復讐には花を添えて〜〜ガゼリア帝国第8番隊記〜〜
8番隊結成〜その1〜
この隊が結成されたのは今から約1年前に遡る。
「よく来たな、バルク」
「いえ、上官のご命令とあればどこにでも駆けつけます。
ーーところで本日はどの様なご用件で?」
当時バルクは別の隊の副官であり、目の前にいる上官であるジークは彼がまだ新人であった頃から親しくしている人物であった。
「今日、ここに呼んだ理由はな
ーーバルク、お前が今回の人事で新しく親切される第8番隊の隊長に任命される事になった」
「自分が隊長ですか?」
「あぁ、お前は武力、知力共に隊を率いるのに適していると上は判断したみたいだ。現在の副官としての勤務態度も含めてらしいぞ」
「とうとう自分が隊長ですか……」
とバルクは天にまで昇る気持ちだったが、一度落ち着いてみるととある考えが頭をよぎった。
「……なんか裏ありますよね、今回の人事」
「流石バルクだな。あぁ今回の人事は上の思惑が思っ切り絡んだからな……とりあえずこれをみてくれ」
と彼は上官からとある紙の束を受け取った。
「これは……名簿、ですか?」
そこには十数人の名前や個人情報が書いてあった。
「それは今回お前がまとめる事になる第8番隊の隊員達だ。その名簿の1人1人の欄をよく見てみれば色々と分かる。そしてそうすれば俺が言いにくい理由が理解出来るだろう」
「はぁ……では見させていただきます……」
とジークに言われるがまま名簿に書かれている個人情報に目を通してみるとそこには……
「上官、ちょっと待ってください」
「気づいたかバルクよ」
「ここに書かれている隊員達って
ーー全員軍法会議にかけられた隊員ばかりではないですか」
そうなのである。
ここに書かれている人物は全員が何かしらの理由で軍法会議にかけられ、処罰を下された者であった。
ーー上官に刃向かったり
ーーチームワークを乱したり
ーー軍の物資を横領したり
ーー中には殺人までいたりと
この名簿自体がまるで軍法会議でかけられる罪状の全てが載っている様な辞典の様であった。
バルクはこの隊員達をまとめなきゃいけないという初っ端から大き過ぎる問題に対して頭痛が止まらなかった。
「ですが上官、上の方々は何故この隊の隊長に自分を任命したのでしょうか?」
「バルクよ、その理由はとても言いにくいのだが……」
とジークが言いにくそうにしているのを見てバルクはある予測を立てた。
「ーー自分の生まれの身分が低いからですよね?」
「……すまん」
ジークが言った事によって彼の予感は確信に変わった。
一応帝国では身分の上下関わらず能力が高い者を重用する事になっている。だがしかし元からあった身分社会は今に至っても続いており、軍に関わらず政界でも上の役職にいけばいくほど元々の身分が高い人物が増えていく。その弊害が今回彼に降りかかったという事になる。
「理由としては自分が活躍し過ぎたからですよね。
身分が低い自分が活躍するのが気にいらんのでしょう」
「流石だな……あと今回の隊で何か問題が起きた際には責任としてお前を左遷や降格などいくらでも出来るからな」
「……全く、そんなに自分が嫌なら実力で超えて欲しいものですね。こんな回りくどい事しなくとも」
「まぁこれが帝国で軍人になるという事だ。
ーーバルク、一応聞くが今回の件を引き受けるか」
「どうせ自分が拒否でもしたら上官の命令無視で軍法会議にでもかけられるのでしょうね。
ーー今回の件、お引き受けいたします」
とバルクが言うとジークは多少申し訳なさそうな顔をして
「頼んだぞ」
と言った。
「ところで上官」
「なんだ?」
「副官もこの中から選ぶのでしょうか?」
バルクは正直、この癖の強そうな隊員から副官を選ぶとなると今以上に頭が痛くなりそうであった。
なので1人ぐらいはまともな人物が欲しいと思っていた。
だがジークは首を横に振り
「一応副官は別に用意している」
「本当ですか!?」
1人でもまともな思考を持っている人間がくれば少しは頭痛が治りそうだと思った彼だっだがジークが出してきた紙を見て再び頭痛の要因が増えたのであった。
「リーズベル・ガードヴェン……?
