俺の俺Tueeeeがなんか間違っている件

伊原 りょうん

最強ってなんだっけ?

 「さぁどっからでもかかってきな」
「言われなくともぶっ殺してやらぁ」
 そう言って男のうちの1人は棍棒を振り上げたが、正直怖くなかった。というか俺は調子に乗っていた。最強にしてもらった俺がこんな棍棒なんかでダメージを受けないだろうと思っていたからだ
 「オラァ!」
 しかし男の叫び声とともに振り下ろされた棍棒は、俺の頭にドゴォという音を出しながら命中した
 「??!いっつ!!」
 一瞬なにが起こったのかわからないくらいの痛みが頭を襲った。痛すぎる昔クラスメートに頭をぶん殴られたことがあるが、それの10倍以上痛い。たまらず俺は倒れた。
 「なんだこいつ雑魚いぞ」
 「カマセを倒したのはただの偶然かよ」
 「いや、あいつは我らの中でも最弱、倒されても何ら不思議ではない」
そんな会話をしながら、3人がかりで倒れている俺を棍棒で何度も殴ってきた。1秒経過するごとに体のあちこちにものすごい激痛が走る。
 「ぐ、ぐぎゃぁぁ、すいません、すいません、許してください!!」
 「許すわけねーだろ、てめぇはこのまま死ぬまでボコボココースだ!!」
 「ひぃぃ〜」
 あまりの恐ろしさに思わず口から悲鳴が溢れ出た。転生してまだ数分だがもう死ぬかも、てゆーか最強じゃねーじゃん俺
 「やめてください!!」
 先ほどまで男達に捕まっていた女の子が叫んだ。なんで逃げてないんだよこれじゃ俺ただの無駄死じゃんか
 「あ!?やめるわけねーだろ」
 「お前は黙ってろ!!」
 「こやつは我ら四人集を敵に回したのだ死ぬしかない」
 女の子はたのみを聞かずに俺を殴り続ける男達に再び
 「やめてください!!」
 と叫んだ。すると男達の動きがピタッと止まった。見ると男達の体には光を放つ鎖が巻き付けられていた。
 「なんだよこれ?てめーの仕業か?」
 「動けねーじゃねーかよ!!」
 「ふふっ、これが君の魔法かい?」
 「光魔法・聖光なる縛鎖シャイニングチェーン
 呆気にとられてぽかんとしている俺に女の子は
 「この魔法の効果は約1分です。その間に逃げましょう」
 そう言って俺を起こすと、俺の手を引き逃げた。なぜか体の痛みが少しづつ引いていく感じがした。

