"発動"には条件が2つある。


 1つ、発動に必要な魔力の量が足りていること。
 2つ、発動したい魔法のイメージを思い浮かべること。


 上記の2つの条件を満たしてさえいれば、最低限の発動は可能だ。
 ただし、それは最低限。
 実際に魔法を放つとなるともう一つ条件が加わるのだ。


 魔法を放つ際に、使用する魔法・・・・・・に使う魔力と・・・・・・同量の魔力で・・・・・・魔力強化をする・・・・・・・こと。
 つまりMPを100消費する魔法を放ちたい場合は、MP100を使用して魔力強化を行って魔法を撃たなくてはならない。
 先の例だと合計MP200を使用して魔法を放つことになる。


 他にも魔法は威力上昇のために名を述べる、詠唱から読み上げる等の発動に於ける様々な技術があるが本来、最低限の2つと、魔力強化は必須と言っても過言ではないのだ。


 この魔力強化は魔法を放つ際に肉体を保護するためのものだが、エンジェルは魔力強化の密度の急上昇が無い。


 つまり、魔法を放つ前兆がエンジェルには無いのだ。
 なんという恐ろしいことをするんだろう、これが軟体動物の利点なのだろうか。


 そして、放たれた鋭い槍はコボルに向かって空に光の筋を残して突き進んでいく。
 しかし、コボルもまたSランクだ、その程度は意表を突かれていても軽く避ける。


 「……少し、驚いた。次は俺から行く」 


 「キュ!」


 それからの二人の戦闘はめちゃくちゃだった。
 エンジェルは自分の周りに大量の攻撃魔法を展開して打ち込んでいく。


 それは光属性のみならず火属性も織り交ぜられた魔法の弾幕だ。
 とてつもない速度まで加速したコボルはその弾幕を一本の剣で弾いたり、回避をする。


 そしてエンジェルはその速度のコボルの攻撃を防御魔法を高速で展開しながら、上手く反撃している。


 この戦闘を見た俺はエンジェルが遥か格上だということを理解する。
 複数の魔法を同時展開する技術、魔力量、そしてノーモーションの攻撃。


 現状、勝てるイメージが全く思い描けない。


「エンジェル、やるな」


「キュキュキュ!」


 白熱していくバトル。
 その時、ヒュッと風切り音が鳴り、頬を光弾が掠めてくる。


 あ、あぶねぇ! こっちに流れ弾が……
 そろそろルナの顔もだんだん険しくなっている、そろそろ止めなければ。


「ちょっ、もうそろそろやめて!」


「キュキュ!」


「まだだ!!」


 止めたのにも関わらず、1人と1匹は留まることを知らず更に戦闘を加速させていく。
 エンジェルは同時に二つの防御魔法を常に展開しつつ、ノーモーションの魔法を繰り出していく。
 コボルはコボルで魔力強化をフルで使用し、簡単な魔法を織り交ぜた多彩な剣で怒涛の連撃を繰り出している。


 そして、その加熱っぷりに合わせるようにルナの表情も怖くなっている。
 おい、これは覚えがあるぞ……。


「や、やめ……」
 どうにか納めないと、ルナがヤバい!


 しかし、一度燃え上がった熱は収まるところを知らない。
 今の状況は俺から見ても一撃が致命傷になりかねない勢いの本気の戦いをしているように見えて、目に余る。
 そして、それを見ているルナの怒りもそろそろやばい……。


「キュキューーー!!」




「ウオォォォォォォオ!!」


 両者の渾身の剣と魔法が交わるとき。 


「――――ねぇ、ユーヤに魔法が当たりかけてたんだけど」
 怒気を孕んだ声が部屋に響き渡る。
 怒鳴っているわけではないのにやけに通る声だ。
 それを聞いたエンジェルとコボルは思わず目を止める。


 これはルナさん、お怒りですねぇ……
 ぼく、知らない。


 明らかにルナを見た瞬間に硬直している二人が少し面白い。


「……エンジェル?」


「キュ……」


「コボル……?」


「な、なんだ?」


「ユーヤ、止めてたよね? ここダンジョン内なんだけど。」
 なんと底冷えするような声なのだろうか。
 これを見るのは二回目だが人が怒られているのを見ているだけでこっちまで怖くなってくる。


「なんでやめないの?」


「あ、いや、あの……」


「なんで?」


「白熱……してたからです……」
 なんという情けないSランクだろうか。
 ルナに怒られているコボルはまるで子犬だ。


「ふーん、エンジェルは?」


「キュ、キュキュ……」(楽しかったから……)


「うん、外でやって」
 なんて言っているか分からないけど速攻で一蹴されてる。
 スライムが見た目でわかるくらい委縮してるのは不思議な感覚だ。


「死ぬ気でやったことはまだいいの、ダメとも言ってなかったからね。でも、周りに迷惑かけて、止められたらやめるのが普通でしょ」


「……はい」


「キュキュ……」


「わかればいいの」


 ルナこわいよ……



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