転生して自傷魔王になるまでの物語
そして始まるプレリュード
雲一つない晴天の下、広い草原の中にある小さな村。その中の民家の庭で一人の少年が木刀を持って素振りをしていた。
「ふっ.....ふっ.....」
陽を反射する眩い銀髪に、燃えるような緋色の瞳。額に汗を浮かべ一所懸命に木刀を振るうその姿は、何かに向けての必死さを感じられる。
「ふっ.....ふっ.....」
二十.....三十.....四十.....
木刀が振るわれること数十回。
「お兄ちゃーんっ!」
民家の中から、こちらも眩い銀髪に緋色の瞳の目がクリっとした少女が出てきた。少女は少年の元へとまっすぐ走り、その勢いのまま抱きつく。
「おわっ?! アイシャ危ないってっ!」
「お兄ちゃん、あったかいー......」
すりすりと頭を少年に擦り付ける少女、アイシャ。
「やめろって、アイシャ。俺今汗臭いぞ?」
「そー? アイシャお兄ちゃんの匂い好きだよ?」
安心するし、と言い再度頭を擦り付け始めるアイシャ。やれやれ、と少年がアイシャの頭を撫でる。
「ハク、アイシャーっ。 早く来ないとご飯片付けちゃうわよーっ」
「あ、お兄ちゃん呼びに来たの忘れてたっ」
お兄ちゃん行こって言いながらハクの手を引いて走るアイシャ。その中でハクは自分の生まれた6年前を振り返る。皇斗として死んでから、ハクとして生まれた6年前を。
気が付くと、唐突に目に光を感じた。何かに殴られたように頭が痛み、頭を触ろうと手を伸ばそうとするも思うように力が入らない。
(あれ、俺って確かあかりと列車に轢かれて.....あかりは?!)
すいません、と誰かを呼ぼうとしたが口からは「あ」とか「う」とかしか出てこない。
「あ、リューネっ! ハクが目を覚ましたみたいだぞ!」
不意に誰かに抱きかかえられるような感覚。高3の俺を抱きかかえるって、どんだけの大男なんだよ。そんなことより、あかりは無事なのか?!
「ブラド、そんな大きな声出したらハクが驚くでしょ?」
 だんだんと目が慣れてきて、周りの光景が見えるようになってきた。...どこだ、ここ。
そこは、見慣れないものばかりで溢れた部屋だった。背表紙の文字が読めない本がびっしりと詰まった本棚。赤や青、緑と様々な色がある石が机の上にあり、窓から見える風景は知らないもの。俺の事を抱きかかえて笑顔で覗き込んでる茶髪に深い青色の瞳を持った男と、部屋の角にあるベッドで横になってこっちを見ている銀髪に深い緋色の瞳の女。はっきりとわかるのは、ここは日本でないってことだけ。
ふと、もう一度窓の外を見ようとそちらに顔を向ける。そこで俺は気が付いた。窓に反射して写っている、俺の事を抱きかかえてる男の姿と、その男に抱きかかえられた赤ん坊の姿に。
一瞬、頭の中が真っ白になった。
「あうあーっ!(はぁぁぁぁ?!)」
「うわっ! びっくりしたなぁ」
「だから言ったじゃない、ハクがびっくりしちゃうって」
なぜか、なぜかはわかんないけど。
あかり、お兄ちゃんは赤ん坊になったみたいです。
「ハクー、今下着変えるからまっててねー」
「あうー」
俺が赤ん坊になってから一週間。さすがに一週間も経つと赤ん坊の生活にも慣れてきた。いや、このオムツを変える瞬間だけはやっぱ恥ずかしいけどね?