「ここまでくれば大丈夫でしょう」
 1分ほど走ると女の子は止まってそういうと、振り返りお礼を言った。
 「さっきは助けていただきありがとうございました」
 「いや、俺こそ助けてくれてありがとな」
 「いえいえそんな、あっそうだ名乗るのが遅れましたね、私の名前は、ナオカ・クレシアって言います。ナオカって呼んでください」
 「そっかよろしくなナオカ、俺は羽成龍樹、龍樹って呼んでくれ」
 「はい、よろしくお願いしますね、龍樹さん」
 お互いに自己紹介を終え、俺は気になっていたことを質問した。
 「あのさ、ナオカ」
 「はい!何ですか?」
 「もしかしてだけどさ、俺がいなくてもあの能力で逃げ出せた?」
 その質問にナオカはかなり動揺した。
 「え、そ、そ、そんなことあり、ありません、よ」
 「本当は?」
 「あ、そ、そうだ龍樹さん背中を向けて座ってください、治療の続きをします」
 「治療?」
 言われた通りにすると、先程のように体の痛みが消えていった。振り返ると、ナオカが俺の体に手を向けており、その手は光っていた。
 「光魔法・天使の癒しホーリーキュアです」
 「へぇーこんな能力まで持ってんのか、すげぇな」
 「ふふ、ありがとうございます」 
特に話すこともなく、ボーとしてると、ナオカは口を開いた
 「たしかに聖光なる縛鎖シャイニングチェーンを使えばあの人たちから逃げる事は出来たかもしれません」
 「やっぱり」
 「でも私はそれをすることができませんでした」
 「なんで?」
 「先ほども言った通り聖光なる縛鎖シャイニングチェーンは1分くらいしか持ちません。その1分で逃げ切れなかったらどうなるか、そう考えると怖かったんです」
 「そうか」
 「それに私嬉しかったんですよ、あの人たちが”邪影騎士団”だと知ると貴方以外の人は誰も助けてくれませんでしたし、それに「ちょっといいか?」はい?」
 「邪影騎士団って何?」
 俺の質問にナオカは心底驚いたようだった。
 「邪影騎士団を知らないって本当ですか?」
 「あ、あぁ俺こことは別の国、みたいなとこから来たからさ」
 「あぁ、なるほどそれでそんな黒魔術師みたいに真っ黒な服を着ているんですね」
 いやこれただの学ラン……
 「ま、そういうことだ、で、結局邪影騎士団ってのはなんなんだ?」
 「簡単に言うと魔王の部下です」
 「ふぇ?」
 え、え、マジすかそんなやばそうなやつ殴っちったの俺、え、えやばくね?え、怖、まだこっちの世界きて数十分だけど帰りたい、帰ってベッドでゴロゴロしたい、うわぁ嫌だぁ
 「あの」
 「ふぁい!?」
 「顔色が優れませんが大丈夫ですか?」
 「お、おう大丈夫だ」
 「もしかしてですけど…」
 ナオカはその先をなかなか言おうとしない
 「なんだ」
  俺がそう聞くと
 「龍樹さんは私を助けたこと後悔してます?」
 と悲しそうな顔をして聞いてきた。
  「まあな、めちゃくちゃ痛かったし、正直言ってものすごく怖い」
  「やはりそうですよね」
 ナオカは俯きながらそう呟いた
  「でもな、だからといって逃げるのはもう辞めにしたいんだ、とある理由があって俺は変わりたいんだ、だからあいつらも倒してやるよ」
 そう言うと、ナオカは俯いていた顔を上げた
 「本当ですか?」
 「あぁ、まかしときな!!」
 俺は自身満々にそう言ったが、
 「でもどうやって?」
というナオカの疑問に俺の自身は消失していく
 「確かになぁ」
 つい十数分前自分が最強だと信じ込みボコボコにされたではないか、そもそも俺は本当に最強なのか?アレスさんは俺を最強にしたと言っていたが、あれは嘘なんではないのか?
 「龍樹さん、ボーとしてどうかしましたか?」
 「ん?あぁなんでもないよ」 
 「それにしても龍樹さんって凄い人ですね」
 唐突にナオカがそう言った
 「凄い?俺が?」
 「はい、凄い人です。何も知らない私のことを助けてくださったり、しかもあの邪影騎士団の一人を一撃で倒したんですもん、龍樹さんは凄い人です!!」
ナオカの言葉を聞き、一撃で奴らの一人を倒したのを思い出し、俺の脳内に一つの考えが横切った
 「もしかしたら」
 そう呟くと、俺は立ち上がり、近くにあった、かなり太い大木を殴った。すると大木は簡単に倒れた。その光景を見て、俺は確信した。アレスさんは、俺が「最強にしてくれ」と頼むと「力のステータスを最大級にまで上昇させる」と言っていた。ということは、俺は”力のステータスだけは最強級だが他のステータスは元のまんま”なのでは…
  「やっぱり龍樹さんは凄いです!」
 後ろから何も知らないナオカの声が聞こえた。
 いや、何も凄くないですよ、俺なんて攻撃力が強いだけですよ、最初のやつはものすごく余裕してたから勝てただけですよあんな警戒されたら攻撃なんて当たりませんって……ん?なんか声が聞こえる。
 「おい、こっちから声が聞こえたぞ!」
 「やつらこの近くにいるぞ!」
 「ふ、警戒を起こらぬことだな」
 あ、やべ 俺が木を折った音で、場所がバレてしまったみたいだ、やつらには見えてはいないっぽいが、ここからは後数十メートル先にいるのが見えた。
 「龍樹さんどうしよう?」
 それ聞きたいのは僕の方です、どうしましょう。三人もいて、それでいてあんなに警戒されていて殴ることができるだろうか?せめて奴らの動きを止めれたら…あ、そうだ
 「なぁナオカ頼みがあんだけど」
 「え、何ですか?」
 


