王国の騎士

吟遊詩人

一人以上複数未満

「…」
無言。ただ銃剣の引き金を引いた際になる発砲音とヤツから距離を詰められないように走らせる馬の足音だけが街に響く。
ヤツは悲鳴をあげない。どす黒い血を傷口からドクドクと流すのみでありさっきまでとは打って代わり癇癪の1つも上げず私へと巨大な腕を伸ばす。
馬を走らせそれを避ける。

【だぁ】

怪物が口を開く身構え距離を大きくとる
そして気づいた
赤ん坊が見ているのは私ではない
後ろ?
赤ん坊が口を開く。大きく、大きく
何をするつもりだ?いや、まて、おかしいぞ?
なんで今、気づいた、遅れた、理解した

「お前ら伏せろォ!!!!!」

あらんかぎりの大きな声、自分でもこれだけ声を張れるのかと少し驚くほどの声、

怪物の口から何かが出る。いや、展開されたといった方がいいだろうか、魔方陣が浮かびそして、

【巨大な光線が放たれた】

言葉にならない悲鳴、私の後に来た騎士隊の面々だろう。
なんで彼らは逃げなかった?いや、それはそうだ。同じ騎士隊の仲間の死体がそこら辺に散らばっているんだ。

怖かったんだ。

私のように自分を守る実力があるわけではない、ヤツに殺された騎士の中に友人や家族がいたかもしれない、無力さで動けなかった。
何より、あの動きの鈍さでここまで人が死ぬか?それを考えてもいなかった。
口から放たれた光線、私に向けられたものなら避けることもできずにこの命を失っていただろう

「…積んでるかもしれないな」

剣銃に弾を込め直す怪物を睨み付ける
きゃっきゃと笑う巨大な赤子、それはまさしく魔物と呼ぶに相応しいものだった

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