王国の騎士

吟遊詩人

生存

…体が重い、だが意識はある。
背中に当たるこの感触は地面じゃあないな…
瞼をゆっくりと開ける、見覚えのある天井…
たしかここは…

「お寝坊さんね。ミスター、ラーク」

…聞きなれた声。開ききっていない瞼でも分かる整った美貌、彼女は王宮の回復術師の…

「申し訳ありません。ミセス、エメラルド」
略、三十路手前だろアンタ。早く結婚しろ。

「…あら?やっと興味が湧いてくれたかしら?」

「…ミス、エメラルド」

「つれないわね…でもそんなところも私好みよ?ミスター、ラーク」

「お戯れを。」

相変わらず隙のないと言うか、掴みどころのない女性だ。頭が回り試験時に私が手を余したことを見通し、ちょくちょくちょっかいを掛けてくる女性
だがその美貌と魅力的な胸でとにかく騎士隊の面々からモテるし好かれる。

「それで、どれだけの間私は寝ていましたか?」

「5時間ぐらいね。もうお昼よ。何か食べさせてあげようか?」
妖艶に笑みを浮かべる

「いえ、私は報告をしないといけませんので。体に何か不自由な点とかは?」
むーと小さくうねる。不覚にも少し可愛いとすら思ってしまう

「まぁ、いいわ。鍛えすぎで体のあちこちにちょっとガタがきているってこと以外問題ないわ。
背中に張った湿布の替えは部屋に置いといたし」

「ありがとうございます。また、何かあればお世話になります。」

「あまり来ない事を願うわ。
最も、今回みたいのは本当に稀ででしょうけど」
ふっと少し吹き出す。確かに今回みたいな出来事がしょっちゅう起きるはずは無い。
だからこそ、
今回の功績がどう響くか、だな

失礼致しましたとドアの前で一礼し、廊下に出る。

「まずは報告だな。この状況だ、おそらく地区のまとめ役は会議の場に出ているだろうしとなると会議に出席しない立場で報告をしないといけない人物…
書類仕事に追われているアンヘルさん…かな?」
さて、と呟き歩を進ませる。

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