「ここらのはずだぜ」
「みろ、こんなぶっとい木が折れてやがる、あの野郎が折ったのか?」
 「馬鹿言いなさんな、どんな武器を持てばこんな木を折れるというのだよ」
 男たちは、俺が木を折った所までたどり着いた。それを見て、俺は隠れていた木の陰から出た。
 「よ、よう、ひしゃしぶり」
 カッコつけようとしたが、思いっきり噛んでしまった。恥ずかしい…
 「おい!あの女どこやった、正直に言わなきゃさっきみてぇに、ぶちのめすぞ」
 「あいつならもう逃したよ」
 「どこに!?」
 「いうわけねーじゃん」
 「ふふ、さっさといえば痛い目に会わずに済んだものを」
 「殺す!!!」
 「死ねや!!」
 「後悔するがよい!」
 三人は同時に俺に殴りかかってきた
 「ナオカァァァ!!!今だぁ!!頼むぅぅぅ!!」
 「聖光なる縛鎖シャイニングチェーン!!」
俺同様隠れていたナオカがそう叫ぶと、先ほどのように光の鎖が男たちに巻きついた。
 「これはさっきの!」
 「だがこれが何だっつーんだよ!」
 「所詮ただの時間稼ぎに過ぎない」
動けずそんなことを言っている男たちに俺は向かっていった。
 「ウォォォォォォォォォォ!!!!」
 動けなきゃー怖くねーんだよ!!
そのまま俺は男たちを思い切りぶん殴った
「グフッ」
 「ガッ」
 「ブハッ」
 そして男たちは気絶し、ナオカが能力を解いたため、地面に倒れた。



 「や、やりましたね、私たち邪影騎士団を、それも4人も倒したんですよ、早速ギルドに報告しましょう」
 「ギルド?」
 「あれ?知りません?冒険者に依頼を出してくれたり、指定人物を捕まえて連れて行くと、報酬をもらえるんです。この人たちは邪影騎士団なので、4人で5万ジェルほどもらえますよ」
 「へーそうなんだ」
 「ま、知ってる風に言ってますけど、私ギルドに行ったことないんですよね」
 「何で?」
 「私冒険者登録してないから行く意味がなかったんです」
「へーあんな凄い能力持ってんのになんかもったいねーな」
 「そんなこと…ないです」
 俺はしばらく考えると
 「なぁナオカ、これからこいつらギルドに連れて行ったら、ついでに冒険者登録しねぇ?」
 そう言った
 「え、なんでですか?」
 「あのな、俺とある事情があって魔王を倒したいんだ」
 「魔王を?」
 「あぁ、でもそれは俺一人の力じゃ絶対無理だ、だから俺に力を貸してくれないか?」
 ナオカは少し考え
 「わかりました」
 と言い
 「私はあなたに助けていただきました。次は私があなたに協力します」
 そう続けた
 「そうか、ありがとうな、ナオカ」
 「いえ、これからよろしくお願いします」
 「よし、じゃあ行くか」
 俺は地面に倒れた三人と、最初に倒した一人をナオカが持っていたロープにくくりつけ、ひこずって歩いた。軽い、今ならインドゾウでも指一本で持ち上げれそうだ。
 ちなみに俺とナオカは森から街まで出るのに5時間ほどかかった。


 

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