ダンジョンコアになった俺は最強のダンジョンを目指す!

宇宙 のごみ

ドラゴン登場、逃げるのやめたらオレ死んだ





「何でこんなことになったんだか……」
 自然と口から愚痴がこぼれる。


 そう、俺は第二の人生をこの "オケアノス" という世界で過ごすことになった。
 この世界はいうなればファンタジー小説のような世界。
 モンスターやダンジョン、剣と魔法の世界だ。


 もちろん転生したからには目的、目標を定められている。
 その最終目標とは、1000年後の異世界間戦争。
 そこで世界を救うこと。




 方法は問わず。英雄譚に出てくるようなヒーロー、勇者になるも良し。
 ダンジョンマスターとなり、魔王となるもよし。
 大商人となり世界を牛耳るのでも良い。


 とりあえず異世界間戦争で世界を救えばいいのだ。


 神様は
「君以外にも既に特別な才能を持つ者を数人送っているよ!」
 と言っていた。


 自分よりも先に転生したものがいる。
 そういうことならこれは結構なハンデ。


 しかし、未だ俺のように転生してるやつがいるってことはこれでも戦力が不足しているということだ。




 転生するにあたって、元の世界の身体能力では無理がある。
 すぐにでもモンスターにやられてしまうだろう、ということで神様からは"スキル"というものを授かった。


 スキルというのは能動的若しくは自動的に発動する力だ。
 自動的に発動する力のことは特にパッシブスキルというらしい。
 スキルは通常、自身の努力や強い意志、才能や遺伝により手に入れることができる。
 しかし、神様から授かれるスキルに限り取得する方法は通常無い。
 もちろんその効果は絶大だ。


 そのスキルをいくつあるかもわからないような膨大な数の中から1つ選んだ。
 そして、俺が選んだのはパッシブスキル"成長グリドル"だ。


 このスキルは自身の成長に限界がなくなり、成長速度が顕著になる、というもの。
 要は永遠と成長し、外的要因、致命傷の攻撃さえ受けなければ滅ぶことがなくなる能力って感じか。
 他にも
 "超回復"...強力な自己回復、再生能力
 " 魔眼 "...能動的に発動させることができる能力で複数の強力な力を持つ眼を顕現させることができるようになる。
 などの中二で魅力的なスキルがたくさんあったのだが、何故、中でも一見地味なこの"成長グリドル"を選んだのかというと、この能力、初期の段階では役に立たないが順序良く進めていけばかなり有用なのだ。
 というか単純に強い。


 ……しかし、スタート地点が森なんて聞いていないぞ。


 脅威が感じ取れる道は避けているが一向に抜けることもできず、足場の悪い道に嫌気がさしながらも進んでいく。


 ふと、後方から強烈な悪寒とともに危険を感じ取る。
 すぐさまそこから離れるべく全力で森の中をを駆ける。




「グォォオオオオオ!!」


 大気を震わせるような雄叫びと共にドラゴンが森へと降り立つ。


「な、なんだあれ……」


 漆黒の鱗に覆われたそのドラゴンはその巨体でもってこちらへ歩みを進めている。
 くそっ、いきなりこんなの勝てるわけねえだろ。
 思わず悪態をついてしまう。


 しかし、この世界に来るにあたって最低限の身体能力は上げてくれているのか元の世界では考えられないようなスピードで動くことができている。
 まだ距離はあるしここは森の中だ。
 落ち着いて逃げれば大丈夫だろう。


「キャアアアアアアアアア!!」


 突然聞こえた女の悲鳴に脚を止める。
 テンプレかよ……ここは普通熊とか狼だろ……


 俺は危険を冒さない。こんなところにいるようなやつが悪い、自業自得だ。
 1度止めた脚をもう一度動かしドラゴンから離れるため駆ける。


 だって、無理だろ? あんなの。
 自身に言い聞かせるように言い訳を重ねる。


 さっきの悲鳴が頭から離れない。




 ――――また、お前は逃げるのか?
 ふと、思い出す。
 以前、親友だった男に言われた言葉。


 仕方ないだろう、これは体質なんだ。
 自らを危険にさらすことはできない、俺の体が動かない。
 今までだってそうしてきた。


 ……見捨ててきた。


 そう、俺は悪くない。
 と自分に言い聞かせる。




 でも、これからも?


 過去の後悔をまた繰り返すのか?


 一度死んで、生まれ変わってもまた?