そんで、この一週間での俺の中の結論。やっぱ、俺はあの列車に轢かれた時に死んでるみたいだ。それで、輪廻転生っていうのかな。ここは俺がいた世界とは全く違うみたいだけど、生まれ変わってハクって名前の赤ん坊になったみたい。
そして、こっからが前の世界と全く違うとこなんだけど、どうやらこの世界には魔法と魔物が存在するみたいだ。この世界で俺のお母さんになったリューネが料理するのに魔法で火を着けるのをよく見るし、お父さんのブラドがよく「村の近くでウルフ狩ってきたぞー」って剣を肩に担ぎながら魔物を持って帰ってくるから。ウルフの肉はよく煮込めば美味しいらしい。
「はい、おわりましたよー」
リューネがパンっと手を叩く。色々考えているうちにオムツの交換が終わったみたいだ。
「あうあー(ありがと)」
「はいはい、どういたしまして」
よくよく考えると、母親ってすごいよな。たとえ赤ん坊だとしても、こうやって言ってることがわかるんだから。まぁ、母親って母親を俺はリューネくらいしか知らないんだけど。前世の母親は俺が物心つく前にはもういなかったし。父親もだけど。
「リューネ、ハク。今帰ったぞー」
玄関が開き、ブラドが帰ってきた。その右手に引っ張ってきてるウルフの大きさを見るに、今日は大物とやり合ってきたみたいだ。いつもそうだけど、何だかんだ怪我なく帰ってくるってことは結構強かったりするのかな?
俺はこの世界に来て一つだけ心に誓ってることがあるんだ。今度こそ強くなって、大切な人だけは守るって。もう、ただただ大切な人が、あかりのように傷付いていくのは嫌だから。とりあえず、ある程度大きくなったら魔法とか、ブラドに剣の扱いとか教わろう。自分の無力で後悔するなんてもうしたくない。
「今日はだいぶ大きいのを持ってきたわねー」
「こう見えても、一家の大黒柱だからな。お前とハクがちゃんと食ってけるようにはするさ」
あはは、とリューネとブラドが笑い合う。夫婦仲がいいようで何よりだ。そんな姿を見て、もし、俺の前世にも親がいたら、なんて考えてしまった。
(やめよう、もしなんて考えるのは)
もう、終わってしまったことなんだから。今更考えても、今はなにも変わらない。それよりも、これからの事を考えよう。こうやって日常を過してく中でも、ためになることはあるんだから。
そして俺は料理するリューネを観察する。まだ俺には出来ないけど、そのうち自分が魔法を使う時のことを考えて。
あとがき
ということで、第二話ですっ
相変わらずだぶんだぶんしてます(´・ω・`)
読みにくくなければ幸いです(*´ω`*)
「ふっ.....ふっ.....」
陽を反射する眩い銀髪に、燃えるような緋色の瞳。額に汗を浮かべ一所懸命に木刀を振るうその姿は、何かに向けての必死さを感じられる。
「ふっ.....ふっ.....」
二十.....三十.....四十.....
木刀が振るわれること数十回。
「お兄ちゃーんっ!」
民家の中から、こちらも眩い銀髪に緋色の瞳の目がクリっとした少女が出てきた。少女は少年の元へとまっすぐ走り、その勢いのまま抱きつく。
「おわっ?! アイシャ危ないってっ!」
「お兄ちゃん、あったかいー......」
すりすりと頭を少年に擦り付ける少女、アイシャ。
「やめろって、アイシャ。俺今汗臭いぞ?」
「そー? アイシャお兄ちゃんの匂い好きだよ?」
安心するし、と言い再度頭を擦り付け始めるアイシャ。やれやれ、と少年がアイシャの頭を撫でる。
「ハク、アイシャーっ。 早く来ないとご飯片付けちゃうわよーっ」
「あ、お兄ちゃん呼びに来たの忘れてたっ」
お兄ちゃん行こって言いながらハクの手を引いて走るアイシャ。その中でハクは自分の生まれた6年前を振り返る。皇斗として死んでから、ハクとして生まれた6年前を。
気が付くと、唐突に目に光を感じた。何かに殴られたように頭が痛み、頭を触ろうと手を伸ばそうとするも思うように力が入らない。
(あれ、俺って確かあかりと列車に轢かれて.....あかりは?!)
すいません、と誰かを呼ぼうとしたが口からは「あ」とか「う」とかしか出てこない。
「あ、リューネっ! ハクが目を覚ましたみたいだぞ!」
不意に誰かに抱きかかえられるような感覚。高3の俺を抱きかかえるって、どんだけの大男なんだよ。そんなことより、あかりは無事なのか?!