ガードヴェンってまさか……!?」
「そうだ、そのまさかだ。帝国内での大貴族であるガードヴェン家の娘だ」
ーーガードヴェン家とは
帝国内での5本の指に入るぐらいの大貴族であり、初代王の側近であった人物を起源としている。
帝国内での様々な分野に影響力を及ぼしており、王ですら対処に困るほどの勢力を誇っている。
「ガードヴェン家ですか……。
ーーん?今、娘って言いましたか?」
バルクは自分が聞き間違えたのだと思いたくてジークに聞き直したのだが、返ってきたのは無情な答えであった。
「そうだ。ガードヴェン家の娘が8番隊の副官だ」
「本当ですか……」
それを聞いた瞬間、バルクは思わず空を仰いだ。
まさか副官まで問題が起きるとは思っていなかったからだ。
ーー問題がある隊員達
ーー副官が対処に困る大貴族の娘
まさかここまでされるとは思っていなかった。
「バルクよ、分かっていると思うがガードヴェン家の娘に何かあったら
ーー出世どころか人生を諦めろ」
「はい……とほほ」
この瞬間8番隊隊長バルクが誕生したのであった。
「よく来たな、バルク」
「いえ、上官のご命令とあればどこにでも駆けつけます。
ーーところで本日はどの様なご用件で?」
当時バルクは別の隊の副官であり、目の前にいる上官であるジークは彼がまだ新人であった頃から親しくしている人物であった。
「今日、ここに呼んだ理由はな
ーーバルク、お前が今回の人事で新しく親切される第8番隊の隊長に任命される事になった」
「自分が隊長ですか?」
「あぁ、お前は武力、知力共に隊を率いるのに適していると上は判断したみたいだ。現在の副官としての勤務態度も含めてらしいぞ」
「とうとう自分が隊長ですか……」
とバルクは天にまで昇る気持ちだったが、一度落ち着いてみるととある考えが頭をよぎった。
「……なんか裏ありますよね、今回の人事」
「流石バルクだな。あぁ今回の人事は上の思惑が思っ切り絡んだからな……とりあえずこれをみてくれ」
と彼は上官からとある紙の束を受け取った。
「これは……名簿、ですか?」
そこには十数人の名前や個人情報が書いてあった。
「それは今回お前がまとめる事になる第8番隊の隊員達だ。その名簿の1人1人の欄をよく見てみれば色々と分かる。そしてそうすれば俺が言いにくい理由が理解出来るだろう」
「はぁ……では見させていただきます……」
とジークに言われるがまま名簿に書かれている個人情報に目を通してみるとそこには……
「上官、ちょっと待ってください」
「気づいたかバルクよ」
「ここに書かれている隊員達って
ーー全員軍法会議にかけられた隊員ばかりではないですか」
そうなのである。
ここに書かれている人物は全員が何かしらの理由で軍法会議にかけられ、処罰を下された者であった。
ーー上官に刃向かったり
ーーチームワークを乱したり
ーー軍の物資を横領したり
ーー中には殺人までいたりと
この名簿自体がまるで軍法会議でかけられる罪状の全てが載っている様な辞典の様であった。
バルクはこの隊員達をまとめなきゃいけないという初っ端から大き過ぎる問題に対して頭痛が止まらなかった。
「ですが上官、上の方々は何故この隊の隊長に自分を任命したのでしょうか?」
「バルクよ、その理由はとても言いにくいのだが……」
とジークが言いにくそうにしているのを見てバルクはある予測を立てた。
「ーー自分の生まれの身分が低いからですよね?」
「……すまん」
ジークが言った事によって彼の予感は確信に変わった。
一応帝国では身分の上下関わらず能力が高い者を重用する事になっている。だがしかし元からあった身分社会は今に至っても続いており、軍に関わらず政界でも上の役職にいけばいくほど元々の身分が高い人物が増えていく。その弊害が今回彼に降りかかったという事になる。
「理由としては自分が活躍し過ぎたからですよね。
身分が低い自分が活躍するのが気にいらんのでしょう」
「流石だな……あと今回の隊で何か問題が起きた際には責任としてお前を左遷や降格などいくらでも出来るからな」
「……全く、そんなに自分が嫌なら実力で超えて欲しいものですね。こんな回りくどい事しなくとも」
「まぁこれが帝国で軍人になるという事だ。
ーーバルク、一応聞くが今回の件を引き受けるか」
「どうせ自分が拒否でもしたら上官の命令無視で軍法会議にでもかけられるのでしょうね。
ーー今回の件、お引き受けいたします」
とバルクが言うとジークは多少申し訳なさそうな顔をして
「頼んだぞ」
と言った。
「ところで上官」
「なんだ?」
「副官もこの中から選ぶのでしょうか?」
バルクは正直、この癖の強そうな隊員から副官を選ぶとなると今以上に頭が痛くなりそうであった。
なので1人ぐらいはまともな人物が欲しいと思っていた。
だがジークは首を横に振り
「一応副官は別に用意している」
「本当ですか!?」
1人でもまともな思考を持っている人間がくれば少しは頭痛が治りそうだと思った彼だっだがジークが出してきた紙を見て再び頭痛の要因が増えたのであった。
「リーズベル・ガードヴェン……?
ガードヴェンってまさか……!?」
「そうだ、そのまさかだ。帝国内での大貴族であるガードヴェン家の娘だ」
ーーガードヴェン家とは
帝国内での5本の指に入るぐらいの大貴族であり、初代王の側近であった人物を起源としている。
帝国内での様々な分野に影響力を及ぼしており、王ですら対処に困るほどの勢力を誇っている。
「ガードヴェン家ですか……。
ーーん?今、娘って言いましたか?」
バルクは自分が聞き間違えたのだと思いたくてジークに聞き直したのだが、返ってきたのは無情な答えであった。
「そうだ。ガードヴェン家の娘が8番隊の副官だ」
「本当ですか……」
それを聞いた瞬間、バルクは思わず空を仰いだ。
まさか副官まで問題が起きるとは思っていなかったからだ。
ーー問題がある隊員達
ーー副官が対処に困る大貴族の娘
まさかここまでされるとは思っていなかった。
「バルクよ、分かっていると思うがガードヴェン家の娘に何かあったら
ーー出世どころか人生を諦めろ」
「はい……とほほ」
この瞬間8番隊隊長バルクが誕生したのであった。
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