 本当はこんな自分は嫌だった。
 "アイツ"のようになりたかった。




 そうだ、今は以前の俺じゃない。
 力は貰った、変わるきっかけも貰った。






 もう、自分を騙すのはやめよう。




「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」


 脚は震え、身体は気が狂いそうになるくらいの危険信号が、脅威であるとの警告が身体を硬直させる。


 パン! と無理矢理自分の太ももを叩き、身体に喝を入れ、 恐怖を掻き消すように叫び自身を奮い立たせ全力で駆ける。
 声が聞こえた方向へ。




 ドラゴンの元へ。


 一度死んだ。
 もう怖いものなんてないだろう?








「逃げるのは、もう止めた。」
スキル"臆病者の勇者"を獲得しました。

















 悲鳴の聞こえた場所へ急ぐ。
 もっと早く、更に早く。


 そういえばこの世界に来てから身体が少し軽くなったように感じる。
 疲れも感じ辛くなっているところから見て身体能力が強化されているんだと思う。


 それでも俺は丸腰、そうでなくともドラゴンには到底及ばないだろう。
 やるなら避けて、避けて、避けて、逃げるしかない。


 やっとの思いでドラゴンの元へたどり着くと今まさにドラゴンは悲鳴を出したであろう少女の息の根を止めようと巨大な腕を振るわんとしているところだった。


 姿を確認すると同時に勢いをつけて飛び込む。


「うわあああああああああああああああああああああ!!!!!!!」


 間一髪、少女に抱きかかえ転がるようにして一撃を回避。
 俺も少女もどうやら生きているようだ。


 突然現れた俺にドラゴンは機嫌を損ねたのかその鋭い双眸そうぼうで睨みつけられる。


 目の前にいるドラゴンはとても大きく、こちらを認識している。
 ドラゴンは力の象徴のようで、俺の決意を揺るがすには十分の迫力だ。


 俺は思わず逃げ出しそうになる。
 その瞳は邪魔をするならお前も殺す、そう語りかけられているようだった。


 ドラゴンはあくまで少女を狙うようだ。


 ドラゴンは俺が引かないのを確認すると口に炎を溜めはじめた。


「おい!! お前逃げろ!!!!!」


 少女を突き飛ばし逃げるように叫ぶ!


「…………ッ!!」


「お前がいると戦えないんだ! 早く逃げろ!!!!!!!」
 少女は何かを言いかけたようだが怒鳴り散らすように叫ぶ。
 もちろん俺の精一杯の強がり、戦うような気力はとうに削がれて今にも逃げ出したい衝動に駆られている。
 俺の必死な様相を見た少女は何とかこの場から離脱していく。


 それを見たドラゴンは俺に目もくれず照準を少女に合わせ、今にも炎を吐き出そうとする。


「クソッ!!」
 俺はドラゴンの元へ駆け寄るとその太い腕へ飛び乗りそこを足場にして顔面へと蹴りを食らわせる。


 放たれた炎を数センチ攻撃をずらすことには成功した。
 あれならたぶん大丈夫だろう。


 ドラゴンは俺を邪魔な害虫と判断したようだ。
 俺がいる場所に向かって腕を叩き付ける。


 その後も、振り回される腕や尻尾を躱しつづける。
 もう何分攻撃を避け続けているだろうか。


 これまでの攻撃を避けられたのは身体能力がこの世界基準までに上がっているということもあるが本人の危機回避能力によるものが大きい。
 若しくはこのドラゴンが極一般的なドラゴンであれば逃げ切れる可能性があったかもしれない。


 どれだけ避け続けたのだろうか。
 額から溢れる汗は尋常ではなく、身体もビショビショだ。
 実際の時間としては殆ど経過していないのだろうが、すぐ目の前に死がある感覚。


 体力の限界だ。もう少女も十分離れたはず!
 そろそろ俺も逃げなければ……と、自分の真下から危険を感じ取る。


 ドゴォ!!!


 ものすごい衝撃が脳を揺さぶる。


 自身の胸を貫いている氷柱


 え……こいつ、炎属性じゃないのかよ……
 反則……だろ……
「ゴホッ、ゴホッ!!」


 口からは血が溢れだす、自分の体の感覚がない。


「あぁ、俺。死ぬのか。」


 目の前が真っ暗になる。
 短い異世界生活だったな……


 でも、悪い気分じゃない。





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