「ブラド、そんな大きな声出したらハクが驚くでしょ?」
 だんだんと目が慣れてきて、周りの光景が見えるようになってきた。...どこだ、ここ。
そこは、見慣れないものばかりで溢れた部屋だった。背表紙の文字が読めない本がびっしりと詰まった本棚。赤や青、緑と様々な色がある石が机の上にあり、窓から見える風景は知らないもの。俺の事を抱きかかえて笑顔で覗き込んでる茶髪に深い青色の瞳を持った男と、部屋の角にあるベッドで横になってこっちを見ている銀髪に深い緋色の瞳の女。はっきりとわかるのは、ここは日本でないってことだけ。
ふと、もう一度窓の外を見ようとそちらに顔を向ける。そこで俺は気が付いた。窓に反射して写っている、俺の事を抱きかかえてる男の姿と、その男に抱きかかえられた赤ん坊の姿に。
一瞬、頭の中が真っ白になった。
「あうあーっ!(はぁぁぁぁ?!)」
「うわっ! びっくりしたなぁ」
「だから言ったじゃない、ハクがびっくりしちゃうって」
なぜか、なぜかはわかんないけど。
あかり、お兄ちゃんは赤ん坊になったみたいです。
「ハクー、今下着変えるからまっててねー」
「あうー」
俺が赤ん坊になってから一週間。さすがに一週間も経つと赤ん坊の生活にも慣れてきた。いや、このオムツを変える瞬間だけはやっぱ恥ずかしいけどね?
そんで、この一週間での俺の中の結論。やっぱ、俺はあの列車に轢かれた時に死んでるみたいだ。それで、輪廻転生っていうのかな。ここは俺がいた世界とは全く違うみたいだけど、生まれ変わってハクって名前の赤ん坊になったみたい。
そして、こっからが前の世界と全く違うとこなんだけど、どうやらこの世界には魔法と魔物が存在するみたいだ。この世界で俺のお母さんになったリューネが料理するのに魔法で火を着けるのをよく見るし、お父さんのブラドがよく「村の近くでウルフ狩ってきたぞー」って剣を肩に担ぎながら魔物を持って帰ってくるから。ウルフの肉はよく煮込めば美味しいらしい。
「はい、おわりましたよー」
リューネがパンっと手を叩く。色々考えているうちにオムツの交換が終わったみたいだ。
「あうあー(ありがと)」
「はいはい、どういたしまして」
よくよく考えると、母親ってすごいよな。たとえ赤ん坊だとしても、こうやって言ってることがわかるんだから。まぁ、母親って母親を俺はリューネくらいしか知らないんだけど。前世の母親は俺が物心つく前にはもういなかったし。父親もだけど。
「リューネ、ハク。今帰ったぞー」
玄関が開き、ブラドが帰ってきた。その右手に引っ張ってきてるウルフの大きさを見るに、今日は大物とやり合ってきたみたいだ。いつもそうだけど、何だかんだ怪我なく帰ってくるってことは結構強かったりするのかな?
俺はこの世界に来て一つだけ心に誓ってることがあるんだ。今度こそ強くなって、大切な人だけは守るって。もう、ただただ大切な人が、あかりのように傷付いていくのは嫌だから。とりあえず、ある程度大きくなったら魔法とか、ブラドに剣の扱いとか教わろう。自分の無力で後悔するなんてもうしたくない。
「今日はだいぶ大きいのを持ってきたわねー」
「こう見えても、一家の大黒柱だからな。お前とハクがちゃんと食ってけるようにはするさ」
あはは、とリューネとブラドが笑い合う。夫婦仲がいいようで何よりだ。そんな姿を見て、もし、俺の前世にも親がいたら、なんて考えてしまった。
(やめよう、もしなんて考えるのは)
もう、終わってしまったことなんだから。今更考えても、今はなにも変わらない。それよりも、これからの事を考えよう。こうやって日常を過してく中でも、ためになることはあるんだから。
そして俺は料理するリューネを観察する。まだ俺には出来ないけど、そのうち自分が魔法を使う時のことを考えて。
あとがき
ということで、第二話ですっ
相変わらずだぶんだぶんしてます(´・ω・`)
読みにくくなければ幸いです(*´ω`*)
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